リズの研究所・究極の作品
サーニャと別れたエースは、一人で洞窟を進んでいく。そして空洞へとたどり着いた。
そこは、最初の空洞と同じように何も設置されていない。先に続く洞窟も無い事から、行き止まりだろうと結論付ける。
「こっちはハズレか。するとサーニャさん側が大変だろうな」
空洞に入り簡単に確認だけした後、元来た道に戻ろうとする。と、突然今まで歩いてきた洞窟が崩れ落ちた。
「なに!?」
エースはとっさにクリスタルアークを構え敵襲に備える。ついさっきまで歩いていた洞窟は、突然崩落が起きるような脆い構造はしていなかった。しっかりと固められた土は、強力な魔法か大きな地震でも起きない限り崩れることは無いだろう。
そして地震が起きていないのだから、考えられるのはただ一つ。敵襲と言うことだ。
「罠だったのかよ。面倒だな」
モクモクと洞窟から土煙が立ち上る中、空洞内の壁がゆっくりと動き始めた。
「また無機物魔獣か? 数だけいても無駄だけどな。来いよ! 相手してやる!」
エースの声に反応したのか、空洞内の壁が一斉に崩れ落ち、空洞自体が一回り広くなる。そして落ちた岩が全て魔獣に変化した。
さすがのエースも、その量を見て少し動揺を表す。
視界に入るのは全て無機物魔獣。中には、魔獣の下敷きになって動けない魔獣までいる始末だ。
その量を相手する自分の運の無さにうんざりしながら、エースは魔獣を睨みつけた。
「確か昔もこんな訓練したよな。洞窟の中に閉じ込められて、ひたすら敵と戦うの」
それはエースが勇者としての神託を受けて、まだエリーシスが魔王として選出される前のこと。勇者に選ばれたと言えど、ただの農民だったエースを鍛えるべく巫女の提案によってなされたものだった。
修行の祠と呼ばれる洞窟は、騎士達の訓練にも稀に使われるような場所だ。しかしそれはあくまで集団戦闘を想定した際の訓練で、決して単身で突入するような物では無い。
それを進めた巫女に、最初こそ誰もが驚いたが、それが神託にもあったと言うことで、最終的にはエース以外の全員が納得したのだった。
命を掛けるエースだけは最後まで反対したが、神託が大丈夫だと言っているの一点張りで聞く耳を持たない周りに根負けし、修練の祠へ単身突入することになったのである。
実際、着実に力を付けることが出来たが、死にそうな経験を何度もする羽目になった。今の状況は非常にそれに良く似ている。
「思い出すね。何度泣きそうになったか。けど、俺はキールの調教を耐え抜いたんだ。あれに比べれば、修練の祠も今の状況もどうってことないよな」
エースの中で最も怖かったものは、キールの調教だ。そのトラウマがある限り、あれ以下の恐怖など、恐怖に入らない。
Mとして目覚めた勇者の、ある意味本領といったところだ。
「さて、んじゃ始めるか。行くぞ、クリスタルアーク!」
手近な場所で重なっている二体を目標に、エースは戦闘を開始した。
エースと分かれて進むサーニャは、早々に研究所らしき場所に辿り着いていた。そこは明かりが少なく、ガラス管のような物が沢山並んでいる。その中には虫のような物が入っていた。今までキールに見せてもらってきた物とは明らかに違う形の虫に、魔王研究が完成に近づいていることをうかがわせる。
それを横目に奥へと進んでいくと、机を見つけた。
乱雑に広げられた資料や、何かの実験に使っているらしい道具が並んでいる。その机から何か情報になりそうな物を探していく。
「これは……」
それはリズの書紀だった。魔王研究の研究ノートと言ってもいい。魔王システムを知ったリズが、どのように魔王の能力を引き出す虫を生み出したか、それが事細かに書かれているようだった。
これをキールに届ければ喜んでもらえるだろう。その時の様子を想像し、サーニャは僅かに頬を赤らめた。
本をペラペラとめくり、何が書かれているのか大まかに読んでいく。すると、部屋の影から魔物の気配を感じた。
本をその場に置いてそちらを振り向くと、その影から声を掛けられる。
「やっと見つけましたよ」
そこからゆっくりと歩いて出てきたのは、リズだった。相変わらず飄々とした表情に、着崩した白衣を着ている。
両手は白衣のポケットに突っこんだままで、敵を目の前にしているとは思えない態度だ。
「リズ、ようやく見つけましたよ」
「私も探してたんですよ。ちょうどお一人のようですし、助かりました」
「私を探していた?」
リズの言葉に首をかしげる。サーニャはリズがキールでは無く自分を探している理由が分からなかった。クローンを殺されたことに対する恨みや、計画の妨害をしてきた恨みならばキールに向かうはずである。サーニャはただキールの指示に従って来ただけだし、リズもその事は知っている。
「ええ、あなたを探していたんです。勇者でもなく、僧侶でもなく、元魔王であるあなたをね」
「私に何の用でしょうか?」
「あなたの体が欲しいんですよ。私の作品の素材としてね」
「なるほど、魔王の体ですか」
元魔王や作品の素材と聞いて、ようやくサーニャも理解する。つまり、元魔王の体をもとにした魔王を生み出したいと言うことなのだろう。
そうすれば、人間から適正のあるものを探す必要はないし、魔王システムによって強化された体は、リズの虫によりさらに強力なものになる。
何より、世界から選ばれた元魔王なのだから魔王の適正は人間の比ではないだろう。
「そう言うことです。なのでおとなしく虫を入れさせてもらえませんかね? 安心してください、痛くはありませんし、すぐに自我も無くなりますから」
「そう聞いて大人しく体を差し出す人がいると思いますか? そうであれば、ご自身の頭を治療した方がいいと思いますよ」
「あはは、元魔王様は言うことがキツですね。魔王の特徴なんでしょうかね?」
「御託は結構です。私もあなたをキール様の元へ連れて行かなければなりませんので、さっさと捕まえさせていただきます」
「させませんよ」
「ただの魔物であるあなたが魔王である私の力に逆らえるとでも?」
サーニャが瞳を赤く光らせる。魔獣魔物に対する隷属の瞳だ。この光を見た魔獣も魔物も例外なく魔王に従う傀儡となる。現に、リズも一度はこの瞳に魅入られエリーシスへの伝言係に使われたことがある。
リズはさっと視線を自らの腕で覆い、隷属を防ぐ。そして左のポケットから注射器を取り出した。
その中には、黒い物体が泳いでいる。
「なんの対策も無しに、出てくるわけないじゃないですか。科学者は科学者らしく、自分の研究成果で対策をとるものですよ」
笑みを浮かべたまま、リズはその注射器を自らの胸に突き立てる。中身がするするとリズに注ぎこまれ、黒い物体もリズの体内へと移動した。
直後、ビクンとリズの体が跳ね、注射器がその手から落ちる。
自らの体を抱くようにして、リズはその場に蹲った。荒い息が激しい背中の上下で分かる。
「ああ、この感じ。これが力!」
リズの体から魔力が溢れ始めた。そして、その魔力に耐えるかのように、必死にリズは体を抑える。
皮膚の血管が顔に、首に、手に、服に隠れていないいたる所で浮き上がる。その血管は遠目でもはっきりと分かるほど脈動していた。
「何を」
「科学者の……最終目標って……何か知ってますか?」
苦しそうに息を吐きながらゆっくりとリズが立ち上がる。なおもリズの体からは魔力が溢れ、リズの目からは血の涙が流れていた。
今までは普通だったはずの口にも牙が見える。
「さて、私は科学者ではありませんので」
「最高の成果、最高の結果、科学者が目指す目標は、最後にはそこに到達するんですよ。そしてそのためには自己の犠牲すら問わない」
「あなたまさか」
「あなたが魔王の力で私を従わせようとするのなら、私も魔王になりましょう。対等な立場であなたをねじ伏せ、私の目指す最高の作品を完成させましょう」
リズの白衣の背中が破れ、そこからは蝙蝠のような羽が生える。トカゲのような尻尾が生え、手は白衣の袖を破るほど膨れ上がり、その太い腕にはふさふさとした毛が生えていた。足は靴が破れ、そこから猛禽類のような鋭利な爪が見えている。靴の中もすでに元の形はほとんど残っていないのだろう。
リズはつい先ほどまでの人間の形をした魔物から、まるで別の存在になっていた。
「その為ならば、私は自分の体すら利用する。使い捨てにしてでも、最高の魔王を完成させる。それが私の、科学者リズの渇望!」
リズが一歩を踏み出す。鳥の足はその一歩でリズを最高速へと持っていき、サーニャに向かって手を伸ばした。
サーニャはその手を両手で受け止め、背負い投げで後ろへと飛ばす。
投げられたリズは、一度羽ばたき自分の体勢を立て直すと、壁を蹴って再びサーニャに襲い掛かった。
「これが魔王の力ですか!」
サーニャに向かって太い腕を振り下ろす。サーニャが躱せば、その衝撃だけで地面がへこみ、周囲の資料が散乱する。
「素晴らしい! 魔王とはこれほどの存在だったのですね!」
尻尾を振り回し、周辺ごと薙ぎ払えば、ガラス管が割れ中の虫が地面に飛び散る。まだ空気中では生きていけないのか、その虫は少しもがいた後に足を閉じて動かなくなった。
自分の研究成果が死んでいくのに、リズは全く気にした様子無くサーニャへの攻撃を続ける。
「魔を統べる。なるほど、この力なら納得できます。前の私が簡単に支配されるだけのことはありますが、もう無意味です。さあ、私の研究成果となってください!」
「そう簡単に思い通りになるとは思わないでください」
壊れた機材の破片をリズに投げつけ、その隙をついてサーニャが前に出る。リズはその場で回転し尻尾をサーニャにぶつけて来るが、サーニャはそれを受け止める。
衝撃波が周りの物を吹き飛ばし、その場だけにぽっかりと何もない空間が生まれる。
尻尾を受け止めたサーニャは、その尻尾を掴んでリズを振り回す。リズは振り回されながらも、足の爪を使ってサーニャの腕を投げられないように掴みかかる。
その爪がサーニャの腕に食いつく前に、サーニャは素早くリズを投げ飛ばした。しかし勢いの付いていない投げは、リズが羽ばたくことで簡単にバランスを取られ、無意味に終わる。
「魔王の今なら私にも分かりますよ。あなたの力が全盛期の七割程度だと言うことが。あの僧侶に封印を掛けられているのですね」
「そうですね。しかし経験の差は埋められませんよ?」
「それはどうでしょうね」
「時移ろいて、世界を嗤え。遅時の針」
「音となりて、世界を嗤え。音速の世界」
サーニャの魔法で世界の速度が遅くなり、リズの魔法が自分の速度を上昇させる。
壊れた破片がゆっくりと落下する中、サーニャとリズだけが高速で動く。
リズが蹴りを繰り出し、その爪がサーニャのメイド服を破く。サーニャの手刀がカウンター気味にリズの頬に一筋の線を入れる。リズが伸ばした足を捩じりサーニャを捕まえようと動き、サーニャはその場に四つん這いになることでその足を躱す。そのまま体を跳ね上げ心臓を狙って手刀を放つ。リズは不安定な体勢のまま、羽ばたいてその攻撃を躱した。
「今の私には分かりますよ、元魔王。この速度が限界なのでしょう? そんな状態で私に勝てるんですか?」
「勝ちます」
サーニャは魔王の力をキールとの契約によって封印されている。今回の戦いの為に一部開放はされているが、それでも魔王だったころに比べればリズの言う通り七割程度の力しか出ていなかった。
それはそのまま魔法の威力や身体能力に反映される。
全盛期のサーニャならば、魔王になり立てで体に慣れていない今のリズなど、すでに倒せていただろう。
「根性論では何もできませんよ。時間がたつほど私が有利になるんですからね」
リズは次第に魔王の体に馴染んできていた。当初こそ、その強大な魔力に体を蹂躙され立てないほどの苦痛にさいなまれたが、今ではその力が自分の活力に変わっているのが分かった。それでもまだ全てを使いこなせていないのも分かる。
そしてサーニャとの戦いの中で、その力の使い方を学んでいく。
魔力による身体強化、その強化された体での戦い方。魔法の威力、種類、効果。科学者らしく一つ一つ戦闘の中で丁寧に解析していくリズは、最初とは比べ物にならないほど強くなっている。
「ならすぐに決めるだけです」
「私もあまりゆっくりとしているのは不味いですかね。勇者が来ると面倒です」
勇者は無機物魔獣のいる空洞に閉じ込めてあるが、ただの時間稼ぎにしかならないのはリズも分かっている。その作った時間のうちにサーニャを捕獲しなければ、二対一で戦わなければならないのだ。
さすがに魔王となったリズでも、それは一苦労なのは目に見えている。
二人の魔法がいまだ作用している中で、リズが先に動きた。
羽ばたいて天井に向かうと、天井を蹴ってサーニャへと一気に突っ込む。
サーニャは弾丸のような速度で迫るリズを躱すべく後方へと跳びながら詠唱した。
「立ちふさがる壁は世界を嗤う。土塊の硬壁」
「その程度で!」
地面からせりあがるようにしてリズとサーニャの間を割る土の壁。しかしリズはその壁を腕の一振りだけで破壊する。多少勢いを落としながらも、その羽ばたいて速度を稼ぎながらさらにサーニャへと迫る。
すでに詠唱しているだけの距離は無い。サーニャはすぐさま腰のエプロンリボンに隠していたナイフを取り出し、接近戦に備える。
「あはは、今の私に接近戦? 無駄だよ!」
振り下ろされる腕をサーニャはナイフで捌いていく。しかし、その毛に覆われた手を傷つけることはできずにいた。
右腕の突きを、顔を傾けて避ける。左腕のスイングをナイフで軌道を逸らす。再び右腕から突きが放たれ、それを体を捩じったところでリズが小さく呟いた。
「爆」
それは短縮詠唱による爆発。魔王のサーニャからしてみれば、その威力など避ける必要もないほど弱いものだった。しかし、体を捩じった状態のサーニャはその衝撃波をまともに受ける。
体に傷はつかずとも、その衝撃波に押され体勢を完全に崩した所へ、リズがストンピングで追い打ちをかける。
地面を転がりながら躱すサーニャだが、やがて壁際まで追い込まれてしまった。
しかし、何もせずただ転がっていた訳ではない。
「――世界を嗤え。洸炎の渦」
転がりながら詠唱し、壁際で起き上がると同時にリズに向けて炎を放つ。リズの足もとから噴き出した炎は、リズが飛んで避けようとしても、その周囲を一気に囲い退路を阻む。
「しぶといですね! いい加減諦めてくださいよ!」
リズはその場で激しく羽を羽ばたかせ体を回転させる。そして、その尻尾で周囲の炎を薙ぎ払った。
「そんなっ!?」
「力の掌握は完了しました。もうあなたの魔法では私は倒せませんよ。さあ、最後の実験を始めましょう」
リズの言葉と同時に、レイトクロックの魔法が解ける。世界が通常の時間軸に戻り、ゆっくりと落下していた破片が一斉に地面へと散らばった。
「魔法も切れたようですね。けど私の魔法はまだ解けていません」
サーニャのレイトクロックと同時に発動したリズの魔法、スピードワールドはまだリズの速度を上昇させたままだ。
そしてリズが一歩を踏み出し、サーニャの知覚を超える速度で懐へと入り込む。
「さあ、目覚めなさい!」
サーニャの胸へとリズの右手が伸びる。その手には白衣に入っていた注射器がしっかりと握られていた。
その針は狙いたがわずサーニャの胸を突き刺し心臓へと到達する。
中の液体と共に虫が心臓へと流れ込んだ。
「くっ……あ……」
強引に手を振るいリズを引き離す。そして心臓に刺さったままの注射器を抜き放ちその場に倒れ込む。
「あはは、これで完成する! 私の魔王! 私が作った究極の魔王! あはははははっ!?」
自らの作品の完成を間近にサーニャがひざまずく目の前で高笑いを上げるリズ、しかしその高笑いは突然の衝撃によって壊れている機材に叩きつけられることで、強制的に中断させられた。
「なにが!?」
リズの視線の先。サーニャは青い膜のようなものに包まれていた。それは渦を巻くようにサーニャを囲い、次第にサーニャの中へと流れ込んでいく。
その動きでリズはそれが何なのかを理解した。
「魔力!?」
濃密過ぎるせいで可視化できるまでに圧縮された濃密な魔力。その流れが全てサーニャの中へと注ぎ込まれているのだ。
その一遍ですら、魔王化したリズの魔力を凌駕する量の魔力を、サーニャは幾重にも纏いそして吸収していく。
膨らみ続けるサーニャの魔力に、リズは気づかぬうちに冷や汗を流していた。
「これが、これが究極の魔王!」
冷や汗を流した感情が、完成の歓喜へと変わる頃、青い魔力は全てサーニャの中へと入って行った。残されたのは膝を着き自分を抱きしめるように肩を抱いたサーニャだけだ。
そしてそれがゆっくりと顔を上げる。その眼はこれまでと同じように赤々と輝いている。
一見その姿にリズのような極端な変化は見られない。
リズはゆっくりと立ち上がりそれに声をかけた。
「どうですか、魔王として再び覚醒した気持ちは」
「……」
「何か異常はありますか? それともまだ不安定なのでしょうか?」
何も返さないそれに、リズは首をかしげる。
そんなリズの様子を赤い目でじっと見ていたそれが小さく呟いた。
「……俗物が」
「え?」
その動きは、リズは非常に緩慢に見えた。今の自分ならば躱せて当然の動き。そのはずなのに、気付いたときには、リズは自分の頭を鷲掴みにされていた。
すでに足は地に付いておらず、両手でその手を掴み何とか逃れようとする。しかし、それの力はこれほどまでとは比べ物にならないほど上昇しており、ピクリとも動かない。
「下級の魔物ごときがこの私の体に触れるなど、よほど死にたいらしいな」
「な、何を言っているのですか。あなたの力を復活させたのはこの私ですよ。この手を放してください」
「そうだな、復活させたことだけは認めてやる。ならばその功績として殺すのだけは勘弁してやろう」
「なにっ……を……」
次の瞬間、リズの腹にはそれの左手が突き刺さっていた。そしてその腕を引き抜くと、続けざまに羽を握り強引に引きちぎる。足を握り潰す。毛の生えた両手を手刀で斬り落とす。
一瞬にしてリズはダルマ状態にされていた。
そしてゆっくりと湧き上がってくる痛み。その激痛に悲鳴を上げようとした時、喉にそれの指が伸び、そこに風穴を開けられた。
かすれるように空気が漏れ、悲鳴が出ない。
「魔物の悲鳴なんぞ、聞き飽きた」
詰まらない物を見る目でそれはリズを見つめ、やがて頭を離す。
両足を折られ羽もちぎられたリズは、そのまま地面に倒れ込み血だまりを作る。しかし魔王としての生命力が、死ぬことを許さない。
苦しみの中で見えたのは、悠然と立つ魔王サタンの姿と、洞窟から走ってやってくる勇者の姿だった。