死神の目覚め
暗闇の中、ひとつの心臓が鳴り響いた。
ドクン――
それは人の鼓動ではなく、金属と血が混じり合ったような異質な響き。
「……ついに、目を覚ますか。」
Dr.オルフェウスが端末を操作する。
中央の巨大なカプセルに封じられた影が、ゆっくりと動き出す。
赤い警告灯が点滅し、ラボ全体に不穏な警報が鳴り響く。
『システム解除。対象コード:REAPER-01、覚醒を確認。』
液体が弾け、ガラスが砕けた。
そこから現れたのは、漆黒の装甲に包まれた巨躯――
リーパー。
「……これは死神の再誕。
この肉体、この力。すべてはJOKERの理想を実現するためにある。」
その声は低く、しかし地の底から響くような重さを持っていた。
背中の黒い刃翼が開くたび、周囲の空気が軋み、電子機器が次々にショートする。
「銀狼……神崎仁。貴様こそ、人類の希望という幻想の象徴だ。
俺がその希望を喰らい尽くしてやる。」
リーパーの視線が、遠くの夜空を貫いた。
そこには、廃ビルの上で風に髪をなびかせる仁とレナの姿がある。
レナの表情が強張る。
「……あれが……リーパー。」
「感じる……この圧力。まるで死そのものが歩いてくるみたいだ。」
仁のベルトが脈動し、銀色の光が走る。
だがその奥に、これまでとは違う“影”が揺れていた。
――低く唸る声。
(……もっとだ……力を解放しろ……)
頭の奥に、もう一つの声が響く。
獣のような咆哮、血のような衝動。
仁は歯を食いしばり、額から汗を流す。
「やめろ……俺は……人間だ!」
(人間? 違う。お前は“影狼”。本能を縛るな……解き放て!)
仁の膝が崩れ、銀狼のコアが暴走を始めた。
レナが駆け寄る。
「仁っ! あなたまで飲み込まれたら、もう……!」
彼女の声を掻き消すように、轟音が夜を裂く。
銀狼の装甲が変化し、黒と銀が混ざり合う。
その姿は、もはや“人”ではなかった。
「……影狼、覚醒――」
リーパーが低く呟いた瞬間、二つの存在が対峙した。
銀と黒、光と闇、希望と絶望。
夜風が止まり、世界が静寂に包まれる。
そして次の瞬間――
二人の怪人が、互いに向かって飛び出した。
刹那、都市の一角が光と衝撃に包まれる。
仁とリーパー。
それは、人と怪物、そして“進化”と“魂”の戦いの始まりだった。




