傾く部屋と舞うランタン
自分のやりたい事を掴むために活動始めました。
2作目、自分の創作パターンをどう構築するか考えるために書いて、なろうアップしてます
「じゃあみんな、今日はこの辺で……おつかれさまでしたー!」
俺がいつものように締めくくろうとした、その瞬間だった。
**ズドォォォン!!**
「うわっ!?」
スマホが弾け飛び、俺の体が宙に浮いた。冗談じゃない、本当に浮いたんだ。
次の瞬間、世界が斜め45度に傾いた。
バリバリバリ! メリメリメリ!
鉄筋コンクリートが悲鳴を上げ、本棚が床を滑り落ちていく。窓の外を見ると、隣のビルの屋上が目の前にあった。
嘘だろ……? 俺の住んでるマンション、今、倒壊寸前じゃねえか!!
「逃げ……逃げなきゃ! 扉! 扉どこだ!?」
傾いた床を這いつくばりながら、必死で玄関を目指す。死ぬ。マジで死ぬ。あと数分、いや数秒でこの建物は崩れ落ちる。心臓が早鐘を打ち、脂汗が目に入る。
その時だった。床に転がったスマホから、軽快で神々しいファンファーレが鳴り響いた。
**『ピロリロリローン♪』**
画面が黄金色に輝いている。俺は思わず二度見した。
**【通知】石油王さんが『天空のランタン(30万ポイント)』で応援しました!**
**コメント:『あと少しでランキング1位だ! 一番になるためがんばれ! ここで終わるな!』**
「……は?」
俺は傾いた床にしがみつきながら叫んだ。
「いや終わるわ!! 人生がな!!!」
ふざけんな! 今まさに物理的に「終わろう」としてるんだよ!
しかも画面を見ると、そのランタンのおかげで配信内イベントのランキングが急上昇している。
**現在の順位:2位(1位まであと500ポイント!)**
コメント欄が爆速で流れる。
『うおおおおおお! 石油王ナイス!!』
『いける! いけるぞ!』
『諦めるな! 登り詰めろ!』
『主、なんでカメラ斜めなの? 演出? 天才?』
「演出じゃねえよ! 建物の構造的な限界だよ!!」
俺は叫び返すが、マイクはスマホのマイクだ。遠すぎて届かない。
さらに追い打ちをかけるように、またファンファーレが鳴る。
**『ピロリロリローン♪』**
**【通知】借金して投げ銭マンさんが『黄金のダイヤ(5万ポイント)』で応援しました!**
**コメント:『俺も家賃つっこんだぞ! お前も命燃やせ!!』**
「燃やすな!! 物理的に埋まるんだよ俺は!!」
なんでだよ! なんで今なんだよ!
俺は、斜めになった床を必死に這い上がりながら、スマホに向かって絶叫した。
「みんな! ありがとう! 本当にありがとう! でも今、マンションがピサの斜塔より斜めなんだ! 俺は1位になりたいけど、それ以上に生きていたい!!」
しかし、俺の悲痛な叫びは届かない。なぜなら、傾いた衝撃でミュートボタンが押されていたからだ。
画面の中の俺(フリーズした映像)は、満面の笑みでサムズアップしている。
その笑顔の横に、無慈悲なシステムメッセージが表示された。
**『祝! イベントランキング 1位獲得!!』**
画面上が紙吹雪のエフェクトで埋め尽くされる。
『おめでとう!』『伝説の夜だ!』『感動をありがとう!』
現実では、天井の照明が引きちぎれて俺の頭をかすめた。
「感動とかいいから消防車呼んでええええええ!!!」
俺は1位の称号と35万ポイントの投げ銭を画面に残したまま、傾斜角60度になった廊下を滑り台のように滑り落ちていった。
**——数時間後、ニュースにて——**
『倒壊したマンションから奇跡的に救出された男性。救助隊によると、男性はスマホを握りしめ、「俺は1位だ……俺は1位なんだ……」と謎の言葉を繰り返していたとのことです』
俺の配信アーカイブには、傾いていく部屋の中で大量のスパチャが飛び交う、伝説のラスト5分間が永遠に残ることになった。
最後まで読んでいただいて感謝です。




