僕、サンドバッグだった
ステータス画面の様な物が出てきて流石の僕も困惑から戻って来れない。
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ギフト
・記憶・浄化・魔法の才
スキル
・火魔法・水魔法・土魔法・風魔法・光魔法
・闇魔法・無魔法・剣術・体術・存在霧散
・生命探知・魔力圧縮・身体強化・身体超強化
・土壌活性・神像制作・プラネタリウムetc......
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何度か目を擦ってみても、菱形が消えることはなく、また僕の知らない項目に疑問しかない。
スキルではないのか、ギフトとはなんなのか、この一覧は僕が出来るようになった事なのか、ウィンドウさんが認めるだけのレベルに達した技術なのか……。
僕の中での世界の在り方が変わってしまいそうなものをポンと出さないで頂きたい。
「アッシュ? あびりてぃー? なんとかと言うのはなんなんだ?」
「お前には何が見えてる? なんか見てるよな? 今のは詠唱か?」
「あっえっとぉ。今のはなんと言えばいいのか……」
僕にも説明出来ないのに勢いでやってしまったのは大失敗だ。
だがこんな時だからこそ落ちつこう、深呼吸して、世界に少しだけ体を溶かしてリラックス……ふぅ。
改めて詠唱から考えよう。アビリティとは能力の事を指し、サーマライズとは確かまとめるとか要約すると言う意味だっただろうか?
とにかく文字通りに読むなら能力一覧になるのだろう。
……僕が鍛えた或いは習得した技術を分かりやすく提示してくれている様だが……もしかするとスキル鑑定の儀って——
「——お主今なんと言うた。アビリティサーマライズと言うたか。なぜサーマライズを知っておる。アビリティとはなんじゃ。答えてくれ、アッシュよ」
……あぁそうなんだ。
もしかするとスキル鑑定の儀で詠唱されるのはスキルサーマライズとかなのかな?
僕のが違うのはウィンドウさんに聞かないと分からないけど、スキル鑑定の儀そのものをウィンドウさんが行なっている可能性が出てきてしまった。
それなら尚更、ウィンドウさんが神として祀られていない事が理解出来ない。
一体どうなってるんだろうね……。
「……ようやく少し頭が回ってきた。まず順を追って説明させて下さい」
それから僕は、とある神様の像をつくり、それが認められ、加護を与えられたこと、後に霊獣と接触し、先程加護を与えてくれた神様の指示に従い詠唱したこと、そして自らが得たのであろうスキルを確認出来る事を説明した。
それを聞いた三人はまたも頭を抱えて、さっきまで立派だった村長は今にも意識が空へと飛び立たんばかりに脱力して椅子にもたれている。
今にして思えば、ウィンドウさんの加護を与えられたから霊獣が寄ってきた可能性も大いにあり得る話だ。
◇それは違います。霊獣はあの場所で休息を取る必要があっただけです◇
はい、出た〜〜もう勘弁してくれ〜情報って人を殴れるんだよ? 知ってる? ウィンドウさん? スキルとギフトの違いも聞いてないしさあ……。
◇転生前、和田日向が言っていた先天性スキルと後天性スキルを振り分けた結果、先天性スキルをギフトと表記することにしました。貴重な意見をありがとうございました◇
…………僕は今、村長と同じ態勢で同じ顔をしている。
色々言いたいことはあるが、今は感情も情報も僕の容量を圧倒的に超えてしまった。もう全てのことから耳を閉ざして無かった事にして元の生活に戻りたい。
平穏って素晴らしいんだ。何気ない日々って貴重なんだ。
エレアお姉ちゃんに慰められたい……よしよしされて眠りたい……。
教会の一室は沈黙とため息に支配されたまま、少しの間、誰一人として一言も発することはなかった。
なんとか溢れた情報を噛み砕いた僕は、約束破って申し訳ないけど霊獣の情報は出さないことにして、今はウィンドウさん関連の話を進めていくことにした。
「村長……良いですか?」
「なんじゃ、アッシュ……」
「アビリティサーマライズってスキル鑑定の儀でも使ってますか……?」
「使うとるよ……じゃが、正確にはターゲット・スキル・サーマライズじゃ。アッシュの言うギフトの欄はないのう……さらに言えば、これは神に認められた者にしか行えぬ筈のものだったんじゃがな……」
僕と村長は態勢を変えず、天井を見ながら話している。
話している内容は世界が一変してしまいそうな内容だが、最早この場に僕らに突っ込んでくる人などいないのだ。
だから僕らはこれ以上ないほど気を抜いて会話を続ける。
「僕は以前、スキルには生まれ持つものと、努力で得るものが有るのでは無いかと考えたことがあったんです。どうやらそれを参考にもう一度スキルを振り分けたそうなのですが、生まれ持ったスキルをギフトと言うことにした様です」
「なるほどのぅ……努力しても得られぬスキルがある事は分かっておったがギフトだったのじゃな……そしてギフトとスキルを判別するための詠唱がアビリティということかのぅ……」
「おそらくは……ついでに聞くんですけど、スキルを読み取った時に菱形の模様が見えたことは有りませんか……」
「あるのぅ……いっつも出とるよ……」
「……それ、村で崇めてるどの神とも違う神ですよ……」
「そうかぁ……アッシュのつくった神像を明日、見せにきておくれ……」
「……そうですね。分かりました……」
僕らが今必要な情報は全て交換し終えた。
来月のスキル鑑定の儀は、アビリティ鑑定の儀になっているかもしれないな……。
◇それは有り得ません。アビリティを見る事が出来るのは私の加護を持つアッシュだけです。また、他者のアビリティを見ることは出来ません。◇
……情報のサンドバックになった気分だ。
このことも村長に伝えると、村長は何故か少し喜んでいた。自分に関わりがないと思って安心しているのかもしれない。
僕は改めて僕の持つスキルを見てみる。
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ギフト
・記憶・浄化・魔法の才
スキル
・火魔法・水魔法・土魔法・風魔法・光魔法
・闇魔法・無魔法・剣術・体術・存在霧散
・生命探知・魔力圧縮・身体強化・身体超強化
・土壌活性・神像制作・プラネタリウムetc......
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言いたいことが色々あったんだよね……土壌活性ってなんだよとか、存在霧散ってなんだよとか……
一番言いたいのは……プラネタリウムだ。やめろよ恥ずかしいだろう……。
光魔法の使い方次第なんだから光魔法の範疇に入れておけば良いだろうに、文字に起こす必要ある?
そう言えば、氷をつくったりしているのに氷魔法の表記はないし、習熟する必要があるのかもしれない。
あっ、他の神様の像の台座に刻まれた菱形はどう言うことなのかウィンドウさんに聞きたかったんだけど……もう明日で良いか。
僕らの長い長い話し合いはだらだらとしたまま幕を閉じた。
村長から今回聞いた内容を改めて他言無用で頼むと切実に頼まれ、僕の両親には村長から説明しておくとのことだ。
正直すごくありがたかったので、スキルとして認められていない微弱な回復魔法を村長の肩と首と腰に当ててあげた。
弱々しく微笑みながらお礼を言ってくれて、なんだがすごく申し訳なくなったよ。




