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第9話 ダンジョンのあれこれ、そして

分かれ道で何度も行き止まりに当たりながらもボク達は途中にあった宝箱から

アイテムを手に入れた。ほとんどが回復薬だったけど。


「不思議だよねぇ、この宝箱って誰が置いてるのかな」


冒険者七不思議の一つらしい。

ダンジョンの中にある宝箱、ある冒険者がいくと何もなかったり

ある冒険者が発見した宝箱からは武器が、違う冒険者が同じ場所で発見した宝箱からは

何かの糞が出てきたとか。

いつ、誰が設置したのか。

なぜ人によって中身が違うのか。

それでも得をする事ばかりなので、そこまで深く追求する冒険者はほとんどいないようだ。


【お化けコウモリ が現れた! HP 13】

【キラーモグラ が現れた! HP 21】


道中でもそこそこ魔物に襲われた。

さっきの励ましが効いたのか、ロエルはきちんとボクにヒールをかけてくれた。

まったく傷を負ってないから必要ないなんて残酷な事は言わない。

魔物には申し訳ないけど剣を抜くのも面倒なので全部素手で片付けた。


「あ、あれかな?」


細道を抜けた先は丸い空洞になっていて、その真ん中に綺麗な水が湧き出ていた。

左方向にまた洞穴の道が続いていたけど、この先に用はないので無視する。


「綺麗な水だね」


ロエルが手ですくって水を飲む。


「冷たくておいしい! なんでこんなに冷えてるんだろ~?」


「どれ……」


ボクも飲んでみると何故かいい感じに冷えていておいしかった。

早速この水を汲もう。と、その時。

左方向からシャーシャーという魔物の鳴き声が聴こえてきた。

暗闇に二つの光が見えたと思ったらそれは地を這い、長い体を自由にくねらせて

こちらへ向かってきた。


【貪欲なる大コブラ が現れた! HP 212】


「わ、わー! リュ、リュアちゃん、どうしよう?!」


水を飲むのに夢中になっていたロエルが、ぷはっと吐き出して杖をぶんぶん振り回す。

これまで出てきた魔物とは段違いに強い事はすぐにわかった。

初心者冒険者というものの基準はわからないけど、恐らくこれに襲われたら

さすがに厳しいだろう。

威嚇しているのか、体を垂直に伸ばしてこちらより大きく見せようとしている。

ボクの身長より高かった。


「ロエルはそこから動かないで」


コブラは滑らかな動きでボクの首筋に狙いを定めて噛みついてきた。

そんな事をさせるはずもなく、ボクはそれを捕まえて迎撃しようとした。

しかしコブラの本当の狙いは後ろにいるロエルだった。

ぐねりと体をくねらせたと思ったら、そのまま一直線にロエルにコブラが向かう。

ボクには勝てないと本能で悟ったのか、まさかのフェイントにまんまとやられた。


でも、やらせない。

ロエルはボクが守るって約束したから。


【リュア の攻撃!】


ボクはコブラを後ろから切断した。

首が跳ね上げられ、長い胴体がうねるように地面に落ちた。


【貪欲なる大コブラ HP 0/212】

【貪欲なる大コブラに 312297 のダメージを与えた!

 貪欲なる大コブラ を倒した!】


「……えいっ!」


動揺する間もない事態だったけど、ロエルはようやく状況を把握して

なぜか転がっているコブラの頭部を杖でぽかりと叩いた。


「リュアちゃん、ありがと」


「今のはちょっとビックリしたよ。まさかあんな知能があったなんて」


「この魔物、このフロアのボスかもしれない。

 ボスモンスターっていってね、すごく強い上に知能が高いのもいるの。

 しかも倒してもなぜか一定周期で蘇えるんだって。

 これも冒険者七不思議の一つなの」


じゅあ、この魔物は前にも誰かに倒された可能性があるということか。

もしかして学習してる? いや、さすがにそれはないか。

それにしても、このコブラは毒を持っていたんだろうか。

だとしたら、この泉の水も危ないのかもしれない。


「えーと、この魔物はどこの部位が高く売れるんだろ」


ポイズンサラマンダーのように、魔物の体の一部が高値で取引されてるようだ。

この前の髭はギルドにあげちゃったからいくらで売れるかわからないけど

今度のはどのくらいで売れるだろう。


「適当にキバとウロコを持っていこうか」


ロエルが慣れた手つきで処理をする。

感心しているとロエルがボクの疑問を汲み取った。


「私ね、パーティじゃ役に立たないからいつもこんな事ばっかりさせられてたんだ。

 だからこういうのは得意。えへへ……ヒーラーなのにね」


恥ずかしそうにしながら、ロエルは作業している。

終えるとロエルは少し見つめた後に暗い表情を見せた。


「ごめんね、足手まといになって……次はがんばるから」


「ロエルはまだレベル3なんだから、そんな事気にしなくていいんだよ」


誰だって最初はうまくできない。ボクだって奈落の洞窟に着いた時はさっき戦った

洞窟ウサギにすら勝てなかったんだから。

あの時は体中ズタズタで血が止まらなくて……

あれ、あの後どうしたんだっけ。


「がんばって強くなって必ずリュアちゃんを安心させるから」


泣きそうになっていた目をこすりながら、左手でガッツポーズをとるロエル。

それにしてもボクのレベルはいくつくらいなんだろう。

機械は直っただろうか、帰ったらまた試してみよう。


///


二人の冒険者パーティが立ち去った後、左の穴道から出てきた影があった。


「おいおい、ウソだろ? なんだあれ」


被っていたキャップを取りながら、その人物はリュアを賞賛した。

右手を握ると死体になったコブラが光となり、その手へ吸い込まれた。


「まさかあのフェイントに反応するとか……後にオレ達の邪魔になりかねんな。

 今のうちに消しておくべきか」


そのままの姿勢で少し考えた後で思い直したのか、その人物はゆっくりと背景に溶け込み

そしてその場から消失した。

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