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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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9/21

僕、けっこう満足してます

 前世も今世もひっくるめて自分で良いのだと、自分は和田日向であり、そして、カル父さんとサフィー母さんの息子のアッシュであると認めることが出来てからは、僕の目に映る光景は今までよりも一層色鮮やかになった。


 家族の顔をイケメンだ美人だなんて考えず真っ直ぐ見れるようになったし、今いる世界を前世と比較するようなことも少なくなった。


 いやまあ、生活水準なんかは比べてしまうけど、実はあんまり不満もなかったりするんだ。無いわけではないけどね。


 パッと思いつく比べられるところと言えば、衛生面や娯楽、食事と言ったところかな?


 まずはトイレ。

 トイレは上下水道の話になるしそんな大規模な工事はとても出来ない。

 だがこんな時の為に僕は【浄化】スキルを選んだんだ。まだ使えないけれど。必ず身につけて見せる!

 そしたら村中のトイレを定期的に綺麗にして衛生面の改善を図るんだ!


 肥料とかに使われていたらどうしようもないんだけど……。



 次にお風呂。

 お風呂だけは要改善を要求したい!


 実はアッシュになってからはお風呂に入ったことすらなく、濡らしたタオルで拭いたり、水浴びだったりで、家に浴槽すらない。


 だが実はこの問題、【魔法の才】でどうにか出来るかもしれない。


 と言うのも、魔法ってかなり自由度の高いものみたいなんだ。


 僕はサフィー母さんがアルビノでは無いかと常々思っていた。そんなある日、日差しが強い日に両親が二人で外に出たことがあったのだが、カル父さんは日焼けしていたのに、サフィー母さんの肌は真っ白であからさまに何か対処しているようだったから、直接聞いてみたんだ。

 なんとサフィー母さんは回復魔法を常に自分にかけ続けているそうだ。

 日に当たるとすぐに肌が赤くなって荒れてしまうし痛い、ならずっと回復し続ければ良いじゃない! と力技で解決を図り、それを訓練と才能で成したそうだ。


 そんな話を聞いていたら、カル父さんが「その使い方は普通ではないし、そんな魔法もないんだけど、お母さんは自分で新しい魔法を作り出してしまったんだよ」と呆れながら教えてくれた。

 そんな父さんに「魔法をつくるとかそんな難しい話ではなくって、そういう風に使ってるだけなんだけどね」とサフィー母さんが苦笑混じりに返していた。


 二人の言葉を少し深読みしてみると、カル父さんの魔法の知識は体系だったもので、サフィー母さんは魔法を開発というより魔法を自らの意思でもって制御しているように考えられる。


 サフィー母さんの言うように魔法を使えるのなら、今の魔法の知識は魔法の可能性を潰しているとしか思えない。

 この問題に一石を投じようとは思わないけど、この知識を家族で共有ぐらいはしても良いと思う。

 そのためにも、なにより自分のためにも自由な魔法を僕は手に入れたい。


 っと、話が長くなったけど、その自由な魔法でもって浴槽をつくり、水を張り、温めて湯にして浸かりたいってことなんだ!



 次は娯楽文化かな?

 こっちもあんまり発達してないね。というかそんな余裕がないのかな?

 転生前の説明では、魔物と人類が生存圏を争ってるとか書いてあったし。

 実際、村周辺の魔物の間引きなどは定期的に行われているし。


 強いて言うならゴシップ、殴り合いの喧嘩、この村なら時々くる行商人などが娯楽と言えるのかもしれない。


 前世で読んだライトノベルの主人公がリバーシなどを広めていた理由が良くわかった。

 シンプルなゲームは浸透しやすい。

 魔物と生存競争しているこの世界なら自然なんてありふれているはず、そんな中で木材で作れるなら量産も難しくない。

 そうして娯楽の種を蒔いて、新たな娯楽が生まれるのを待つ。


 文化を発展させる最良の一手なのかもしれない。


 まあ今の僕には娯楽を生み出す余裕なんてないんだけどね。

 良く考えなくても娯楽の優先順位は相当低い。

 魔物が敵なのは明確なのだから強くなること、そしてそんな敵が当たり前に跋扈しているからこそ安定して稼げる職に就くことが大事なのは考える必要すらない。


 結論、娯楽は後回し。僕に余裕が出来たら手を出してみようかな? ってぐらいだ。


 

 最後に食事!

 食事はかなり美味しいんだよね。新鮮な野菜や、近くの川から獲れた新鮮な魚、パンは基本は保存用の硬いパンだけど、三日に一回は出来立ての柔らかいパンが食卓に並ぶ。

 お肉に関しては食べられる魔物が存在しており、そういった魔物を討伐し、捌いて村全体で干し肉をつくったり、十分な量が確保できれば新鮮なお肉を頂ける。


 カル父さんは高位冒険者だったこともあり、村の周辺の魔物の間引きの際に頼りにされている。その際に食べられるお肉が獲れれば優先的に貰えるようで、我が家ではお肉は毎日出る物ではないが珍しくもない。


 まあ、僕がお肉を食べられるようになったのは歯が生え揃ったごく最近なんだけども。


 そんな訳で、食文化に関しては文句なんてありはしない。


 サフィー母さんのつくる料理はとても美味しいしね。

 最近はエレア姉さんも積極的に手伝っており、美味しさもひとしおだ!



 色々言いはしたが、やっぱりほとんど不満はない。

 僕がアッシュとしての自分を受け入れたことも影響しているとは思うけど、今はこの不便ですら楽しいと思えるんだ。


 僕の世界は広がった。色鮮やかになった。そしてそんな世界を僕は自分の足で歩いてる。日向としてもアッシュとしても、僕はこの世界を楽しんでいけると確信してる。


 まあ、未だ三歳の僕に出来ることなんてたかが知れてるんだけどさ?


 今の僕に出来るのは、カル父さんの畑いじりを見学したり、サフィー母さんの家事の手伝いをするぐらいだ。

 そんなことですら今の僕には楽しいと思える。

 邪魔になってるだけかもしれないけど、二人は嫌な顔一つしないで僕を気にかけてくれて、時に一緒に作業をする。

 そうして流れる緩やかな時間がとても心地良い。


 僕がまったりスローライフを送っている頃、エレアお姉ちゃんは村の広場の方で開かれている勉強会に通っているらしく、帰ってくるなりそこで得た知識を僕に教えてくれる。

 お姉ちゃんが開いてくれる突発的授業は僕にとっても初めての話がたくさんで、楽しみながら聞いている。



 こうして僕は少しづつ少しづつ、成長していくのだろう。


 成長して大きくなったら、家族のみんなにたくさんの恩を返そう。

 前世で出来なかった親孝行をたっぷりしてやるんだ。

 そのためにもっと色んなことを知って、もっと大きくなって、もっと強くならないとっ。


 強く強くそう思い願った。



 その翌日、僕の体はぽっかぽかに熱くなっていた。

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