表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

第一話 再生 ― JOKERの狼 ―



> 眩しい――。


光が、目の奥を焼いた。


呼吸をしようとして、空気が喉を突いた。

それは生温く、金属の味がした。


「……意識が戻ったか。驚いたな。人間の枠を超えた生命力だ」


低い声が、どこか遠くで響く。


目を開けると、白い天井と無数の管。

自分の身体がベッドに固定されているのが見えた。


「ここは……どこだ?」


声が震えた。


「安心しろ。君は選ばれたのだ。JOKERに――」


その名を聞いた瞬間、頭の奥がざらりと痛んだ。

灰色の街、崩れたビル、火の粉。

誰かの叫び。

「神崎隊長! ダメです、もうこれ以上は――!」


記憶が、炎の中で途切れる。


「君は死んだのだよ、神崎仁。だが、我々が君を再生させた。」


「再生……?」


「人は弱い。だからこそ進化が必要だ。君の身体には“狼の遺伝子”を組み込んだ。

群れを導く者として、力を得るためにな。」


白衣の男が笑った。

その背後では、無機質な機械が低く唸っている。


仁の手足はまだ思うように動かない。

ただ、胸の奥で何かがざわめいていた。


「……博士、そのベルトは?」


黒衣の助手が問いかける。


「これは制御装置だ。ワクチンと意識をつなぐ、君の“鍵”だよ。

集中すれば、姿と力を自在に引き出せる。」


博士が金属製のベルトを持ち上げ、仁の腰へと装着した。

冷たい音が響く――カチリ。


次の瞬間、身体の奥が熱を帯びた。

炎が流れるように、血が逆流する。


「あ……ぐっ……!」


意識が白く染まる。

皮膚の下で何かが蠢き、筋肉が軋む。


「博士、過負荷です!」


「構わん、抑えるな! これが“進化”だ!」


白衣たちの叫び声が遠ざかる中、

仁の視界が赤く染まった。


――牙。

――爪。

――咆哮。


全てが混ざり合い、爆ぜる。


……静寂。


実験室の床には、ひとりの“怪人”が立っていた。

鋭い狼の面を持ち、黒銀の毛皮のような装甲に包まれた姿。

その瞳だけが、確かに“人間の色”をしていた。


「……俺は、何になっちまったんだ……?」


その呟きは、機械の音にかき消された。

だが、彼の中で燃える何かは、確かに生きていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ