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第5回廊―カウントダウン

残すところ後10。しかし不気味さが露骨に現れる回廊に思わぬ罠が・・・

[8/28 1:00] 第9回廊


 アルス・マグナのペナルティが解除されたのを確認した後、装備の点検とアイテムの補充を時間を一つ一つ丁寧に、慎重に、確実に行った。タイムリミットは95時間を切ったが、残すところ後10回廊のみ。

 時間に十分な余裕がある今ならば、焦って先を急ぎ死に戻りのリスクを冒すよりも安全を最優先に時間をかけて進む事を選んだ。


 回廊の構造は俺がここを始めてみた時と同じものだった。やや明るい灰色の石畳が上下左右にびっしりと敷き詰められた迷宮・・・壁が厚く、天井もあるためこれまでしてきたようなショートカットや壁をぶち抜いて進むと言った大胆な行軍手段も取れないまっとうな迷宮回廊。おまけにこの9から1回廊までは敵の強さと数よりも迷宮としての難易度の方が高い記憶がある。

 だから、各回廊ごとの攻略時間はかなり取られるだろうが危険性はかなり低いはずだ。たとえ敵が強化されていようとも今のレベルならば確実に仕留める事もできうる・・・




[8/28 2:10] 第8回廊


「・・・・・・変だ」

「何がですか?」

 思わず漏れた言葉にアリスが気になって声を返してきた。「大したことではないです」と適当に話を流したモノの異変を感じた事に嫌な予感を感じてしまう。

 ここまでおよそ1時間近くというかなりの攻略時間をかけたのだが、その全てを探索にのみ費やしていた。


 そう・・・敵と一度も遭遇しなかったのだ。


 あれだけ広大な迷宮であったのにもかかわらず敵と会わないどころか潜んでいる気配すらしなかった。なかには大型の敵がいるはずであろう大部屋もあったというのに・・・

 そして、そのことに加えこの回廊に着いてからまた別の・・・新たな違和感が生じる。

 その違和感がどこから来るのか全く見当がつかないが、とにかく今は先に進むしかないだろう・・・




[8/28 8:22] 第5回廊


 いよいよもって異常だと感じる。ここまでの道中・・・敵との遭遇回数が全くのゼロ・・・おまけに8回廊から感じ始めた違和感は徐々に大きくなって、今では気分が悪くなりそうなほどの悪寒となって感じる。

 それでもその根源がどこなのかがまるでつかめない。流石に、アリスもこの状況を不審に感じているのか表情がかなり強張っている。口数も減った・・・どころかほぼ全く喋らなくなっている。

 それでも進むしかない現状・・・黙々と先を目指して歩き続けた。


――そして、とんでもない異変に気付くこととなった。




[8/28 9:41] 第5回廊 ループ1


「んなっあ!?」

 あまりに衝撃的な事だった所為で思わず声を張り上げてしまった。それもそのはずだ・・・俺はたった今さっき、次の回廊・・・4回廊へ続く道を見つけそこを通ったはずなのに・・・通った先はこの5回廊の入り口・・・


 あり得ない・・・あり得ない!なぜここに戻ってきた!?確かに前に進んだはずなのに元の場所に戻って来た・・・戻ってきてしまった!!


 その受け入れがたい事実を必死で否定するために再び次の回廊を目指す。何かロジックがあると仮定し、前とは違う道を進んではたどり着き、たどり着いては元の位置へ・・・また進んではまたもとの位置へ・・・




[8/29 2:11] 第5回廊 ループ28


 この5回廊を延々と歩きまわること早17時間もの時間が過ぎたが、一向に脱出の糸口を掴めずにいた。行けども行けども理由は解らず、進めば進むほどに焦りが生まれる。焦りが焦りを呼び・・・冷静な判断ができないと頭の隅で感じながらも冷静になることができなくなり始めて居た。

 冷静な思考回路が奪われる最大の要因になったのは、一旦10回廊のセーフティーエリアまで戻って考え直そうとした時だ。6回廊へ戻るためにある居たはずが今度は5回廊の出口・・・4回廊への道の前に出てしまったのだ。

 このことが焦りを決定的なまでに増長させ、考えるよりも先に行動・・・石畳の石の一つ一つをしらみつぶしに調べ上げるかと言わんばかりなほどにひたすら5回廊を練り歩き続けた。


「くそっ!くそっ!くそっ!何がどーなってるんだ!?」

 焦りのあまり悪態を抑えることができず、壁を意味もなく殴りながら叫ぶ。これだけの時間を費やしているというのに何一つ解らない・・・それどころか戻ることもできず、完全に閉じ込められてしまっている。違和感だらけでもはや頭が狂いそうなほどの状況でひたすら壁を殴り続ける・・・


 ひたすらに壁を殴り続け・・・・・・


 唐突に感じた違和感によって暴走しかけて居た思考回路を一気に冷やす。そして冷え切った思考回路が正しく回転しく・・・激しく回り始める。


 一つの推論を元にある手段を思いついた。もし外れて居れば確実に詰み・・・そして、もしこれが正しい場合・・・『敵』にばれても詰みだ。


 チャンスは一度・・・たったの一瞬・・・なすべきは攻撃。使うはダークブリンガー・・・『プリズン』。対象は・・・自分っ


「・・・撃て」

 そこで紡がれた言葉はそれが最後だった・・・




「ぐっ・・・あぁぁぁぁぁ!」

 自分に向けて撃たれたダークブリンガーの痛みに絶叫しながらも、成功の確信を得た。今いるここは確かに第5回廊・・・だが、俺たちはそこから一切動いていない!

 開かれた瞳に映ったのは自分を貫く黒い閃光の先に居る『敵』――のっぺりと顔がなく、関節ごとに細くなった。不気味な人形の様なそれ・・・それこそが俺を・・・俺たちをループに閉じ込めた敵だ。


ザ・フェイカー Lv0


 取得したデータに出たのはかつて戦ったザ・ペイン、ペインロードと同じLv0の敵・・・これで疑いようもなくなった。ザ・フェイカー(こいつ)の力によっておそらく催眠状態に落とされ、言ってみれば夢の中でひたすらこの5回廊を延々と歩きまわされて居たのだ。

 からくりさえ解ってしまえば相手は戦闘能力が皆無のLv0モンスター。再びあっちに追いやられる前に・・・未だ黒い閃光が自分を貫き激痛が身体を走っている中で銃を奴に向け込められていた弾丸全てを叩きこんだ。


 カラカラカラと不思議な音を鳴らしながら消滅していくザ・フェイカー。その幕引きは驚くほどあっさりとしていた・・・どうやら8回廊から感じ始めた違和感は奴が仕掛けてきた攻撃だったのだ。

 奴の力は即効性がなかったが、徐々に効き始めこの5回廊に着いたところで術中に落ちてしまったのだろう。すぐ近くにアリスも横たわっていた。

 なんにしても奴の術に気付くことができて良かった・・・正直あの時壁を殴って・・・まるで痛みを感じなかった事・・・アリスが俺の行動に何一つアクションを起こさなかったこと。

 それらの違和感に気付かなければ未だに奴の手の上で踊らされていただろう。とりあえず今はアリスを起こして先に――


「・・・・・・・」

 息が止まる。思考が止まる。事実を受け入れられずにいる。視界の端にある一つの表示が信じられない事を告げている。俺は未だに奴の術中に居るのだろうか・・・?


[8/30 20:33]


 タイムリミットが・・・30時間を切った


 カラカラカラとまるで俺をあざ笑うかのように耳の奥であの音が響く・・・

ここまで読んでいただきありがとうございました。

誤字・脱字・感想・ご指摘など、何かありましたら感想フォームにてよろしくお願いします。


えーっとなんていうか・・・その・・・アレです。辻褄合わせとか・・・そう言われると身も蓋もないんですが・・・そんな感じです。

字数的にもちょっと手抜き感が否めないかなぁ

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