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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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僕、問われる

 霊獣と思しき存在と一緒に大樹の下で寛いだ僕は、機嫌よく村へと帰る。


 帰るのだが、少し先に見える村の広場がなんだか物々しい。

 ゼフィア先生と前にも見たなんかでかい強そうな獣人の人が立っている。


 何かあったのだろうか? 霊獣と思しきあの狐さんはさっきまで居たのだから、危機的状況に陥ったと言う訳でもないだろうし、そもそも張り詰めた空気感でもない。

 強いて言えば、困惑と動揺と期待感? ソワソワとかドキドキと言えば良いのだろうか。


 まあ、今の僕に出来る事なんてたかが知れている、僕がやるべきは日々鍛錬を積んで少しでも強くなることだ。

 今日は身が入らなかったけど……明日から頑張ろう、うん!


 そうして、僕が広場に入るとゼフィア先生と強そうな獣人の人の目が僕を捉えた。

 ゼフィア先生の目が僕を捉えて離さず、獣人さんの鼻がスンスンとずっと鳴っている。

 思わず僕は動きを止めてしまい、その瞬間二人が距離を詰めてくる。


「お前か、カルんとこの坊主。ちょっと話聞かせろ」

「アッシュ、済まないが私も話がしたい。今から少し時間をもらえないだろうか?」


 二人の顔も声も本気だ。

 おそらくあの狐さんの事なのだろうが、話も何も僕が知ることなんて何もない。


「なんの話をするんですか? 話すこと自体は構わないですけど、話せることなんてほとんど無いですよ?」

「些細なことでも良いんだよ。そんだけぷんぷん神獣の匂いさせてんだ、俺達以上には知ってることがあるだろ?」

「私も君から精霊獣の魔力を強く感じる。どんなことでも良いんだ話を聞かせてほしい」


 大の大人が六歳の子どもに凄んでくるのは絵面的に心配だが、周りの大人たちは今日は静観している。

 いつもなら「今日は何したんだー」とか野次が飛んでくるのに。

 そんな状況に飲まれてしまったのか、僕が少し後退ってしまったその時、村の広場にある教会の扉が開き中から優しい顔つきをしたお爺さんが出てきた。

 そのお爺さんが空気を塗り替える様に僕に優しく声をかけてくれる。


「君は霊獣に会ったんだね? それは良いことだ。元気そうだったかい?」


 何でもないことのように、世間話のように声をかけてくれる。

 そのおかげで緊張が少し解れた。


「あの、一緒に寝転んでくつろぎました。ドライフルーツを美味しそうに食べてましたよ」


 僕がそう答えると、お爺さんは可笑しそうに笑った。


「霊獣と寛ぐか、ほっほっほ! 君には何か縁があったのかもしれないねえ」

「霊獣に会うのがすごいことなのは分かったけど、どうしてこんなことになってるんですか?」

「ふむ、そうじゃなあ。詳しい話は教会の中で話すとしようかのう」

「村長がそう言うなら俺たちもそうしよう」

「私もそれで異存はない」


 このお爺ちゃん村長さんだったの!?

 なんか獣人の人がやけに素直に従うし、ゼフィア先生もそれに続くし、すごい人なのかなこの村長さん。


 逃がさないようになのか、ゼフィア先生が僕の手を引いていく。

 流石に逃げないけど……まあいいか。大人しく連れられて行くとしよう。


「なんだ、ゼフィア。お前その坊主に最近ご執心らしいじゃねえか。今も手なんか引いてよ? 子どもが好きだったのか?」

「フェーグ。お前には関係ない話だ。だが私がアッシュを気に入っているのは事実だな。文句でもあるのか?」

「チッ。からかい甲斐がねえな」

「フッ、嫁の尻に敷かれている獣人最強の方が、余程からかい甲斐がある話だな」

「ア? 喧嘩売ってんのか?? 買うぞ?」

「これこれ。そこまでにしておきなさい。君達の相性が良くないのはしっておるが、子どもの前で見せるようなものではないだろう?」

「「…………はい」」


 すごい。この二人をたった一言で鎮めたぞ村長さん。

 村の長と言われるだけはあると言うことだろうか。


 あとゼフィア先生の意外な一面にも驚きだ。こんなに好戦的に煽るようなことするんだな、ゼフィア先生。


 そして嫁の尻に敷かれる獣人最強のフェーグさん。

 ……確かコルハって親がやたら強いとか言ってたよな、このフェーグさんがコルハのお父さんなのかな? あとで聞いてみよう。



 軽い言い合いを聞き流しながらも教会の扉をくぐる。そこには、手前から奥に向かって左右に長椅子が並んでおり、一番奥には六体の美しい像が並んでいた。

 どうやらこの教会は神を祀る神殿でもあるようだ。

 

 そして、僕は思わず息をのむ。

 六体の像の大きさや荘厳さやその見目麗しさにではない。

 その六体の神像の台座には四角の枠とその中に名前が刻まれていたことでもない。


 刻まれた枠の中に僕がよく見た菱形の装飾がなされていたことに驚いて息をのんだのだ。


 どうしてウィンドウさんの装飾があるのかわからない。これは別の神の像だろう? 一体どういうことなんだ? ウィンドウさんはどういう存在なんだ。訳が分からない。



 僕が驚いている間にも歩みは止まらず、隅にあった扉を通って奥の部屋へと通される。


 今は一旦ウィンドウさんのことは置いておこう。また後で、納得するまで本人(?)本神(?)に問いただしてやる。


「ここまで来れば大丈夫じゃろう。さ、あとは好きに話すとよい。念のためワシも同席させてもらうがの? ほっほっほ」

「礼を言うぜ村長。ちぃっとばかし焦っちまった。人前で話すことでもなかったしな」

「私からも、お気遣い下さりありがとうございます村長殿」

「よいよい。それだけお主らにとって霊獣の存在が大きいと言うことじゃしのう」


 そう、今は霊獣だ。こっちの話に集中しないとな。


 全員が席に座ると、村長さんが果実水をみんなの前に出してくれる。

 果実水を口に含んで唇を湿らせて僕から問う。


「それで、僕に何を聞きたいんですか?」


 僕がそう聞くと、ゼフィア先生とフェーグさんは目配せをするとゼフィア先生が先に質問してきた。


「霊獣とどうやって出会ったのか、姿は見たのか、まずはそれを聞きたい」

「……うーん。出会うと言うか、知覚は出来ませんでしたね。命も感じられませんでした。姿ももちろん見えなかったです」


 なにやらフェーグさんが何か言いたそうに口をもごもごと動かしている。

 命を感じるの辺りで眉をしかめていたのでこんな坊主が出来る訳ねえだろとかそんなところだろう。


「であれば、どうして霊獣がいることに気付いたんだ?」

「僕の少し横の草が重みで倒れていたので、それで訳の分からない何かが居ると思いました」

「……そんな存在が横に居ることに気付いたのにくつろぐことをやめなかったのか?」

「今日はいろんなことが起こり過ぎていて、なんかどうでもよくなっちゃって……あは」

「あは、ではないだろう。馬鹿アッシュ……」


 心配と呆れの感情が飛んできた。申し訳ないですゼフィア先生。

 でも、嫌な感じも敵意も害意も感じなかったんだ。

 危険な存在では無いと半ば確信していたとも言える。


 このことも合わせて説明する。


「ふむ、それはおそらく、霊獣が体から漏らす魔力の影響だろうな」

「あと、姿に関してなんですけど魔力視をすると輪郭は分かりましたね。でかすぎて余計にわけわかんないものに見えて諦めましたけど」


 またフェーグさんが口をもごもごさせた。

 タイミングとしては魔力視の時かな? また坊主に出来るわけがねえって思ってそうだ。


 もごもごフェーグさん、ちょっと面白くなってきた。


「魔力視か、なるほど。いや道理か。魔力によって姿と命すら隠蔽して見せるとは流石、精霊獣と言ったところか。……ありがとうアッシュ。フェーグ変わるぞ」

「……ゼフィア。お前頭大丈夫か? この坊主の言うこと全部信じてんのかよ? 命を感じるだの魔力視だの、六歳のこの坊主に出来ると思ってんのか?」

「そうか、お前は知らないのか。アッシュはただの子どもではない。ある種異常ではあるが、理性的で理知的だ。そして魔力の扱いに関しては疑う余地もない。すでにオリジナルの魔法をいくつも生み出しているしな」

「……そうかよ。まっ、ただのガキの前に神獣が現れる訳ねえか」


 僕のことを知らなければ疑うのが当たり前の内容だらけだもんね。実際色んな人に驚かれてきたし。

 でも、この二人がどうしてここまで真剣に僕に訪ねてくるのかまだ話が見えない。


「んじゃあ、俺の番だな。俺は神獣のことは聞かねえ。聞いたところで仕方がねえからな。俺が聞きたいのはお前のことだ。お前はこの村を出るつもりはあるか?」

「えっと、王都の学園に行ってみたいとは思ってますけど……?」

「そうか。駄目だ諦めろ」


 は? なんでこの人にそんなこと言われなくちゃならないんだ?


「おいっフェーグ! 言い方を考えろ!」


 えぇ? 言い方って、否定はしないのゼフィア先生?


 ……こう言われるのって僕が外に出ることでデメリットがあるからだよね、しかも霊獣関連で。

 果たしてそれは村のデメリットなのか種族ごとのデメリットなのか、フェーグさんやゼフィア先生の個人的なデメリットなのかどれなんだろうね……?


「理由を聞いても良いですか?」


 僕が思ったよりも低い声を出したからか、僕が出す雰囲気が変わったからか、フェーグさんが少し動揺しているのが分かる。


「こりゃ、本当にただのガキじゃねーな……はあ。これはお前のために言ってんだ。お前が神獣……あぁ、霊獣と交流があることが外のやつらにバレたら、お前、二度とこの村に帰ってこれなくなるぞ?」



 フェーグさんの真っ直ぐな瞳が僕を貫く。少しだけ心配そうなニュアンスが、その真実味を高める。


 ……今度は僕が動揺する番だった。


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