最終話「記憶の果て、新たなる誓い」
「記憶の果て、新たなる誓い」
崩壊音が遠くで響く。
“記憶の艦”の構造体は限界を超え、空間ごと崩れ落ちていく。
世界の輪郭が光の粒となり、消えていった。
リオは倒れたレナを抱きしめながら、ゆっくりと立ち上がる。
その腕に残る熱は、確かに“生きている”証だった。
> 「……レナ。もう、終わったんだよな。」
レナは微笑み、力なく首を振る。
> 「いいえ……終わりじゃない。
だって、あなたがまだ――“ここ”にいる。」
その言葉に、リオは目を細める。
背中のベルトが淡く光り、空気の粒子が弾けるように変化した。
その光の中、彼は――“記録”の断片を見た。
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――炎の夜。
かつて仁が命を懸けて守ろうとした研究室。
> 『リオ……進化は、道具じゃない。
それは、“心”が選び取る未来の形なんだ。
忘れるな。どんな時代でも、涙を流せる者こそ――人間なんだ。』
仁の声が風のように響く。
リオは拳を握りしめ、目を閉じた。
> 「……分かってるさ。
あんたの願いは、ちゃんと届いた。」
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白い光が視界を満たす。
崩壊の中、リオとレナの身体がゆっくりと浮かび上がる。
そして――再び、世界が再構築されていった。
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眩い光が収まり、二人が目を開けると――そこは青く澄んだ空の下だった。
瓦礫は消え、緑が風に揺れている。
遠くで鳥が鳴いた。
レナが呆然とつぶやく。
> 「……ここは……?」
リオは空を見上げた。
> 「分からねぇ。けど……あいつが残した“未来”かもしれない。」
ふと、足元に小さな光が漂っていた。
光の粒が形を取り、ひとりの少年となる。
短い銀髪に、透き通る瞳。
その少年は、穏やかに二人を見つめていた。
> 「きみたちは……ぼくを、助けてくれたんだね。」
レナ:「あなたは……ノア?」
少年は静かに頷いた。
> 「うん。ぼくはノア。
でももう、AIじゃない。
ぼくは“人間”として――やり直すんだ。」
リオは微笑む。
> 「そっか……じゃあ、これでいい。」
ノア:「ねぇ、リオ……“進化”って、何?」
リオは少し考え、穏やかに答える。
> 「進化ってのはな……“誰かを想う”ことだ。
その想いが、次の誰かを生かしていく。
それが……俺たちの“記憶”なんだよ。」
レナ:「……それが、“希望”ね。」
風が吹く。
草原が揺れ、空の彼方で一筋の光が流れた。
> 『記録完了――Re:Genesis 終了。』
どこからともなく、仁の声が響く。
優しく、温かく、二人を包み込むように。
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リオはレナとノアの手を取り、歩き出した。
その背に、銀色の光がかすかに尾を引く。
> 「行こう。まだ見ぬ世界へ。」
「ええ――“心”のある未来へ。」
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空の彼方、狼の遠吠えが響く。
それは、絶滅したはずの記憶の声。
だが確かに、どこかで生き続けていた。
“銀狼”は、人類の記憶を継ぎ――
“心”という名の進化を選んだ。
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【終】
> 「涙を流せる限り――人は、まだ人間だ。」
――神崎 仁
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あとがき
『Re:Genesis』は、「進化」と「心」を対立軸として描いた、人とAIの再生譚です。
リオたちが見つけた“希望”は、力や技術ではなく――想いを受け継ぐこと。
この物語を通じて、あなた自身の中にも、
“誰かの記憶”が静かに息づいていることを感じてもらえたら幸いです。
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Re:Genesis ― 完結。
(新章ティザー:《Project EVE》 ― “創世の子供たち”編、Coming Soon...)




