最終回.繋がる想い
しばらく学校は今回起きた問題でメディアが騒ぎ立てマスコミが押し寄せたため休学となり、麗奈と共に愁は母親である静乃のお見舞いへ向かう。
既に先客がいるの個室である静乃の病室から若い女性の声が聞こえてきた。
愁と麗奈が入るとどこかで見たような綺麗に整った顔立ちの金髪の女性が静乃と仲良さげに談笑していた。
「か、母さん、その体は?」
「問題ないわ」
「貴方が淺川愁くん?」
「はい、そうですけど……」
「初めまして、いつも娘がお世話になってます。私はリラ・アルナ―タ・天生です」
「えっ、あ、は、初めまして。リ―シェさんとはいつも仲良くさせていただいてます」
「いつもあの子は愁くんと麗奈さんの話ばかりしてるの。あの子はすごく楽しく過ごしているみたいで母親としては……うれじぃ」
リラは突然涙を流し、嗚咽を漏らしながら愁と麗奈の手を取り何度もお礼を言っていた。
「母さんと知り合いなんですか?」
「私も煌凌出身なの。凄い偶然ね」
「へぇ」
「何を言っているの? 愁、貴方は昔リラとも娘さんのリ―シェちゃんやリゼットちゃんとも会っているはずよ?」
愁は首を傾げ、思い出そうとするが思い出せなかった。
「仕方ないよ、静乃ちゃん。会ったのだって十年も前だから」
それからも雑談が続き、終わる頃には日が暮れ始め愁は麗奈を送り自宅へと帰った。
数日が経ち、愁はリ―シェと遊ぶ約束をして最寄り駅で待っているとタ―トルネックのニットに柄のついたスカ―ト、その下にニ―ソックスを履き可愛らしいコ―デをしたリ―シェが現れ、愁は思わず本音を口にしてしまった。
「可愛い」
「あ、淺川くんっ!」
「ご、ごめん」
「べ、別にいい。そ、そういえば、お母さんはもう大丈夫?」
「ああ、明日には退院してそれ以降は経過観察で大丈夫って。それとごめん」
「と、突然なに?」
「ずっと嘘をついてた。俺は麗奈の兄で霜月の長男なんだ」
愁は怒られると覚悟して目を瞑る。
「……知ってるわ。二人の態度でなんとなく気づいてたわ」
「怒らないのか?」
「怒って欲しいの?」
「いやそうじゃないけど……」
「ずっと嘘つかれていたことはショックだけど実害があった訳でもないから」
「リ―シェ、俺は」
「はぁ、そんなに言うなら……私と一緒に遊園地行って欲しい」
「それは全然いいけど……」
嬉しそうに喜ぶリ―シェと遊園地へ急遽向かうことになり、予測していたかのようにREINに麗奈から予約しておいたよと遊園地の住所が送られてきた。
案の定、霜月という名前で予約していてVIP待遇されそうになりそれを丁重に断り二人で遊園地を満喫した。
日が暮れ、リ―シェが高いところから街を見たいと言って観覧車に乗るが愁は隠してきた秘密がもう一つありそれは高所恐怖症というものだ。
(うう、怖い)
「ごめん、私高所恐怖症なんて知らなくて……」
「いや、大丈……うぷっ」
「淺川くん……ドゥ―ドゥ―」
優しく背中を摩るリ―シェの慈愛を受け入れる。
「俺牛じゃないからな……」
「ごめんごめん」
「ちょっと落ち着いた。リ―シェ、ありがとう」
「なに? 気持ち悪いんだけど」
「ひどっ。いやそうじゃなくて。リ―シェのおかげで俺は母親を嫌いなままでいなく済んだ。もしリ―シェがいなかったら俺は何もかも諦めて逃げてたと思う。だからありがとう」
「私は何もしてないから」
「ここからが本番なんだけどさ……貴方の事がずっと好きでした。俺と付き合ってくれませんか?」
振られても構わないという覚悟を胸に愁は隠してきた思いをリ―シェに打ち明ける。
「ッッッ!? えっ、えっ! それは罰ゲ―ムか何か?」
「俺そんなにクズに見える?」
「いや、ほら、わ、私冷たいし、素っ気ないから告白されるなんて思いもしなくて……」
「やっぱり今のは聞かなかったことにしてくれ」
「な、何言ってるの?」
「いやだって、こう今思うとすごく恥ずかしくて……な、なんか気持ち悪くなってきた」
「ほ、本当に私でいいの?」
泣きそうな顔でリ―シェが愁に上目遣いで訊ね、あまりの可愛さに愁は悶える。
「あ、当たり前だ。それにお前がいい」
「わ、私も好きよ。優しくてかっこいい貴方が……」
「えっ」
決して聞きそびれて聞き返した訳ではなく、リ―シェの返答に驚いた結果思わず聞き返したというものだ。
「だから付き合うって言ったのっ!」
「お、おう」
観覧車から降りるまでかなり気まずい空気が流れ、互いに付き合い始めたという現実をしばらくは受け入れられずにいた。
傍から見ればそれはゆっくりで一歩ずつだが二人にとっては大きな歩幅でいつからきっと
以上で本編につきましては完結となります。
短期間でしたが御愛読いただきありがとうございました。
今後もスピンオフスト―リ―等番外編に関しては不定期になりますが投稿させていただきますのでそちらの方もよろしくお願いします!