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第10回廊―アリス

話はいきなり飛んで10回廊まで到着。残すは回廊は後わずか・・・しかし残り時間も後わずか・・・

[8/27 0:00] 第10回廊 セーフティーエリア


 20回廊からの攻略は拍子抜けしてしまうほどあっさりといった。19回廊から11回廊までのコンセプトは『ドラゴン』・・・一体何を考えてるのかと叫びたくなるほどLWOに存在するドラゴンが所狭しと徘徊していた。

 おまけに完全な洞窟調の回廊だったため前の回廊で使ったような裏技は使えなかったため最初は無理だと思っていた・・・。しかし、思いのほか突破できたのは一重に考え方を改めた結果だろう。


 今までは敵との戦闘を可能な限り避けながら戦闘になっても最小限のコストとリスクで戦うというスタイルを貫いていたのだが、ドラゴン系の的相手ではコストを抑えるとリスクが跳ね上がってしまう・・・特にアリスの生存確率というリスクが。

 だから、あえて19回廊から11回廊までの間MPが常に空になるほど銃撃魔法を使いまくるというここまでで一番解りやすい強行突破の手段を取った。お陰で回復アイテムをMPだけに絞ったのにマスターエリアに到着するころにはアイテムがほぼ0となり、アルス・マグナの使用を余儀なくされた。


 なんというか・・・最近アルス・マグナに頼り過ぎている兆候がある。正直俺としては常に最強のカードを使っているという状況が不安で仕方がない。保険は一つでも残しておきたいのだが・・・

 まぁ、どういう手段のどういう過程であれここまで来れたという結果が大事であろう。


 ついでにと言えば・・・レベルの上がり方がすさまじいことになった。


ベイル スペルガンナー Lv238

アリス ハーヴェスター Lv133


 ・・・改めて見てもあきれてしまう。確かにここに来るまで、回廊の敵を根こそぎ倒してはいたが・・・獲得経験値が少し多すぎる気がする。

 たった10回廊分で俺が10上がるのもさることながら、アリスの30上がりは極端すぎるだろう。一度目のデスゲームクリア時で大体攻略組が150ほどだったらしいので、アリスはレベルだけならば攻略組に入れるほどの力を僅か半日で手に入れてしまったのだ。

 本当にこの回廊はバランスというものが色々間違ってる気がする。経験値とか、装備とか・・・とはいえ、こちらとしてはありがたいバランスの悪さだろう。お陰で着実に脱出に近づいているのだから。


「・・・寝よ」

 ぽつりとそれだけ音として口から漏れると意識が一気にブラックアウトした。順調とはいえ、流石に今回のやり方は精神的な負担が大きかったのか驚くほどの速さで深い眠りについた。




[8/27 9:22]


「っ!?!?」

 それは眠りに落ちてから約9時間後のことだった。目を覚ましたと同時にとある理由から思いっきり後頭部を壁に打ち付けたのである。これは・・・そうアレだ!デジャブってやつだ。

 30回廊で起きたことと同じようにアリスと間近で目が合ったのだ。一体何を考えているのかまるで理解できないができればやめてほしい・・・心臓に悪すぎる。


「なんか前にも同じことあったような・・・とりあえずおはようベイル」

「・・・おはよう・・・ございます」

 挨拶もどこかデジャブを感じるがとりあえず返事だけはしておいた。


 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・が!


 今回は何かが違う。何が違うかって?それはあれだ、何時まで経ってもアリスがどいてくれないんだ。アリスは何も言わずにただ身を乗り出してこちらを覗きこんだままだ。

 俺としてはどいて欲しいし目を合わせて居る状況が辛い・・・ってか、以前からそうなのだが目のやり場にすっごく困るんだが・・・


「・・・えっと・・・その・・・何か用ですか・・・?」

 流石に我慢の限界だったため必死に出した言葉を聞いたアリスは何か満足そうに満面の笑みを浮かべると


「お願いがあるの。ベイル・・・私に無宣言発動を教えて」




[8/27 9:35]


「――っと、これが無宣言発動におけるポイントです。後は実際にやってみるといいかと思います」

「わかったわ。ありがとう」

 彼女が何を思い、何を考えたのかは解らない。正直今更な気もするのだが本人が望んでいる上、俺には拒否権がどう考えてもなかったため、教えることにした。とはいえ、俺のやり方でアリスができるかどうかは解らないが・・・

 まぁ正直言えば、アルス・マグナのペナルティが解消されるまでの残り15時間弱の間何もしないでただ黙っているのも気まずいのでありがたいと言えばありがたい。

 とりあえずアリスは無宣言発動の練習に意識が回るからこっちに話を振ることもそうそうないだろう。


 ・・・それにしても唐突・・・というべきだろうな。なぜ今更この世界での技術を磨こうと思ったのか。確かに使えることに損はないが、その技術も最長で後4日ちょっとで無意味なものと化す。

 何より一石一丁でどうにかなるものでもない。俺自身無宣言発動をひたすら練習してやっと使えるレベルまで達したモノをいくら指導付きとはいえそうそう簡単にはモノにならないだろう。




[8/27 10:40]


 ・・・前言撤回する必要がありそうだ。

 始めてから大体1時間が経ったが、無宣言発動の成功率が7割ほどになっている。流石にそれでは実戦での成功率はせいぜい4割程度だろうがかなりのハイペースだ・・・察するにもともと練習をしていたんだろう。発動したいスキルのイメージがしっかりしているように思える。


「ん~まだいまいちうまくいってないなぁ」

「・・・良くできています・・・よ。そもそもこのやり方は・・・膨大な量の反復によって頭と体に覚えさせるものです。現時点でそれだけできれば十分すぎるくらい・・・です」

 進捗状況にいまいち満足できないでぼやくアリスになんとなくフォローを入れる・・・が、まだ納得していない様子・・・というより何か別の事を考え始めているような・・・


「そーいえばベイルって、無宣言発動できるのに時々スキル宣言してるけど・・・どうして?」

「あ・・・えっと・・・」

 またまた唐突な問いゆえに回答に戸惑ってしまう・・・しかも以前にも同じことを聞かれた記憶がある。その時は何も言わなかったし、彼女も執拗に聞いてくることはしなかった。

 しかし今回はそうもいかないようだし、アレは無宣言発動の応用技術なんだが・・・まぁ、無理に秘匿するようなものでもないし・・・


「・・・アレは無宣言発動の・・・応用です。先ほど教えた発動のトリガーの発想を身体の動作ではなく単語の羅列をトリガーにすることで、スキル同士を・・・連結発動(チェイン)させて居るんです」

 スキル一つに対して宣言一つ。何も考えずに使えば通常の宣言発動も無宣言発動もこのルールに縛られてしまう。普通はそんなルールがあっても困ることは無いのだが、ブリンガー魔法を使う俺にとってはかなり致命的な縛りであった。

 スキルの冷却時間の短いブリンガー魔法を一回一回宣言していたらそれだけで疲弊してしまう。そこで、システム側に複数のスキルを一まとめのスキルとして宣言を誤認させる。この手法をマクロ宣言を自分で名付けた。

 スキルとスキルの発動をシステムのオートにゆだねることで発動の無駄を削るこのやり方は、言ってしまえば格ゲーのフルコンをボタン一つで発動するような手段だ。


 『アルス・マグナ』と『ブリンガー系銃撃法』・・・そして『マクロ宣言』。何の因果なのかこれら三つを手に入れた俺は反則的なまでの攻撃力を持ったプレイヤーになったのだ。




[8/27 14:51]


「ん~どうかな?」

「・・・文句の良いようがないと思います。あとは実戦で使えるか・・・になるかと」

 その後も無宣言発動の練習を続けた結果・・・成功率はほぼ10割に達しており、後は実戦で慣れて行けばいいレベルまで来ている。正直覚えるの早すぎだろう・・・そう思わずには居られなかった。


「そっか・・・ありがとうベイル」

「・・・どう・・・いたしまして」

 なんていうか、その・・・人から感謝されるのって初めてだった気がする。不意打ちだっただけに物凄く気恥ずかしくなり顔を伏せながらぼそぼそっとした返事しかできなかった。


「それに・・・今のを見て居る限りだと自分が教える必要なんて・・・」

「そんなことないよ!無宣言発動の練習は半年くらい前から初めてたけど全然うまくいかなかったの。できる人にコツとか聞いても内容が抽象的な事が多くてうまくいかなかったし・・・」

 気恥ずかしさからやや卑屈な返しをしたら。予想以上に反論されて面を食らった・・・というかアリスがまたなにか考え始めた。


「・・・これだけすごい力持ってるのに・・・どうして・・・その・・・今まで攻略に参加しなかったの?」

「っ!!」

 やや言いずらそうに投げかけられた問いはすさまじく答えにくいものだった。我ながら馬鹿馬鹿しく、恥辱の極みのような理由を言えるわけもなく・・・


「・・・この回廊の攻略ばかりを考えて居て・・・その、気付いたら」

 嘘ではないが内容をぼかす。人付合いが大の苦手だった為、勝手に孤立して・・・勝手に夢想して・・・勝手に自滅しただけの間抜けな道化・・・

 あーなんか思い返したらまた情けなくなってきた・・・


「なんだかもったいないな・・・ベイルがいたらきっと・・・もっと早く終わってたかも知れないから・・・」

 アリスはそういうが・・・はたしてどうだろうか・・・規格外の強さを持つ一人のスペルガンナー。


 孤高ではなく孤独ではなく・・・孤立した哀れなプレイヤー。


 そんな俺が入ってはたしてどれだけのことが変わっただろうか・・・はたしてかつて夢想した英雄になれたのだろうか・・・そんなことを考えていたら馬鹿馬鹿しくなってつい鼻で笑ってしまいそうになった。


「・・・もう過去です。今はここを脱出することを・・・考えましょう」

 アリスの言葉に対して出た答えがそれだった。

 そのあとは「出発の前にひと眠りします」とだけ言って一方的に狸寝入りを始めた・・・まぁ、ほどなくして本当に眠れるだろうし。


 俺が狸寝入りを始めてしばらくしてから彼女が俺の横に座り込んできたのを感じた。


 アリス・・・この第二のデスゲームで初めてであった俺以外の参加者。

 彼女が何を思ってこのゲームを始め、何を感じてこの世界で生きてきたのか・・・気になってきた。

 だけど、それを俺が直接聞くことはないだろう。俺と彼女はここを脱出するための協力関係・・・いや、個人的なイメージでいえば彼女は保護対象・・・護衛対象だ。相手の事を知る必要はない・・・ただ淡々と彼女を守りここから出してやる・・・俺ができるのはそれだけ・・・やることはそれだけなんだ。


 ここから出たら多分もう・・・

ここまで読んでいただきありがとうございました。

誤字・脱字・感想・ご指摘など、何かありましたら感想フォームにてよろしくお願いします。


あからさまですが・・・色々カットされました。正直ネタが無くてマンネリ状態の中身にする位ならいっそ!

・・・ということで扱いが残念になったドラゴンの諸君ごめんね

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