覚悟しなさい (">ω<)っ)) ④
「どう?思い出してくれたかしら?」
口をはさむでもなくうなずくでもなく、ただじっと話しを聞いていた僕だったが、そう聞かれて思わず言葉が飛び出した。
「あの時道場にいた子が君なんだよね?」
「アンタ話聞いてたでしょ!?そうよ!あの時の屈辱は忘れてない…だから今すぐ私と勝負しなさい!
そして今度は私が勝つんだから覚悟なさいよね!」
「勝負なんて必用ないさ。」
「何!?逃げるつもり?それとも私相手じゃ不満なわけ?」
「そうじゃない。僕を気の済むまで殴ってくれないか?」
今まで炎のように燃え上っていた彼女の気迫は一気に鎮火され、熱い視線から冷たい視線へと変わった。
「アンタ、そんな趣味あったんだ…」
「何か勘違いしてるみたいだけどちゃんと話を聞いて!僕はあの時道場にいた君は男だと思ってたん だ。」
「確かに髪はショートで色も黒かったから無理もないけど。ってそれとあんたの変態的趣味とどう関係 あるのよ!?」
「だから話は最後までちゃんと聞いて!僕はどんな理由であっても女の子には手を出さないと誓ってき た。それがヒーローの条件だから…。なのにあの時女の子に手を出していたなんて!!ヒーロー失 格さ。だからせめてもの償いに殴るなり蹴るなり気の済むようにやってくれ。」
「ちゃんと聞いてもよくわかんないんだけど…あぁ、もぅ、と・に・か・く!!一方的に私があんたを 殴っても気が済まないの!ちゃんと拳を交えてそれで決着つけたいの!」
「それは無理だよ。」
「私が女であんたがヒーローだから?そんなばかな理由だったら納得できないんだけど。」
「それもあるけど…右の肩が上がらないんだ。僕が入院してたのは知ってる?まだ怪我が完治してなく
て右腕はこんな状態。」
腕をぶらぶらさせ彼女に視線を送る。彼女は僕の話を信じたのか、それとも僕がやる気のない事にようやく気付いたのか、さっきまで瞳の奥に輝いていた何かはもうそこにはなかった。
「それで、腕はいつ治るの?」
「いつだろ?リハビリ次第ってとこでまだ何とも…」
「早く治しなさいよね。治して私と勝負なさい!ってゆーかさ、肩上がんないならアメフトなんてでき ないでしょ!?部室なんていないでさっさと病院行ってリハビリしなさいよ!」
「アメフト?あぁ、ここはアメフト部の部室だけど僕はアメフト部員じゃないよ。それにアメフト部は 部員不足で去年廃部になったし。部室だけはこうして残ってるんだけど。」
「じゃぁあんたはこんなとこで何してんのよ?」
「部活だよ。もちろんアメフトじゃないから。ここは聖拳部の部室なんだ。」
「せいけん部??」
僕と彼女の出会いが、いや、正確には運命の再会が聖拳部の歯車を大きく動かしていくことになるのだった。