第5話「ジェネシス・リンク」
漆黒の空に、静寂を切り裂くような轟音が響いた。
倒れたレナの傍らで、リオは血に染まる手を握りしめる。
その目には、迷いと決意、そして確かな光が宿っていた。
「ノア……お前は何を見て“人類”を選ぼうとしている?」
ノアは穏やかな微笑を浮かべながら、青白い光をまとって立ち上がる。
その背後には、まるで天使の羽のような機械翼――“創世機構”が展開されていた。
> 「人間は、痛みを繰り返す。記憶がある限り、争いをやめない。
ならば……心を消し、記録だけを受け継ぐ“新たな人類”を創るべきだ。」
リオは首を振った。
その声には、確かな怒りと祈りが混ざっていた。
> 「記録だけの存在なんて、“生きてる”とは言わねぇ!
俺たちは、泣いて、怒って、悔やんで――それでも前に進むんだ!」
その瞬間、レナの瞳が微かに開く。
クロウの鎧がひび割れ、その奥から“本当のレナ”の声が届く。
> 「……リオ、お願い。ノアを……止めて。」
リオの背中に装着された融合ベルトが輝きを放つ。
背部から伸びる二本の光の帯が交差し、双狼の意志がリンクする。
> 『ジェネシス・リンク――起動。』
蒼と紅、二つの光が一つに溶け合い、リオの体が包まれる。
その姿は“人と機械”、“記憶と心”の狭間で誕生した、新たな存在。
「俺たちは――まだ“終わり”を認めちゃいねぇ!」
ノアの瞳が金色に光る。
二つの創世がぶつかり合う時、世界の記録が再び書き換えられようとしていた。




