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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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俺、姉と出会う

 ついにこの日がやってきた。


 そう、決戦の日だ。


 柵に囲まれたベッドの上で俺はたった一人、姉を待ち構える。


 そうだ、シミュレーションをしておこう。


 ムスッとした顔で入ってきたらその時は不思議そうな顔で出迎え近寄って来たところで渾身の笑顔を決めてやる。


 穏やかな笑顔でささくれだった姉の心を沈めてやるんだ。


 逆にニコニコでこちらに来た場合は警戒が必要だ。子どもは自制が効きにくい。テンションが高いと力加減を誤る可能性が高い。

 もちろん両親も最大限の注意を払うだろうが、自分の身は自分で守らねば!


 テンションが高い場合はすぐにぐずりそうなモーションと声で両親を俺のそばに引き寄せ、安全を確保したのちに渾身の笑顔をぶちかます。


 友人の独自理論を元に、全てを包みこみ許してくれそうなアルカイックスマイルを参考に作り上げた笑顔だ。四歳児よどうか鎮まりたまえ。


 そしてどうか慎重に俺に触れてくれ……。



 寝室の扉の先からワイワイと声が聞こえてくる。

 どうやら3人揃ってご機嫌麗しいらしい、それは良いのだがこのままだとぐずりルートに入らねばならない。

 笑顔の練習に時間をかけすぎて、ぐずる演技の練習が出来なかったんだ。

 頼むから俺の顔を見た瞬間眉間に皺を寄せて警戒心をもて姉よ!


 ついに寝室の扉が開いた。俺には扉が開く動きがスローモーションに見えた。生後四ヶ月での念願のご対面。  


 赤ちゃんの純真無垢なベビーフェイスに、さらに純真無垢そうな表情を上乗せ! そうすることでよりピュアっピュアで無っ垢無垢な赤ちゃんに至るのだ! そこにさらに親指を咥えて畳み掛ける!

 そして姉の油断を誘い、その隙に渾身のアルカイックスマイルを叩き込む。


 よし! 俺の準備は万端だ! 来い! お姉ちゃん!


 開かれた扉の前に居たのは、両親と両手を繋いで、嬉しそうに笑っているサラッとした黒髪を肩先まで伸ばし、父譲りなのか穏やかでくりっとした青色の目をした可愛らしい女の子が立っていた。


 あれが……お姉ちゃん?


 ……俺は一体何を血迷っていたんだろうか。あんなにも可愛らしい女の子が俺の、赤ちゃんの手を捻ってもおかしくないとか言って警戒していたのか?

 ふっ……ありえない!! 我が姉こそこの世に舞い降りたエンジェル! 笑顔という翼を広げて今ここに降臨したのだ!


 あれ? ファーストインプレッション作戦失敗というか、完全に俺がファーストインプレッションを完璧なまでに決められたのでは……?


 まあいっか!!


 そんなことを考えている間にも三人は近づいて来て、父が姉を抱き上げ、俺と姉に語りかけてくる。


「この子がエレアの弟のアッシュだよ。優しく触ってあげてね?」


 なんて優しい声色なんだろう、こんな声で言われちゃ乱暴に扱う方が難しい。

 そして姉の名前はエレアというらしい、今まで聞き取れずにモヤモヤしていたんだ。わかってスッキリしたな。

 だがこれで名前を知らないのは両親だけになってしまった。年齢も知らないし。両親が一番謎だよ。


 姉のエレアは父の言葉を受けて、おっかなびっくりと言った様子で恐る恐る手を伸ばしてくる。


 ……あまりにもゆっくりなので俺の方からも手を伸ばしてみる。


 その時のエレアの反応は嬉しさ半分戸惑い半分と言った感じで、とても微笑ましいものだった。


 考えが表に出たのか、無意識に笑ってしまっていたらしい。

 俺が笑ったのが嬉しかったのか、エレアはゆっくりと、でも、しっかりと俺の手を取って笑いかけてきた。


「おねえちゃんのエレアだよっ。あっしゅ!」


「あいっ」


 思わず返事をしてしまった。だがこれでよかったとも思う。だってエレアが喜んでくれたから。


 俺の返事を聞いたエレアが父と母に嬉しそうに、そして楽しそうに報告している。


「ねえ! ぱぱ、まま、きいた!? 『はいっ』ていったよ! かわいい〜」


 両手を胸の前に持ってきて感激と言った風だ。俺なんかよりエレアの方が可愛いよ。エレかわ。


 両親も俺と同じ気持ちなのか、優しげな目でエレアの頭を撫でながら「良かったね〜」などと言っている。

 こう、なんというか、庇護欲をそそられる子だな。赤ちゃんである俺が言えることでは無いのだろうけども。



「ふ〜ん……ママにはまだ返事してくれてないのにな〜……」


 母がぼそっと言った。




 これは……まずったか……?


 いや待て落ち着け、赤ちゃんにプレッシャーをかける母がいるだろうか? いや居なっ……こっち見てる。めっちゃこっち見て「ママだよ〜」って言ってくる。


 体が一瞬硬直してしまったよ。

 これは全身全霊を持って返事をしなければっ! なぜか身体をうまく動かせないのだが、それでもやらねば!!

 そうだ! 今ここで寝返りをお披露目してしまおう! それしかない!

 両手を母に伸ばして、ゆっくりと身体を反転させながら


「……あぁ、いっぃ」


 声が震えたような気もするがどうにか返答に成功したぞっ!


 これを見た両親は大はしゃぎ。エレアは良くわかっておらず戸惑っていたが、喜んでいる両親を見て一緒に喜んでいた。なんてええ子なんや……。


 中でも母の喜びようはすごくって、俺を丁寧に、かつ素早く抱き上げ頬ずりをし、至る所にキスの雨を降らせた。


 その時の俺は苦笑いというかなんというか、練習しすぎて癖になっていたのかアルカイックスマイルが出ていたようで、エレアが俺を見て「変な顔〜」と言いながら笑っていた。


 なんだかんだあったが、エレアとのご対面は大成功というか、俺の杞憂だったというか。

 終始みんなが笑っていて、騒がしくて、そして今までで一番速く時が過ぎていった。



 俺はきっと今日という日を忘れないだろう。こんなにも暖かな家族に迎え入れられて、心も体も幸せでいっぱいになって、これが俺の新しい家族なんだ。


 父さん、母さん、俺、新しい家族が出来たよ。聞きたかっただろう意味合いとは違うだろうけど、でも俺、今すごく幸せだよ。


 今日は良い夢が見れそうだ。

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