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プロローグ

 王都スプリジア。その名の通り、王が住む城の城下町として栄え、この国の市政を統括する大都市である。

 そんな大都市に、もっとも多く存在する教会が聖フィオ教会だ。

 フィオ教は、この世で最も布教されている宗教で、人類の半数以上はこのフィオ教を信仰している。

 そんな、数多く存在する聖フィオ教会の一つに少女はいた。

 片膝をついて、赤子を抱く聖母ホーライトの像に祈りをささげている。

 服は平民と同らしく、質の悪い麻でできている。それに似つかわしくない美しい金色の髪が、ステンドグラスから差し込む光を受けて、煌びやかに輝いていた。


「ああ、どうか一日でも早く、この世界から魔物の恐怖が消えますように」


 そう祈るのが少女の日課だ。

 今日も同じように、聖母ホーライトの像に向かって祈りをささげていた。


「最近では、西の森で魔物が増えていると聞きます。ホーライト様、どうか弱き私たちに神の御加護を」


 その日の祈りを終え、教会を出ようと立ち上がった時、変化は起きた。

 辺り一帯が白く輝き、景色が見えなくなる。

 始めは座り続けたせいで立ちくらみにあったのかと思った。そして近くにあるはずの木製の椅子に手をかけようとした。だが、その手は空を切りバランスを崩す。

 そこにあるはずの物がない。

 少女は一瞬のうちに、真っ白な空間に閉じ込められていた。


「な……なにが……」


 その光景に驚き慌てる。

 しかし、どこか安心感のある空間だと少女は感じてしまった。

 ――――まるで母親の腕の中に抱かれるような。


(マリア―――マリア―――)


 突然、頭の中に響き渡る声。

 それは紛れもなく少女の名前を呼んでいた。


(聞こえますか、マリア―――)


「は……はい。聞こえます」


 少女マリアは、無意識のうちにその声に返事をする。


(あなたにフィロ様からの啓示を与えます)


 フィロ。それは少女が祈りをささげていた神の名前。

 ならばその言葉を告げるこの声は?


「あ、あなたは」


(私は、あなた達がホーライトと呼ぶ存在。あなたが毎日、欠かさず祈りをささげたことで、私とあなたの間に絆ができ、それによって神の啓示を告げることができるようになりました。啓示を聞き、どのように行動するかはあなた次第です。あなたの心のままに行動しなさい)


「はい」


 マリアは聖母ホーライトだと名乗る声が嘘を言っているとは思えなかった。

 そして聖母ホーライトの言葉を――神の啓示を受け入れる。


(間もなくあなたのいる教会に来る少年がいます。名はエース。神の加護を受け、光の力を宿した、勇者となるべき存在の少年です。あなたは、この啓示をその少年に伝えるのです。そうすれば、あなたの行動はきっと世界を良い方向へと導くでしょう)


「はい、ホーライト様」


 マリアは一度だけうなずいた。

 すると光に満たされていた空間はスッと無くなり、元の教会に戻っていた。

 マリアは教会の扉を見る。

 今から来る少年に聖母ホーライトから授かった神の啓示を伝えるために。


 そしてこの瞬間から、勇者となる少年の運命は、大きく回り(くるい)出した。

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