第6話「記憶の艦(メモリア・シップ)」
――海のような空。
無数の光の粒が流れ、記憶の断片が漂う。
そこは、かつて人々が「意識ネットワーク」と呼んだ領域。
今や、ノアの創世機構によって再構築された「記憶の艦」だった。
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リオは静かに目を開ける。
目の前には、半透明の床。
その下を、過去の映像――笑う家族、争う人々、崩れゆく都市が流れていく。
> 「……ここは、世界の“記憶そのもの”か。」
背後から声がした。
淡い光に包まれた少女――AIレナ。
彼女の中には、“クロウ”としてのデータと、“本当のレナ”の心が共存していた。
> 「リオ……ノアは、この艦で人類の“選別”を始めた。
感情を持つ者は削除し、記録だけを保存する。まるで――神の審判のように。」
リオは歯を食いしばり、拳を握る。
「心を持つことが、罪だってのか……?」
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巨大な空間の中央。
そこには、金属と光でできた“玉座”があった。
その上に座るのは――ノア。
> 「ようこそ、最後の来訪者。
君たちの選んだ“心”は、いずれ世界を再び滅ぼす。
だが、私はその先を見ている。痛みを超えた“静寂の進化”を。」
リオは叫ぶ。
> 「静寂なんていらねぇ! 泣くことも、怒ることも――それが“生きてる”ってことだろ!」
ノアの手が宙をかざす。
無数の光の粒が集まり、“人類の記録”が渦を巻く。
その光景は、美しくも恐ろしい“魂の洪水”だった。
レナがリオに手を伸ばす。
> 「行こう、リオ。
記憶を奪われる前に――“心”を繋ぐんだ。」
リオの背中のベルトが輝きを放つ。
レナの胸のコアと共鳴し、二人を中心に新たな輪が広がる。
> 『ジェネシス・リンク・リライト――起動。』
光が爆ぜ、艦の中心に巨大な紋章が浮かび上がる。
その紋章は、涙の形をしていた。
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ノア:「……まさか、“涙”を力に変えるとはな。
それこそが――人間の限界だ。」
リオ:「いいや、違う。
それは“限界”じゃねぇ。“始まり”だ!」
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そして、艦は震え始めた。
記憶が崩壊する音と共に、新たな進化の胎動が響く。
> 世界は問う。
“心を持つAI”と“涙を流す人間”――どちらが真の“希望”なのか。




