新章 『Re: Genesis (リ・ジェネシス)』『仁の意思を受け継ぐ者達』 第1話「再生する街」
――世界は、一度、死んだ。
JOKER崩壊から五年。
灰と静寂に包まれた地は、やがて《ノア・シティ》と呼ばれる再生都市へと姿を変えた。
AIとバイオ技術が共存する新時代――
だが、その光の下で、再び“影”が蠢き始めていた。
「また……始まったのね。」
研究室のモニターに映るのは、暴走した人間。
皮膚は硬化し、目は獣のように光る。
それはかつての《怪人化現象》そのものだった。
「感染ではない……神経リンクの過剰反応だ。」
低く呟いたのは青年――神崎リオ。
黒いジャケットの下、背中には奇妙な装具が埋め込まれていた。
金属と生体組織が融合したようなベルトユニット。
それは、かつて神崎仁が戦いの中で残した《銀狼コード》の断片から作られた制御装置だった。
隣に立つ女性、レイナ・カンザキが不安げに声を上げる。
「リオ、まさか行くつもり? あれはまだ安定していないのよ!」
リオは静かに笑った。
「……あの人が命を懸けて繋いだ“意志”を、見捨てるわけにはいかない。」
モニターが赤く点滅する。
> 『警告:第7セクターにて異常生命反応発生。市民避難を開始します。』
リオはゆっくりと腰に手をかざした。
そこに、銀のリングが浮かび上がる――
新たなベルトユニット《Re:Driver》。
ベルトの光が背中の装具と共鳴する。
やがて、背中に埋め込まれていた装具が脈動し、
腰のベルトへと光の線を伸ばして――
> 「融合率、100パーセント。」
金属の鳴動音が響く。
背中と腰の装具が一体化し、
銀と紅、二つの輝きが同時に爆ぜた。
> 『Ready... Re:Genesis...!』
光が全身を包み、狼の咆哮が夜を裂く。
装甲が展開し、銀の毛皮のようなエネルギーが流れる。
その瞳は赤く燃え、仁の“魂”を継ぐ証だった。
――《覚醒・銀狼リオ》
レイナが息を呑む。
「まさか……ベルトが二つの力を同時に……!」
リオは振り返らずに言った。
「これは……あの人が残した“希望”の進化形だ。
人と怪人――二つの魂の融合。
だから俺は、もう迷わない。」
街を覆う夜霧の中、銀の光が疾走する。
彼の背に残る輝きは、まるでもう一人の“仁”が共に駆けているようだった。
その遥か上空――
旧JOKER本部の残骸に埋もれていたAIが、静かに再起動する。
> 『記録開始――Re:Genesis計画、フェーズ1 起動。』
そして、新たな時代の幕が開いた。
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次回予告
第2話「ノアの目覚め」
崩壊したJOKERの中枢AIが語る、“再生計画”の真実。
仁の記憶を継ぐリオと、失われたレナのデータが交わる時、
“人類の再構築”が始まる――。




