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15.煌凌祭準備

煌凌祭の一週間前くらいから授業は一旦終わり、時間割がほとんどその準備に費やすこととなり、生徒会メンバ―も色々な会場準備に駆り出される。


今日は、生徒会長の羽柴先輩と広報の稲郷先輩が担当のため愁はクラスの出し物準備を積極的に手伝い、教室の飾りつけをしていく。


「さすが、美術部だな。晃」


看板のデザインを担当した親友である晃へそう伝えるとクラスの女子達が次々と褒め、愁はそこから遠のき、衣装を製作していたリ―シェの方へ逃げた。


「淺川くん、刃物使ってるからあまり近づかないでよ?」


「お、おう、悪い。しっかし、意外とリ―シェは器用だな」


「意外は余計。うちの家は両親が共働きで姉はこういうのが得意じゃないから自然と上手くなったわ」


「お姉ちゃんってリゼットさんか」


(ぼのぼのしてて直ぐに怪我しそう……)


「ええ、そうよ」


「ここまで手が器用なら、いいお嫁さになれそうだな」


「お、お嫁さんっ!? な、何言ってるのっ!? 馬鹿じゃないのっ!」


「あ、いや、そ、そういう意味じゃなくて」


(((ほんとこの二人は熱いなぁ)))


顔を赤くした二人がいつものようになるこの状況を見て、クラスメイト(二人を除いた)全員が一致団結した瞬間だった。


「ねぇ、愁。一応、男女共に一着ずつ出来たからね着てもらってもいいかな~?」


綺麗に折り畳まれたメイド服と執事服を持った千夏が着替えてくれと催促してきたが愁は嫌そうな表情をしている。


「え、嫌」


’「嫌とかないから。みんなごめん手伝って」


と千夏の合図でさっきまで晃のことを取り囲んでいた女子と衣装作りに取り組んでいた女子に囲まれ、強引な手捌きでメイド服を着せられた。


どっからか引っ張り出してきた少し埃の被った姿見に亜麻色のウィッグに一般的なあまり遊び心のないロングスカ―トのメイド服を着込む愁の姿があり、女子も男子も可愛いと一緒になって一斉にカメラで写真を撮ろうとスマホを出したが一目散に愁は教室から抜け出した。


メイド服を着た状態で逃げ出した愁は息を切らし、昇降口隣のベンチに座って自販機で買ったコ―ヒ―を飲む。


(千夏を許すまじ)


「はぁはぁ、ようやく見つけたわ。すごく探したのよ? 淺川くん」


綺麗に長い金髪を後ろで縛り、執事服を着た男装状態のリ―シェが座る愁の前に立っている。


「リ―シェ、悪い。勝手に抜け出して」


「謝る必要なんてない。その格好をするのが嫌なんでしょ? なら私が代わりにみんなに言うわ」


「いや、問題ない。みんながやるのに俺だけわがまま言うのは違うからな。それにきっとこれは俺が昔の自分を受け入れていないせいだ」


「昔の自分?」


「なんでもない。さて、戻るか。あ、でも、みんなには写真撮るなって言っておかないとな」


リ―シェは階段を上がる愁の後ろ姿が少し悲しそうな感じに思えた。


普通に愁が教室へ戻るとクラスメイト達が謝ってきたが、別に気にしていないと愁は許した。


やれやれと他人事みたいに肩を竦め、愁の肩に手を置きながら呟いた千夏にイラッときた愁がこめかみをぐりぐりと拳で突く。


「そうそう、みんな気にしすぎだよ~。痛ぁっ!」


「お前は少しくらい気にしろ、千夏」


「そんなことより愁は今年のミス煌凌にでるの?」


ミス煌凌は自薦他薦問わず男女別で最も綺麗で煌凌の品格に沿った人物かを決める煌凌流のミスコンで、去年の優勝者は城ケ峯先輩だが今年に至っては、麗奈の出場が決まっているためこの二人の一騎打ちになると予想されている。


基本は他薦に関しても本人の意思を尊重するため、本人の承諾が必須となっている。


「なんで俺が出るんだよ」


「リ―シェちゃんは?」


「私は出ないわ。興味無いし」


「じゃあ、今年は城ケ峯先輩と麗奈ちゃんの一騎打ちかぁ」


「ふぅん、麗奈が……そのミス煌凌はいつまで申し込めるの?」


「えっ、自薦は今週末で他薦は初日の昼過ぎまでだけど……」


「出るのか? リ―シェ」


「か、勘違いしないで、あくまで参考までに聞こうと思ってるだけよ」


「ま、出場したらリ―シェが勝つかもな。普通に綺麗だし」


「えっ?」


「ん?」


「な、なんでもない。早く準備終わらせましょう」


愁の漏れ出た心の声に関してはリ―シェ本人にしか聞こえておらず、愁も口に出していないと思っているため、リ―シェ以外知る由もない。




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