聖拳部へようこそ(◎´∀`)ノ.。.:*①
勢いよく部室に乗り込んできた彼女も、僕と勝負できないと知ってからは一気に拍子抜けといった感じで今はキョロキョロと室内を見回している。
「まだアメフト部時代に使ってたものがそのまんまだけど今は聖拳部の部室なんだ。」
「で?」
「で?って??」
「せいけん部って何かって聞いてるの!!」
「う~ん…一言でいうと学校内で困っている人を助ける正義のヒーロー!みたいな。」
「その一言でまとめられてもよくわかんないなぁ…。不良に制裁を下すとかそんな感じ?」
シュッ、シュッと彼女は2回左の拳を突き出した。どうやら“制裁”という意味のジェスチャーらしい。
「この学校に不良なんていないよ。無くした教科書を探してあげたり、テスト前にノートをコピーして あげたりそれから…」
「ただの便利屋じゃない!」
「便利屋!?僕は人助けをするヒーローで便利屋なんかと一緒にされると困るんだけど。」
「なんかこだわりあるみたいだけどどっちでも一緒!!それに部活っていってもさっきからずっとそこ 座ってるだけよね?ヒーローって暇なわけ!?」
「何もしないのは平和の証だよ。だれも困ってる人がいないってことだからね。」
「ふぅ~ん。」
彼女はあきれた様子でまた室内を見回している。一周回ったところで僕と目があう。
「じゃあさ、困ってる人がいたら助けてくれるの?」
「もちろん!僕にできることなら最大限!」
「ここにいるよ。困ってる女の子が一人。」
わざとらしく目をあちこちにやるが、当然“女の子”という存在はこの空間においては目の前の彼女しかいない。
「私ね、数年前の決着をつける為にある人と勝負したいんだけど相手が引き受けてくれないの。ってこ んな依頼なんだけどどうかな?」
「それって思いっきり僕のことだよね?」
「正義のヒーローは何でも解決してくれるんじゃないの?」
「ほら、さっきも言ったけどまだ腕が完治してなくて…だから…その」
密室。迫りくる敵。追い詰められたヒーロー。
テレビなんかだ最大のピンチに助っ人が現れてという場面なんだろうけど…
そんなどうでもいいようなことを考えていた正にその時、僕の前にも助っ人が現れた。
「斗真君!!」
現れたのは助っ人というより悪の怪人にさらわれる、そんな役がぴったりな小柄な女の子だった。