表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再婚したての、キャリアウーマンを寝取る  作者: 猫野 にくきゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/10

第1話 俺がバスケ部を追放された時の顛末

「お前はクビだ。……このバスケ部から追放する」


 顧問の声が、体育館の静けさに響いた。

 俺は一瞬、思考停止した。


「クビ? 部活で『クビ』なんて、初めて聞きましたよ」


 放課後、部活動のために体育館へ入ると、いきなり顧問に呼び出されたのだ。

 フロアの中央、部員たちの視線が集まる中、俺は「クビ」を宣告された。


「──意外と、冷静だな、……お前」


 顧問が訝しげに目を細めた。


「冷静なわけないでしょう。正直、意味が分かりません。……『クビ』というのは、どういうことですか?」



 重ねて尋ねる俺に、顧問は感情の読めない顔で言い放った。


「そのままの意味だ。お前はもう放課後、体育館に来なくていい。来られても迷惑なんだ」


「……はあ、そうですか」



 教師のくせに、えげつないことを平気で言う。

 ろくでもない顧問だ。


 俺の内心は、怒りよりも呆れが勝っていた。


「そうだ。お前は、この部にとって邪魔なんだ。だから、このバスケ部から追放することにした。──これは部員みんなの総意であり、覆ることのない決定事項だ」


 ええっ!?


 顧問だけじゃない。

 部員みんなも、俺を邪魔だと思っていたのか……。


 彼らの無言の視線が、それを物語っているようだった。

 そこまで言われたら、受け入れるしかないだろう。



「分かりました。俺はこのバスケ部を、出て行きます。──部活を追い出されることって、あるんですね……」


 俺がそう呟くと、顧問は肩をすくめて「まあ、結構あるんじゃないか?」と返した。


「やる気のない奴にいつまでも居座られたら、全体の士気が下がるからな……」



 俺はやる気がなかったわけじゃない。

 だが、周りからはそう見られていたらしい。


 時間にルーズで朝練によく遅刻したし、体力がないから試合でバテないようにペース配分をしていた。


 確かに、周りからは「やる気がない」と見えていたのかもしれない。



 俺をクビにする理由は分かった。


 だが、バスケ部は俺を追放しても大丈夫なのだろうか?


 俺のポジションはシューティングガードで、試合でのスリーポイント成功率は4割を超える。


 自分で言うのもなんだが、かなり良い数字だ。

 シューターとして近隣の対戦相手の間でも有名で、厳しいマークの中でも結果を出してきた。



 俺がいなくなると、かなり困ると思うのだが……。

 どうなのだろう――?



 顧問は「部員みんなの総意」だと言っていたが――

 本当なのだろうか?


 俺は振り返り、周囲を見渡した。


 彼らは目を合わせようとしない。

 思い切って訪ねてみた。



「皆も、俺を追い出すことに賛成なのか──どうなんだ?」


 すると、散々な答えが返ってきた。

 それも口々に、遠慮なく。


「どうって、そりゃあ、早くいなくなってほしいって、……それだけだよ」


「だよなぁ、お前はしょっちゅう練習をサボってるし、根性がないんだよ」


「それに、シュートも結構、外すよなぁ……スリーポイントしか打たないし、それだって、二本に一本は落としてるじゃないか──」


「外しすぎなんだよ。お前が試合でシュート外すたびに、皆、『あー』ってなって、気が滅入るんだよね」


「チームプレーができてないんだよ。みんなでパスを回して繋いでいるのに、勝手にシュート打ちやがって、……それでもさ、まだ、入れば良いよ? けどさ、お前は半分は外すじゃん? 下手糞なのに、なんで打つんだよ? 訳分かんねー」



 世論調査の結果は、散々だった。


 チームメイトたちから、かなり辛辣な意見が寄せられる。

 これだけ皆に不満が溜まっていれば、顧問が俺を追放するのも無理はない。


 俺に不満をぶつけてきたのは同学年の部員たちだけだったが、一年生たちも不満げな表情を浮かべている。


 中には睨みつけてくる者もいて、直接口に出して非難はしないものの、憎しみの感情を抱いているのは見て取れた。


 皆が俺を目の敵にしているのは確かなようだ。



 一年生と言えば、マネージャーはどう思っているだろうか?

 マネージャーは試合のスコアを付けている。


 選手よりも客観的にゲームの流れや戦況を見て分析しているはずだ。

 この部にとって俺が不要な存在なのか、彼女なら冷静な視点で判断できるのではないか。



 そう思い、俺は問いかけてみた。


「水谷は、どう思う? ──やはり俺は、必要なかったか?」


 バスケ部の女子マネージャー、水谷真美みずたに まみは、一歩後ろに下がり、嫌悪感を露わにしながら辛辣な返答を返してきた。


「あの、話しかけないで貰えませんか……キモいです」


 選手として必要かどうかを聞いたのに、返ってきたのはただの悪口だった。


 批判は覚悟していたが、これはさすがに凹んだ。

 心に鉛が落ちたような気分だ。



 しかし、これが現実なんだ。

 受け入れるしかない。


「分かりました、監督……俺は『クビ』を受け入れます」


 顧問は満足げに頷いた。


「ああ、それなんだがな。……八上、お前……『クビを受け入れる』じゃなくて、自分から、『バスケ部を退部する』と言ってくれんか──? いやなに、強制的に辞めさせたとなると、後で問題になるかもしれんだろ? そうならんように、自分から、お前の意志で出て行ってほしいんだ。……分かるな?」


「……はい、俺はこのバスケ部を辞めます。──退部させてください」


「よし、それでいい……じゃあ、もう帰っていいぞ」



「──分かりました」


 俺はそう言って体育館を出て、家に帰った。


 引き留める者は、誰もいない……。

 俺の背中には、冷たい視線だけが刺さっていた。


 これが、この俺、八上義人やがみ よしとが――

 バスケ部を辞めた時の顛末だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ