04.生徒会の日常
放課後、残ってた生徒会の仕事をするため生徒会室に入ると何やら聞き覚えのある声が二つ聞こえてきて、中へ入ると麗奈が困惑するリーシェに言い寄っていた。
他の役員は今日用事でこれないためこの三人だけらしい。
「リ―シェさん、ワタシハアナタヲユルサナイ」
「意味がわからん」
「全部全部全部貴方が悪いのよッッ!」
「お―い、聞こえてますか? 麗奈さん?」
「貴方と関わってから愁くんは変わってしまったわ」
「おい、無視すんな」
「今まではちゃんと帰ってきてたのに」
「そもそもそれはお前が勝手に上がり込んでるだけじゃね?」
「怪しいと思って後をつけてみたら案の定、リ―シェちゃんと教室でイチャイチャと」
「イチャイチャはしてねぇよ。てか、それただのスト―カ―な?」
「はっ! なんて羨ま……ハレンチなっ!」
「お前の思考回路バグってんの?」
「ねぇ、これどういうことなの? 淺川くん」
「いや、俺が聞きてぇよ。何がどうすればこんな修羅場展開になるんだよ」
「議事録をファイリングしてる時に麗奈がきたから雑談してたのよ。そしたら突然こうなったわ」
メンヘラ彼女みたいな演技をする麗奈とその状況でやれやれと呆れきったリ―シェが仕事を再開するというカオスな空間が生まれた。
「愁くん。元々私今日来る予定無かったの。ってことはね、ここで男女が二人きりになってたかもしれないのよね?」
「まぁ、そうなるよな」
「何をするつもりだったの?」
「生徒会の仕事に決まってるだろ」
「答えられないってことはもしかして……もう寝たの?」
(めんどくせぇ)
「わ、私と淺川くんが……ね、寝る―!?」
「寝てねぇよ。それより、お前のせいでリ―シェが凄いことになってるんだが?」
リ―シェの方は茹でダコのように耳元まで赤くし、頭から湯気が出そうな勢いだ。
どうやらこのネタはリ―シェに刺激が強いらしい。
「答えてよ、答えなさい」
玩具のスポンジナイフを脇腹に押さえつけてくる。
「それは俺のセリフだよ」
「淺川は、私の彼氏だッッ!」
とかっこよくフラれた女子のケアが上手いことで有名で同性からも人気の生徒会長である羽柴優里が扉を勢いよく開け、ノリノリで爆弾を投下した。
「なんでノッちゃうんですか、会長」
「お前が誰だか知らんが淺川は私が守るっ!」
「やっぱりお前かァァァァッッ! よくも愁くんの貞操をッッ! 誰が何年守ってきたと思ってるのよっ!」
「おい、花の女子高生がそういうこと言うんじゃない。清く正しく生きようねって学ばなかった?」
「許せない。私から愁くんを奪うなんて! 奪われるくらいならっ!」
麗奈は愁を押し倒そうとするがその前に首根っこ掴まれ、空いていた椅子に座らされる。
「色々とめちゃくちゃだわ。こんなの他の生徒が見たらやべぇわ。俺がクズ認定受けてクラスでの居場所失うっつ―の」
「これからが面白かったんですよ?」
「なわけあるか、これ以上は俺のプライバシ―を明かされそうで怖いわ。んで、会長は何しに来たんですか。今日用事では?」
「いやぁ、急遽用事が無くなってね。様子を見に来たんだよ」
「そうですか」
「愁くん、私の名演技に何も感じないんですか?」
「感じるとしたらそれは幼馴染みの頭が思っていたより湧いてたくらいかな」
「いくら私が可愛いからって照れなくてもいいんですよ?」
「可愛いのかの文字も出してねぇよ」
思った以上に刺激が強かったのかリ―シェは未だに現実逃避を繰り返す彼女へ温かいハ―ブティ―を淹れて、渡すとゆっくり飲みほした。
「ごめんなさい、取り乱したわ」
「麗奈」
「は、はい。冗談が過ぎました。リ―シェさん、ごめんなさい」
落ち着きを取り戻したリ―シェに申し訳なさそうな面持ちの麗奈が深々と頭を下げ、怒るかと想像していた麗奈は少し覚悟していたが、リ―シェはあっさりと謝罪を受けいれ、ファイリングの作業を再開した。