僕、今日はあんまり悪く無い
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「ウィンドウさん」です。お間違え無きよう
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「ふおおおおおおお!!! 文字が変わられたぞおおおお!!!」
村長さんが昨日に引き続き壊れてしまった。
でも仕方ないか。不壊の神像の台座に文字が刻まれた上に、自分の言に反応して文字が追加されたのだから。村長でありながら教会兼神殿を運営している神職でもある村長さんのリアクションが限界突破してしまうのもやむなし。
だが、その反応を見た僕ら一家からはドン引きした空気が漂っている。
「村長さんってこんな人だったかしら……?」
「いや、多分何かすごいことが起きたんだろうね。落ち着いたら話を聞いてみようか」
「アッシュ! 危ない人には近づいちゃだめだよ! お姉ちゃんが守るからねっ」
三人がこそこそと話している間も「ふおお」「ふおお」と騒がしい村長さんが現実に戻ってくるにはまだ時間がかかりそうだ……。
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「見苦しいところを見せてしまったね……。まさか文字が刻まれるどころか、私の言葉に反応が返ってくるとは思わず……」
「今は台座に何も刻まれていませんが……これはアッシュがつくった神像の神様による御業と言う事でしょうか?」
「台座から文字が消えとるじゃとおおおお!?!?」
カル父さんの言葉で文字が消えていることに気付いた村長さんのテンションがまたも振り切れてしまいそうなになっている。
村長さんの血管が切れてしまわないか心配になるんだけど……。
「とりあえず、落ち着こうよ村長さん。話が一向に進まないよ……」
「ほおお!! おおっ、すまぬすまぬ、これでも神に仕える者の端くれ、神託のスキルや加護を持たぬ身でありながら神と交信が取れる奇蹟を噛み締めておったのじゃ……」
肩で息をしながらもようやく落ち着いて椅子に腰かけた村長さん。
僕ら一家もようやく真面に会話が出来そうな気配に改めて身を引き締める。
「ふぅ、今回お主らをここに呼んだのは、この神像のことをアッシュに聞きたかったのと、アッシュが昨日出会った霊獣についての話。そしてアッシュの今後の話をしたかったからじゃ」
「「……はい??」」
「アッシュすごいね、霊獣に出会ったんだ! 流石私のアッシュだよー!」
カル父さんとサフィー母さんが唖然としているのに、エレアお姉ちゃんと来たら……流石僕の自慢のお姉ちゃんだよ。
そこからは僕が昨日あったことを包み隠さず、順を追って語って聞かせた。
僕がつくった像が神像に認められて、大樹の下で霊獣と出会って、フェーグさんに二日後から鍛えてもらう……話し終わった頃にはカル父さんはどこか不安そうな顔で、サフィー母さんはとても真剣な顔をしていた。エレアお姉ちゃんは鍛えてもらう話のところでムッとしていた。
「私も鍛えてもらいたい。アッシュを守るのが私の…お姉ちゃんの役目だから」
「それは僕からフェーグさんにお願いしに行くよ。元は僕の我が儘だからね」
「それはダメ! これは私の我が儘なんだよ。アッシュじゃなくて私がお願いしないといけないことだよ」
「……わかった。じゃあこの話し合いが終わったら一緒にフェーグさんのところに行こう!」
「うんっ!」
僕らが鍛錬のことで話題に花を咲かせている間、大人たちは酷く真剣な顔で話し合いを始めていた。
「私たちの知らない神をどうやってアッシュが知ったのか、その神に加護を頂いているアッシュを教会としてどう扱うのか、そこのところを聞かせてくださいますか村長さん」
「僕としては、霊獣と出会ったことがどうアッシュに関わってくるのか、そこが知りたいです」
「そうじゃな、神に関することは少なくとも私は触れないでおこうと思うとるよ。アッシュがどうやって斯の神を知ったのかは聞いておらん、そして教会としてアッシュに接触するつもりは無いとも断言しておこうかのう。教会上層部にも情報を上げるつもりは無い」
村長さんは村長として僕を見守ると決めたのだろう。その心遣いにいつか必ず報いたいと思う。
でもそうか、ウィンドウさんが服わぬ神という可能性もあるのか…仮にそうだったら僕はどうするべきなんだろう……。
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私は私の意思で地上を去った神です
あなた方が私を知らないのも無理ありません
ですが、アッシュ? 私は服わぬ神であると言う
その想像だけは辞めて頂きたいです
私は六柱の神の下につく下級の神なのですから
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「ふおおおおおおお!!!」
「「ッッッ!?!?」」
「カキュウの神?」
「…………」
僕が悪かったから、思考読んでそっちに書くの辞めてくんない?
まあとりあえず、ウィンドウさんが悪い神じゃなくて良かったよ。
「ウィンドウさん神よ! 不敬をお許しくださいませ! ですがこれもアッシュを守るためなのです! どうか! どうか平にご容赦をぉぉ!」
村長さんの過剰なまでの謝罪につられてか、両親まで神像に平伏してしまった。
エレアお姉ちゃんも一緒に平伏そうとしていたので、手を引っ張って僕と一緒に立っていてもらう。
おそらくウィンドウさんは軽いノリで喋るタイプ。平伏されるのとかあんまり好きじゃなさそうなんだよね。
すぐに文字が刻み直される。
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平伏されるほどの神ではありません
あなた方に怒りも覚えていません
顔をあげなさい
アッシュは疑ってごめんなさいして下さい
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ほらね? めちゃくちゃ適当な文面で謝罪要求してきたよ。謝ってはおくけどさ?
「ウィンドウさんの事、疑ってごめんなさい」
そう言って神像に向かって軽く頭を下げておく。
内心は割としっかり反省している。濡れ衣を着せたようなものだからね。
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許してあげます
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謝意が伝わっていたようで良かった。
「アッシュ? そんな気軽な感じで良いのかい? もしかして普段から喋っていたりするのかな??」
「お母さんちょっと疲れてきちゃったかも……」
「ふぉぉぉぉぉ……」
「アッシュってば、神様と仲良しなんだね! すごいねっ!」
僕の思っていたのとは違う形で両親を疲れさせてしまったようだ。ちなみに村長は口から魂が漏れているような顔をしている。
流石にこのまま話を続けても頭に入ってこないと言う事でいったん休憩を設けることになった。
だいたい悪いのはウィンドウさんだからね。僕はそんなに悪くないんだからね。軽いノリで神様が言葉刻むからこんな事になってるんだからねっ!




