「終焉の双狼 ―仁 vs リーパー―」
爆炎の中、焦げた鉄骨が崩れ落ちる音が響いていた。
そこは、かつて仁とレナ(クロウ)が運命に翻弄されたJOKERの実験施設の最深部。
そして今、その瓦礫の上に、二つの影が対峙していた。
「やはり来たか……銀狼。」
低く、獣のような唸り声。
全身を黒い装甲に覆い、死神のような仮面をつけた男――《リーパー》。
JOKERの最高戦力にして、“人類怪人化計画”の象徴。
「お前を止めるために、ここまで来た。」
仁は静かにベルトへ手を伸ばした。
銀色のプレートが閃き、狼の紋章が赤く光る。
> 『Ready... Complete...!』
銀狼の装甲が仁を包み、赤く燃える瞳がリーパーを射抜く。
「俺は……人間として死んだ。けどな、怪人として――人の心まで捨てたつもりはねぇ!」
リーパーの仮面が軋み、低く笑う。
「心? そんな脆いもののために何を守れる? JOKERの理想は“進化”だ。人類は弱い。だからこそ滅ぶのだ。」
「違う! 弱さを知ってるから、仲間を想い、立ち上がる。それが人間だッ!」
銀狼が駆ける。
黒炎と銀光がぶつかり合い、衝撃波が施設を崩壊させていく。
狼の咆哮と共に、拳と爪がぶつかるたび、火花が散り、空気が震える。
だが――その時、リーパーの仮面の奥で、一瞬だけ“涙”のような光が揺れた。
「……お前は、まだ気づいていないのか。俺は――お前の、もう一つの魂だ。」
「なに……?」
「人類怪人化計画《JOKER CODE》……お前を蘇らせる際、我々はお前の“死の瞬間”の記憶を分離し、実験体にした。それが――この俺だ。」
仁の瞳が揺れる。
己の拳が、己に向けられていた――。
「俺はお前の“死”そのもの。だからこそ、終わらせに来た。」
リーパーが黒い翼を広げ、闇を裂く一撃を放つ。
仁は歯を食いしばり、拳を構えた。
「だったら……終わらせてやるよ。人間の“心”でな!」
銀と黒、二匹の狼が、夜を裂いて衝突する。
爆音と光の奔流が空を貫き――
全てが、静寂に包まれた。
燃え落ちる施設の中、仁の腕にはボロボロのベルト、そして沈黙するリーパーの仮面。
「俺は……お前を、そして……俺自身を、許す。」
仁は空を見上げ、月の光に目を細めた。
レナの声が脳裏に響く――
《仁……生きて。あなたは、まだ人間よ。》
夜風が吹き抜け、崩壊した研究所に狼の遠吠えが響いた。
それは、哀しみと誓いの咆哮――。




