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剣士は拳闘士と共闘し、勇者は乱舞する。3

「凄いわね……」


 シルビアは目の前の光景に唖然としていた。

 トモネを中心に大地が割れ、回り一帯の燃えていた民家を破壊し、ゴブリン割れ目に落とし殺していた。

 殲滅と言う言葉が、シルビアの頭に浮かぶ。


「最近全力を出していなかったので、すっきりしました」


 トモネはすっきりした表情で、額の汗を拭う動作をする。

 エースを殴っていた時の拳が本気ではなかったのにも驚きつつ、シルビアはそっと告げる。


「エースには使わないであげてね?」

「流石にこれは使いませんよ。それに今の技をエースさんに当てても、いつものパンチとあんまり威力は変わりませんよ?」

「そうなの!?」

「この技は地面を破壊するための技ですから。地脈に流れる気を利用して爆発させる技なんです」

「凄い技もあったものね……キールさんの魔法にも驚かされっぱなしだけど、トモネも結構常識外れね……」

「キールさんに比べたら私の技なんて些細なものですよ」


 そう言いながらトモネは頬に手を当てて、身をくねくねさせる。

 キールと同レベルだと言われて嬉しいのだろうか……シルビアは疑問に思いながらも口にはしない。


「まあ良いわ。今ので大分ゴブリンも減ったみたいだし、先へ進みましょ」

「はい!」


 エースとシルビア、トモネはそれぞれ生き残っていたゴブリンを掃討しながら中央へ向かって進んで行く。

 そのなかで、何人か隠れていた人を見つけ、同行させた。


「ここが中央ね。エースはまだ来てないみたい」

「そうですね。あちらは一人ですし、その分時間が掛かってるんでしょうか?」

「そうかもしれないわね。皆さん!ここで仲間と合流するので、すこし待っててください。これだけ見晴らしが良ければ、近づいてくるゴブリンにはすぐに気づけますので、安心してください!」


 隠れていたのは、ゆっくりとしか歩くことが出来ずに逃げる時間が無かった老人や子供、その保護者がほとんどだった。

 二人は生き残りを一か所に集めて、それを中心に二人でエースが来るまで周囲を警戒することにした。




 しばらくして、そこにエースが何人か連れてやってきた。

 だがエースが連れてきたのも、同じように子供や老人がほとんどだ。


「そっちはそれだけか?」


 エースがシルビアに聞く。


「ええ、そっちは割と少なかったわね」


 連れてきた人たちを見て、シルビアは疑問に思った。

 中央までの距離はエースの進んだ道とシルビア達の進んだ道は同じはずだ。それでいて生き残りが少ないと言うことは、エースの進んだ道は被害がひどかったのだろうか……


「ああ、来る途中に村人が避難した集会場を見つけてな。かなりの人数がいたから、シルビア達と合流してから移動した方が良いと思って、何人かいた冒険者にそこの守りを任せて生き残り探しながらこっちに来た」

「そうなの? ならこの人達もそっちに移動してもらって、一緒に移動させましょうか」

「ああ、その方がいいだろ。別々に移動させても時間が掛かるだけだし。そう言えば、さっき凄い地震があったけどそっち大丈夫だったか?」

「……あれトモネの技よ」

「マジ?」

「受けたくなかったら、気をつけることね」


 それには流石のエースも顔をひきつらせる。

 痛いことは喜びになるが、地面を揺らし、砕くほどの威力では痛いどころの話ではない。

 エースも命は惜しいようだ。


「気をつけるよ……」


 シルビアはトモネの技の威力が変わらないことを知っていたが、それを知ってなおエースに脅しを掛けといた。

 毎回、二人の間に入って行動するのは何かと疲れるのだ。

 新しく来た冒険者の人達と話すトモネを見ながら、これで少しは楽になるとシルビアはため息をついた。


 今いる全員に今後の事を説明し、シルビア達は集会場に来た。

 集会場には、エースの説明通り、かなり多くの人がおり、移動するにはかなりの時間が掛かりそうだ。それに、これだけの人数を移動させるとなると、場所も考えなくてはならない。

 どこにゴブリンの生き残りが潜んでいるかもわからないのだ。集会場にこのままいるわけにもいかない。


「どうするかな」

「どうしましょうね」

「キールさんに相談してみますか?」

「今は治療で忙しいでしょうか、あまり頼りたくはないわね」


 三人で相談していると、一人の老人がやってきた。


「あの……少しよろしいかな?」

「はい、何でしょう?」

「避難場所に案があるのじゃが」

「それはどこ!?」


 シルビアが食いついた。

 老人は引き顔になりながらも答える。


「村から少し離れた場所に洞窟があるんじゃ。普段は厳重に鍵をして誰も入れんようになっとる。もちろん魔獣や魔物も掃討して安全は確保してある場所じゃ。こういう時の避難場所にもなっとる」

「それはいいこと聞いたな。なら俺はそっちに行ってもいいと思う」

「そうね。場所はどこにあります?」

「ここからそんなに遠くは無い。村を出て五分ほど歩いた所じゃ」

「決定ね」

「ああ。トモネにも話しておいてくれ。俺は皆に話してくる」

「分かったわ。お願いね」


 逃げ遅れた人全員の一斉避難が始まった。




 トモネが右翼、シルビアが左翼を守り、エースが一団の後ろを守る形で生き残った人々は移動を開始した。

 まずは、どこにゴブリンが隠れているか分からないので、多少遠回りになろうとも村から出ることを優先した。

 村の回りは比較的平原が多いため、ゴブリンの隠れる場所が少なく、奇襲されにくい。

 避難所の場所を知っているおじいさんに先導を頼み、エース達は警戒しながら進んで行く。

 平原を進む間も、何度かゴブリンの襲撃を受けたが、三人が落ち着いて対処し、村人に被害が出ることは無かった。

 そして、避難所まで到着した。


「ここですか」

「そうじゃ。これが鍵じゃ」


 おじいさんが懐から一本の古びた鍵を取り出した。

 それを洞窟に作られた扉のカギ穴に差し込みねじる。

 ガチャっと音がして、鍵が開いた。

 シルビアが扉を押すと、ギギギギと重い音がしながらゆっくりと開く。

 中は真っ暗で、奥の状況は全く見えない。


「私が先を行くわ。誰か明りをお願い」

「シルビアこれ使え!

 祖は偉大なる世界の母、その光で子を導きたまえ。ホーリーライト!」


 勇者が唱えると、手に魔術師や占い師が使う様な水晶大の光が現れた。


「これなら結構な明るさがある。あと、光を浴びてれば体力を回復してくれるから」

「それはありがたいわね。使わせてもらうわ」


 シルビアはホーリーライトを受け取ると、洞窟の中へ入った。

 洞窟の中はかなり整備されており、坂も木の板が埋め込まれ階段状になっていた。

 どんどん奥に進んで行くと、大きな空洞に出た。おそらくここがメインの避難場所になるのだろう。

 空洞の中央にホーリーライトを置き、その周りに村人を集めた。


「ここにいれば安全ね」

「そうですね。けが人が沢山いるのでキールさんを呼んで来ましょうか?」

「そうね。お願いできるかしら」

「はい」


 逃げる際に転んだ人や、ゴブリンに襲われながらも何とか逃げ伸びた人など、けが人は多い。

 突入からある程度は時間が立っているため、キールの方もひと段落ついているだろうとの判断だ。

 トモネが洞窟を出ている間に、シルビアはエースと入口を交互で見張る。

 ゴブリンが来た時のためだ。ぞろぞろと大勢で移動していたのだからゴブリンにも気づかれているはずだ。


 それから数分後、真っ暗になった平原に松明の明かりが近付いてくるのが見えた。

 おそらくトモネが呼びに行ったキールが来たのだろう。

 エースは目を凝らして、明りを見つめる。

 確定ではない状態で、うかつに気を抜くのは危険なことだからだ。

 しばらく見ていると、特徴的なカソックとメイド服が見えた。そこでキールたちが来たのだと確信する。どうやらゴブリン達が来る前に合流することが出来たと、エースはホッとする。

 正直、まだ戦い足りない部分があったが、それは自分の欲望であって、それに村人を巻き込んではいけない。

 その事の分別ぐらいは勇者にもついていた。


「ここか」

「ああ、悪いな来てもらって」

「いい、それよりけが人が先だ」


 キールたちを中に入れて、洞窟の扉を閉める。

 そして再び、そとの警戒に戻ろうとした時、キールに呼び止められた。


「何をしている。早く行くぞ」

「いや、俺はゴブリンを警戒しないと」

「あいつらならこっちに来る序に全滅させた。お前らあんな奴らも片づけられないのか」


 キールはため息を一つ付き、ライトと呟く。

 すると、周辺がパッと明るくなった。


「マジ?」

「マジだ。疑うんなら、しばき倒すぞ」

「いえ、すみません。疑ってすみませんでした。どうかお仕置きをお願いします!」

「ええい、鬱陶しい!」


 キールはエースを無視して奥へ進んで行く。

 サーニャはいつも通りの表情で、トモネはゲテモノを見るかのような目つきでエースを仰ぎ見て、キールに続く。


「放置プレイもかなり来るぜ……」


 エースは悶々としながら、キールたちの跡をついて行った。




 翌日、明るくなったところで、避難した人たちは村に戻ることになった。

 念のため、シルビア達も同行することになった。


 町は酷い荒れようで、火の手はおさまっているものの、沢山の民家が燃えて炭になってしまっている。

 しかし、村人は絶望に打ちひしがれること無く、すぐに村の復旧を開始した。

 その光景を見ながら、シルビアが呟く。


「私たちに協力できることってないかしら」

「あることはあるが、それは俺達のやるべきことでは無いだろ。魔王を討伐するのが目的なら、その目的を忘れるな」

「でも……いえ、そうね」


 シルビアは尚も何か言おうとして、言うのを止めた。


「この次の町まではどれくらいある?」

「ここに着くまでに掛かった時間と同じくらいかしら」

「なら補給は必要ないだろ」

「はい、切り詰めれば持ちます」


 料理を担当しているサーニャが答える。

 サーニャは料理を担当しているうちに、自然と食料の管理もするようになっていた。


「なら行こうぜ。ここは中継の町だし、行商とかもくればすぐに復旧は出来るだろ。俺達は姫様を助けないといけないんだ」

「そうね。行きましょうか」


 シルビア達は、早々に村を立ち、南下を進めた。



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