表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/28

「記録 ―血の契約―」



嵐の夜が明け、街は静寂に包まれていた。

崩れたビルの中で、仁は倒れ伏していた。

獣の姿は消え、人の形に戻っている。

しかし、肌には金属の紋様が浮かび、体の奥ではまだ“何か”がうごめいていた。


レナは仁のそばで端末を操作していた。

彼のベルトに内蔵されたデータコアを解析するためだ。


「……やっぱり、見覚えがある。」

レナの指が震える。

画面に浮かび上がったのは、JOKERの機密ファイル――《PROJECT GENE WOLF》。



---


《実験記録 第271号》

対象:神崎仁(消防士)

遺伝子適合率:98.7%

備考:耐久性・精神安定性ともに高水準。

   “狼コード”適合個体として採用。


《補足》

本個体は、過去に特殊血清投与の履歴あり。

被験者の母体が「旧・生体防衛研究所」の出身者であることを確認。

──つまり、この男の血には“初代被験者”の遺伝子が流れている。



---


レナは唇を噛み締めた。

「……あなたは、最初から選ばれていたのよ。

 災害で死んだのも、偶然じゃない。彼らが仕組んだことだったの。」


仁の目がゆっくりと開く。

「どういう……ことだ?」


「あなたの遺伝子には“制御因子”が組み込まれている。

 つまり、あのベルト――あれがJOKERの支配装置なの。」


仁は無言でベルトを見つめた。

金属の輝きが、まるで嘲笑うかのように光っていた。


「俺は……奴らの実験で、生かされたのか。」


「違うわ。」

レナは強く首を振る。

「あなたは“素材”じゃない。生きていたいと願った“人間”の証明よ。」


その言葉に、仁の拳が震えた。

怒りと哀しみが胸に溢れる。

そして、彼は静かに立ち上がった。



---


遠くで、轟音。

空を切り裂くように、巨大な黒い影が姿を現す。

無数のドローンを従えた、JOKERの実戦怪人――リーパー・タイプ01。


通信機から冷酷な声が響く。

「神崎仁。再収容を開始する。抵抗は無意味だ。」


仁はベルトに手を添え、ゆっくりと笑った。


「抵抗? 違うな。」


金属のバックルがカチリと鳴る。

赤い光が走り、空気が震えた。


「俺は――」


仁の瞳が黄金に輝く。

その声は雷鳴のように響いた。


「俺は、JOKERに購う戦士――銀狼だぁッ!!」


咆哮と共に光が爆ぜ、銀の装甲が彼を包み込む。

雷鳴が街を照らし、狼の遠吠えが夜を裂いた。


「行くぞ、JOKER……俺の戦いは、ここからだ!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ