『未知』一桁、危険度中、安定感+3〜+5、名「A1・エンキンガエル」
記録 右、登録番号1、記録番号1001、解明団記録部広報許可 有、その他情報 丸、有、10。記録者は終始情緒不安定だが、『未知』に接近した影響があるので、問題は無い。
――年―月五日25時 記録・登録者 白木 残
最初見た時は普通にカエルだと思っていた。いや、実際カエルだった。
そのカエルは40m先の道の真ん中に居た。この時は未だ違和感に気付けなかった。
そして、15m程歩くと、違和感に気付いた。あのカエルはもしや途轍も無く大きいのではないか?と。
40m先からでも5cmに見えるのだ、遠近法がおかしくなっている。そう思わないと自分がおかしくなる。この時は何故か気が狂いそうだった。
取り敢えず自分を落ち着かせよう。自分には選択肢がある。後ろに退くか、進むか。つまり、恐怖か、好奇心か、あるいはただ気にしないか。
自分は気にしない事にした。こういうものは気にしなければ無害だろう。そう思いたい。
周囲の木々が巨大に見える。本当に遠近法がおかしくなってるのか?それとも自分の遠近感だけがおかしくなってるのか?確かに疲れは感じて居るが。巨大なカエルに驚き過ぎたのだろうか。今はただ、気にせず歩く事にした。カエルは微動だにしない。
ついにカエルから5mの所迄来た。流石に足を止めてしまった。何故ならそのカエルは、背丈10mに見えたのだ。やはり遠近感がおかしい。周りの木は東京タワーを猶に超えている。世界最大級だ。
カエルの周りの空間がバグっているのか?なら何故だ?このカエルは、それこそ超常的存在なのか?はたまた自分は疲れてるのか?この場所が変なのか?ここは何処だ?ただ周りの物達があり得ない程高いだけなのか?答えは出ない。もはや何を考えれば良いのだ?何を考えてるのか?なんで考えてるのだ?何を考えれば良いのだ?頭痛が痛い。ここは夢か?なら何故ここまで考えてる?頭が疑問符で埋め尽くされる。まるで疑問符の海で波に呑まれてる様だ。ここまで来ると哲学的な事に思える。哲学は苦手だ。哲学は何故を考え結論も何故とかいう訳わからん。静かだ。静か過ぎる。耳が聴こえない。耳が痛い。耳痛だ。頭痛の次にこれか。今度は鼻痛だろうか、はたまた喉痛だろうか。何を気にして居る?光が明滅している。目痛だった。他には何があるだろうか。あれ、何考えてるんだ?
今思えばとてもアホらしい。でも本当にこんな事を考えて居たんだ。
そして数分後、頭痛が落ち着くと、気が付けばカエルは何処かへ行っていた。木も普通だ。普通に高い。
あれは立ちくらみだったのだろうか、あれは悪夢だったのだろうか。
少なくとも現実では無い事は確かだ。そうだ。
自分はとりあえず家に帰り、あの遠近ガエルみたいな奴の事をブログに書いて、ネットに真相を明らかにしてもらう事にした。あわよくばテレビ出演なんかも夢見て、さっさと眠りに着いた。
そして後日、謎のメールが来た。
[詳細は判らないが、その『存在』は、今迄発見された中でも特に稀有で、完全に未知なる『存在』だ。そのカエルは危険である可能性があるため、その未知なる『存在』を我々に管理させて貰いたい。]
みたいな内容のメールだった。一瞬悪戯や詐欺かとも思ったが、詳しく聞くと本当らしい。彼等は『存在管理団』といって、あの遠近ガエルの様な奴等を徹底的に管理しているという。
自分は彼等に任せる事にした。自分じゃあ遠近ガエルとまた出会うだけで倒れてしまうだろうし。
そしてまた後日、裏で何があったかは分からないが、『解明団』なるものが出来たらしい。今迄よりも不可解な『存在』である彼等を『未知』と名付け、その『未知』を解明させて行くとか何とか。
あの遠近ガエルは仮だが「A1」と名付けられたみたいだ。現在必死に捜索しているとか。自分はもう話について行けてないが、遠近ガエルの事を記録として詳細に書いてくれと言われて、これを書いてる。
考えるのはそこそこにし、取り敢えずこの記録を終わらせる。
―記録、以上。―
この物語は有りふれたフィクションです。現実に居る訳無いので探したりしないで下さい。