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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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僕、観戦してみた


 楽しく美味しい昼食を取った後は訓練再開。

 内容はフェーグさんとゼフィア先生相手の模擬戦

 好きに挑めと言われたらから、いの一番に挑戦したら断られた。

 ……そんなことある? あったんだよなあ。



 おそらく、カル父さんとサフィー母さんから何かしら情報を得たんだろう。僕とエレアお姉ちゃんは順番を最後に回された。


 こうなったらとことん見て学ぶしかない。

 他の子ども達の戦闘方法や、先生方の対処法と体の使い方。

 魔力視で魔力の使い方なんかも見てみれば新たな知見を得られるかもしれないしね。


 僕とエレアお姉ちゃんは少し離れたところで一緒に戦いを見ることにした。


 そしてついに始まる模擬戦。

 フェーグさんへの最初の挑戦者はコルハだ。

 身内だから何度も戦っているんだろう、だからこそ互いに容赦はないはず。


 コルハとは手合わせは少ししたけどその後は魔力訓練だったし、なんだかんだで僕らが全力でぶつかる事は無かったので彼の本気を見れる良い機会だ。


 二人ともが肉厚で幅広な刃を潰した剣を手に持ち、十メートル程の距離を開けて構えている。


 十メートルなんて身体強化した状態なら数歩で飛び越えて仕舞える距離だ、その間合いで一体どう口火を切るのか。


 全員が固唾を呑んで見守る中、コルハが飛び出す。それも大きな剣を横に一周させる様に振り回しながらだ。


 初っ端から全力。今出せる最大の攻撃。遠心力を出来る限り載せた横薙ぎの一閃を恐ろしい程の速さで叩き込————まれる事は無かった。


 フェーグさんはしっかりと間合いを読んで一歩下がって当たらないスレスレで避ける。

 勢い任せの一撃を避けられたコルハの重心は当然ぶれて態勢を崩す。


 フェーグさんはそこを狙って蹴りを繰り出すが、コルハは無理やり上に跳んでそれを避ける。


 空中でもコルハは止まらず、剣に振り回された勢いを利用してさらに一回転しながら一旦距離を離す。

 フェーグさんはそれをただ見ていた。


 模擬戦とは言え、まずは攻撃させてそれを受ける側に回ってくれる様だ。


 フェーグさんはコルハに対して指をくいくい曲げながらもっと来いと煽っている。

 普段のコルハなら怒りマークを額に浮かべながら突っ込むはずだが、今回は目を逸らさずに隙を窺っている。


 大胆な攻め、不利な態勢のまま反撃を躱わす体幹の強さ、してやられながらも冷静さを失わない……お前ほんとに六歳かよ?


 その後も剣を振り回して、振り回されながらも攻撃を避けるトリッキー過ぎる戦闘方法に驚き、それを全て苦もなく対処するフェーグさんの身のこなしも凄まじく、見ていて飽きないものだった。


 フェーグさんがある程度受けに回った後は、攻守交代したかの様に攻めに転じる。小回りの効かない武器を手に持つが故に、剣での攻撃を囮としたパンチを避けきれず、仰け反ったところを軽く蹴られて倒される。


 起き上がって距離を取るのを待ってから再度仕切り直し、コルハが詠唱しだす。

 魔力の動きと詠唱から、僕と手合わせした時の身体強化の魔法だろう。


 それを見てとったフェーグさんは片手で剣を大きく上に上げる。

 するとコルハの詠唱が止まった。と言うか額を抑えている? 何? 何したんだ? 何されたんだ!?


 そうだ、フェーグさんの剣を持っていない方の手はどうなっている!

 ……小石? あの小石って、訓練開始前に飛んできたやつか!? あれを指で弾いて詠唱妨害したの? 立ち止まって魔法を使えばあれで邪魔されるってこと?


 小石一つで魔法を潰すって……でもあの時とは小石の速さが違う。速すぎる。

 さらには剣に意識を逸らされた。俯瞰視点でも視線が上に行ってしまった。


 高く掲げられた剣とは反対に下がったままの手の先から弾き出される小石による、意識外からの衝撃で魔法の構築を潰される。


 遠距離で戦う事が許されない。

 近距離で相手をしながら魔法を発動させないとまともに戦えないぞ、これ。


「コルハ! 得物を変えてみろ。お前の筋力じゃその武器は合ってねえ。身軽なお前の良いところが死んでんだよ。もっと好きに動けるような武器を見つけろ」

「くっそおああ!」


 一人目の相手はもの数分で終わった。

 数分の模擬戦なのに、コルハの消耗が激しい。汗が噴き出てるし、息を切らしている。


 重い武器と、戦うと言う状況。そして本気だからこそ消耗している。

 そう、本気だったんだ。本気でやってあしらわれた。


 なんでか分からないけど、鳥肌が立つ。心拍数が上がる。少し怖い、ドキドキする。僕はあんな風に戦えるだろうか……。



 コルハの戦いを見ていた子どもの中には、高揚している者や少し怖がっている者、感じることは様々あれど、皆んな揃って気圧されたのだろう。


 隣のエレアお姉ちゃんはどう感じているのだろうか。チラリと視線を向けてみる。


「水でアッシュがつくれない……」


 一生懸命に生み出した水の形を人型に変える事に執心していた。


「さすが……僕のお姉ちゃんだねっ」

「えっ? 全然つくれてないよ?」

「人は難しいから、先ずは物から始めた方が良いよ!」

「むぅ。わかった……」


 はあ。これだよこれ。この感覚。いつも通りだ。

 これで良いんだ。意気込むだけ肩に力が入ってしまう。リラックスが大事なんだ。

 あーーあ!! もう! 敵わない!


 気楽にテレビ感覚で見てよっと!



 そこから先はおずおずと手を挙げる者が現れて、ゼフィア先生とフェーグさんが少し距離を空けて同時に模擬戦を開始していく。


 コルハとの模擬戦は少しばかり厳し目だったようで、他の人達相手では戦いながらダメ出しをしたり、軽く小突いたりと言った指導が入っていた。


 逆に言えばコルハにはそれだけ期待も掛けているのだろう。そう言うレベルにあると言う事だ。


 ……僕とエレアお姉ちゃんは一体どんな模擬戦をする事になるのか少し不安だな。




 一度負けても何度でも挑んで良いらしく、何度も挑んではダメ出しされてを繰り返す子もいた。

 二人ともそれを是として叩きのめしていた。


 でも二人の叩きのめし方がかなり違うのだ。

 フェーグさんは隙を指摘して、軽く痛みを与える。動きや立ち回りを教えているのに対して、ゼフィア先生。


 あの人はおかしい。あらゆる武器を使い分けるんだ。

 相手と同じ種類、同じ長さの得物で、武器の扱い方や間合いの取り方、攻撃の捌き方を戦いながら見せて教えてくれる。


 ゼフィア先生の本当に得意とする武器がなんなのかすら分からない。

 魔法も火、水、土、風の四つを使い分けている。つけ入る隙がない。死角が無い。


 でもだからこそ学びに繋がっている。自分よりも上の技術を体験出来るんだ。これ以上無い手解きだろう。


 故に、僕が戦うべきはフェーグさんだ。

 立ち回りを知る必要がある。それが分かれば戦い方も変わってくる。

 僕の長所は憶えること。つまり初見の僕の知らない相手には弱い。

 敵をいなす為の技術を学ぶならフェーグさんだ。




 みんなが疲労困憊で座り込んだ所で、ついに僕らの番が回ってきた。


「お姉ちゃん。フェーグさんとゼフィア先生とどっちが良い?」

「私はゼフィア先生かな。動きが読みにくいし、対応力が高いのはゼフィア先生のスタイルだと思うから」

「丁度良かった。僕はフェーグさんに相手してもらいたかったんだ」

「うーー! でもアッシュの模擬戦見たーい!」


 その気持ちはわかる。僕もエレアお姉ちゃんの戦いを見たい。でも同時にやって時間削減してたしなあ。


「ガキどもー! こっからはちょっくら広く場所使うかもしんねえから、ちぃっとばかし下がってな! それと、よーく見とけ。お前らの見本にはならねえだろうが、戦いの質がちょっと上がるだろうからな」

「アッシュとエレアには、順番に戦ってもらう。二人の戦いを同時に観るのは辛いだろうからな。二人もそれで良いだろうか?」

「ぅやったー! それで良いです!」

「僕もそれで大丈夫です……!」


 僕らの戦いを見せる方が主目的だなこれ。

 少し先のレベルを間近で感じさせたい、とかなのかなぁ。


 とりあえず、いつもの木剣に近い形と重さの武器を選ぶ。

 軽く振って感覚を確かめてみるが、やっぱり重い。武器の重心は問題ないが、金属の重みに、少し緊張する。


 これは人を容易に傷つけてしまうものだと言う感覚が、手を鈍らせてしまいそうだ。

 前世の感覚で言うなら、刃物を人に向ける忌避感に近い。


 これはちょーっとまずい。

 剣を手に持ったまま、深呼吸を繰り返す。

 大地や自然を感じて、存在を紛らせる前の、命を感じる状態に身体を持っていく。


 ……落ち着いた。この状態にスッと入る訓練もした方が良いな。


 エレアお姉ちゃんも深呼吸しながら剣を振って感覚を直していたようだが、それも済んだようだ。


「どっちから行く?」

「うーん。私が後でも良い? 私ね、アッシュの戦いを見て学びたい。多分、戦った後だと私、反省とか振り返りに集中しちゃいそうだから」

「そう言う事なら先にやるね」

「がんばっ……うぅん、見てるね」


 がんばる僕に応援は要らないと思って見てるって言ってくれたんだろうな。

 真面目に戦わないけど、それでも良いかな?


 いや、それで良いのか。僕の戦いを見たいんだもんな。


 僕はお馬鹿頭で悪戯小僧だからさ。狡賢くいくよ。

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