タイトル未定2026/09/30 00:19
「ちょっと待ってよ、これ、どういうことなの?」
辺りには草原が広がっている。
「これ、どういうことなの?!」
(つい、さっきのこと、)
朝起きる。
そして、三回目をこすった後無理やり手でまぶたを開けて、眼球に空気を送り込んで、どうにか目を覚ます。
そして、鏡で自分の顔を確認する。腫れぼったい顔をしているけど、正直寝起き以外の顔なんて見たことがない。
もちろん、0というわけではない。でも、基本見ない。
おそらく、他の人はこんな朝一番に身だしなみなんて整えないと思うのだけれども、私は目が覚めるまで時間がかかるので、こうやってから階段を下って朝食を食べに行く。
母は、朝早く仕事に出かける。父は、ついこの前離婚してしまったので、食卓にはだいたい私一人でいることが多い。
母の作ってくれた朝食を、あんまり噛まずに流し込んで、トイレを済ませ、歯を磨き、着替えて、私は外に出る。
スマホを見て気がついたが、今日はバレンタインデーだ。
・・・
って、あげる側か。
でも、心予報のMVじゃ、黒髪の一番小さい女の子が、最後の最後でチョコを渡す場面で、相手の男の子と一緒にぺこって頭下げて、チョコ渡し合ってたもんな。
期待ゼロでいるのはいいことではない。
というわけで、私は高校へ行く途中にあるセブンイレブンで板チョコを一つ買ってから、学校へ向かうことにした。
私は、板チョコが割れるといけない、と思ってポケットに入れたが、それだと溶けるかもしれない、と思って結局カバンの筆箱の中に無理やり詰め込んだ。
そろそろ、このトラの筆箱も交換時かななんて思っていたが、これは、来年のバレンタインまでとっといて置かなければいけないな。
友達が少ない私は、学校までの道のりに障害となるものがまったく無かったので、何事も起きずに教室までの道のりを満喫した。
教室に行くと、いつも一緒に話している玲奈が引き出しの中をガサゴソと漁っていた。
私は、わざわざ教室の後ろの方をぐるりと回って彼女のところに行く。
彼女はこちらに気がついたみたいで、「おい、今日何の日かわかってんのか?」と別人みたいな口調で私に話しかけてきた。
「えっ、今日はバレンタインじゃん」
バレンタインと言う度に、ジョジョ七部のあの大統領が出てくるけれども、あれはVの発音だったか。
まあ、そんなことはどうだっていいのだ。
「な?じゃ、やることは一つだよ。おい、下駄箱片っ端から漁って、何としてもカップル成立を防ぐぞ!!」
彼女の目は真っ赤に充血していた。黒目がいつもよりも黒く見えた。
そして、その目には赤く染まった私の姿が映っていた。
「おい、来てくれよ!!頼むよ!!私は、なんとしても、カップルの成立を防ぐん゙だよ゙!!」
唇が怒りのせいなのか、段々と彼女の口の中に引っ込んでいく。
「わ、私は別に、そんなの気にしないもん、」
私たちが教室の隅でこんな会話をしていても、クラスの注目というものは集まるわけではないのだ。
ほんと、不思議なものだ。
「ああ、そういう奴だったのかよ。もう、いいわ。一人でやる」
そういって、玲奈は片手に何やらお守り?のようなものを持って教室の外に出ていった。
と思ったら、すぐにこちらに戻ってきた。
「そんなあんたにも一個いいものをあげるわ。これよ」
そうして、彼女は私のぎゅっと握りしめた拳の隙間に、なにやら変なものをねじ込もうとしてきたのだが、全然ねじ込めるサイズではない。
「ちょっと、なにこれ?」
なにやら、金色で、変な文字がかいてあって、赤ん坊がジャラジャラ鳴らして喜ぶやつに似ている。太い円柱と細い円柱が二つ組み合わさっている、・・・なんだろうか?
太い方の円柱は、文字の書いてある部分をくるくると回すことができた。
「・・・なにこれ?」
「これは、マニ車っていうの。一回回すと、お経を一回唱えたのと同じ効果があるの」
それなら、唱えさせてくれよ。この、手のひらサイズより少し大きいくらいのおもちゃを回すよりも、唱えたほうがきっといい。
全然違うものだぞ。
「で、これはなんなの?」
「だから、マニ車よ。まあ、あんたがそれを持って、「別れろ別れろ」って唱えれば、目の前でカップルが海の藻屑となるから、頑張って!!私も、同じの持ってるから」
そういって、彼女は私に、ウィン、とウインクをした。
で、結局彼女は教室から出ていった。
まあ、彼女なりのバレンタインジョークだろう。
「我が心と行動に一点の曇りなし………!全てが『正義』だ」ということだ。
しかし、彼女がいなくなってしまえば、私には話す相手がいない。
仕方がないので、私はスマホでいつも読んでいるなろうサイトのお気に入りの小説の続きを見ることにした。
指で何度も画面をスワイプさせていると、突然、「あの、ちょっといいかな?」と声が聞こえた。
私は、まあ勘違いだろう、と思ってスマホを縦にスワイプ捺せ続けていたのだが、今度は、前の方からその「あの、ごめん」という声が聞こえてきた。
私は、恐る恐る顔を上げた。
「あのさ、」
席に座ったままの私に、上から声を被せてきている。
私は、スマホをスワイプする手を止めて、両手を両腿の間にしまい込んで、私は、いつもよりも体全体を体の中心に向かって移動させた。
「・・・今日、伝えたいことがあるんだ」
私は、バッと顔を上げた。
そして、彼の瞳の中に私の姿が映った。
そして、その瞳に映る私が、ピカっと笑う。
「え!?!!?・・・・・ま゙じで?」
彼はうん、と頷く。
「え、・・・あ、・・・え?」
彼は少し照れたように下を見た。
彼の瞳の中にいた私も消える。
「だからさ、・・・ちょっと教室で待っててくれない?」
その瞬間から、私の記憶が一旦無くなって、気がつけば、私は放課後の教室で、一人彼を待っていた。
なんとなくカバンを漁っていたら、玲奈からもらった、えっと、なんちゃら車と朝買った板チョコが入っていた。チョコは、彼にでもあげるか。
ちょっと、願掛けというか、一応回してみるか。
それにしても、
これって、告白だよね?
15歳にして、ようやく訪れたか。
え、でも、付き合ったらどうしよう、ディズニーとか、ランドでもいいけど、シーは行ったこと無いんだよな。
一緒に映画見たりして、
え、あってるよな?
ちょっと、経験がないから、不安だな。
でも、家に誘ったりして、それでとかも、あるのか?
「あっ、」
彼が、教室の前方の扉をガラガラと開けて入ってきた。
私は急いで椅子から起立して、そして、椅子を机の下にしまい、まっすぐと彼の方を向いた。
「そ、そのさ、話ってなんのことなの?」
どくどくと弾む鼓動が世界を揺らす。
私は、緊張でガチガチになった体をギコギコとぎこちなく彼に向ける。
「・・・ちょっと、そっち行くわ、」
そういって、彼が近づいてくる。
彼も、かなり緊張しているみたいだ。
彼がこちらへ歩いてくる。
私は、彼のその足の動きに着目した。
そして、私の目の前に立つ。
「・・・あのさ、」
「・・・はい!!」
彼の瞳に、私の姿が映る。
キュッと唇を横に結び、目をパッチリと開けて、まっすぐと彼の瞳を見ている。
彼が、ポケットの中から何かを取り出した。
私は一瞬、怖くなってしまい、目を閉じた。
「ずっと好きでした。俺と、付き合ってください!!」
私は目を開けた。
「よろこ、・・・」
そこに、私の姿はもうなかった。
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