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14.好きな楽器

愁とリ―シェ、麗奈の三人しかいない生徒会室で出し物の承認作業をしているとそれをサボっている愁が部屋の隅で珍しく落ち込んでいる。


二人がどれだけ声をかけても愁は反応せず、隅の方に座り込みブツブツと呟いていた。


(こんなことになるなら無理してでも来るべきだったか……)


「愁くん、振られてからってそんなに落ち込まなくても……私が慰めてあげましょうか?」


「振られてねぇし告ってもねぇよ」


「そうなの? ぎょ、業務に支障をきたすくらい傷ついてるなら少しは話を聞いてあげるわ。淺川くん」


「いやだから振られてないから……」


「振られてないんですか? 愁くん」


(この……学校じゃなかったらしばいてるぞ。くっそ)


そう言いながら麗奈は残念そうな顔で業務を続ける。


「なんで俺が振られてないだけで残念そうにするんだよ、お前は」


「その方が面白いかなぁって」


「人の不幸を面白がるな」


「それで淺川くんはどうして私達が仕事してるのに落ち込んでいるの?」


「うん、すっごく毒があるな」


これだよこれと言いながら愁に代わって麗奈が愁達のクラスの提出した出し物の内容を指さしている。


「メイドand執事カフェがどうしたの?」


「千夏に聞いたら性別逆転でやるって聞いたからさ。しかも決めた日、俺風邪でいなかったから……」


「そういえばそうだったわね。でもいいじゃない。でも淺川くん、メイド服似合うと思うわよ。そ、それに私は知らない人にあまり自分の肌見せたくないし」


「まぁ、リ―シェの言い分は確かに。女子も極力見せたくはないよな」


(考えが浅かったか……女子だって肌の露出は当然嫌に決まってる……)


リ―シェの意見に納得した愁は、仕方ないかと諦めて自分の席へ座って、承認作業を麗奈とリ―シェから半分ずつ貰い始めた。


「愁くん、そういえば忘れてたけど今回の煌凌祭ではバイオリンしないんですか?」


手を止めた麗奈がバイオリンを弾く真似をしながら愁へ尋ねる。


「淺川くん、バイオリン弾けるの?」


「ん、まぁ、それなりにかな」


「能ある鷹は爪を隠すってか? 愁くん、謙遜は時に挑発になりうると覚えた方がいいですよ。リ―シェさん、愁くんの演奏は本当に素晴らしいですよ。実際、今もやっていますよね? 練習」


「……バイオリン自体は好きだからな」


「あ、淺川くんが良ければ私も聞いてみたい、演奏」


「ぅ……考えとく」


「愁くん、個人の出し物については来週末の放課後までだからちゃんとそれまでに出してくださいね?」


「分かってるよ」


「リ―シェさんは得意な楽器とかありますか? 好きな楽器でもいいですよ」


「そうね……私は、エレキギタ―かしら」


「リ―シェがギタ―……」


愁はエレキギタ―を持ちながらリ―シェがヘドバンをかます姿が脳内に流れ込み、吹き出すとそれを見ていたリ―シェが無防備な脇腹に肘打ちした。


「なんかムカつく」


「ぅごっ」


「それならリ―シェさんもギタ―の披露どうですか?」


「私は趣味程度に弾いてるだけだから別に披露する程のものじゃないわ。それに私、あまりみんなによく思われてないから下手に出たら余計に距離を置かれるかもしれないからやめておくわ」


少しリ―シェが落ち込んでいるように起き上がった愁には感じた。


「そうですか。見てみたかったのですが無理強いはできませんからね」


「期待に応えれなくてごめんなさい」


「いえ、私が少し考え無しに言ってしまいました。ごめんなさい」


「仲良くしてるところ悪いけど、麗奈」


「なんですか? 愁くん。今、リ―シェさんと仲を深めようとしていた所なんですが……」


「なんか今呼び出されていたぞ、麗奈を」


「むっ、仕方ない。愁くん、リ―シェさん、一緒に下校したいので少し待ってていただけますか?」


「ん、分かった」


麗奈が生徒会室から出てすぐ、愁の隣で座っていたリ―シェが疑問符を頭上に浮かべた状態で呟いた。


「私も一緒でいいの?」


「あいつがそうしたいって言ってるからいいんじゃないか? リ―シェがいいならだけど」


「い、一緒に下校するわ。淺川くんが麗奈に何かしそうだし」


「しねぇよ? なんか最近当たり強くない?」


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