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護誓散華  作者: くじゃく
人間と邪祟
209/220

番外編 あなたがいることで

2025年5月30日

肖子涵の誕生日の漫画の元となった書き下ろし小噺です。誕生日の漫画はX、ブルスカ、クロスフォリオにて公開中です。

 自分の生まれた日が嫌いだった。邪祟の血を引いている自分が嫌いだった。

 兄を目の前で見殺しにしてしまった自分が嫌いだった。愛しい人を護れなかった自分が嫌いだった。

 嫌いだった。嫌いだった。嫌いだった。死にたくなって、消えたくなって、赦されるものではないと、自分に枷をつけて痛めつけた。

 ──けれど、絶望には希望が付き添うとはこのことで。

 肖子涵の目の前に白く、自分よりも小さい手が差し伸ばされる。見上げれば愛しいあの人が立っている。

 澄んだ水のような心地のいい声色が自分を呼ぶ。字ではなく、本当の名前を呼ぶ。

 肖子涵は手をそっと握る。

 「君の居場所は私だ」

 眩い光の中で彼は笑う。

 「愛してるよ」

 握った手が自分を引っ張る。

 「今までも、これからも」

 自分につけた枷が音を立てて崩れていく。周りの黒が消えていく。

 「肖寧」

 今までの後悔や苦痛が全て消えていく。骸たちが崩れていく。

 (ああ、そうだ──)

 目の前の、自分より低い彼はいつものように笑う。

 (あなたのその笑顔が好きで)

 握ってくれた手の温もりは逃げはしない。

 (あなたのその声が大好きで)

 一度離れて、背中に両手をまわされる。

 (あなたの)

 肖子涵も彼の頭と腰に手をまわす。

 (存在が、)

 首元に顔を埋めて、儚い彼の匂いが鼻を掠める。

 (愛とは簡単に呼べないぐらい、愛していて)

 「君は生きていい人だよ」

 「どうか、私のために生きて」

 「君がいることで、私はここにいられるから」

 背中を撫でてくれるその手の温もりは消えない。愛を教えてくれる匂いも消えない。優しい薄茶も、声色も、自分にだけ見せてくれる甘い笑みも、全て、全て、全て。

 「肖寧」

 ──またあなたは俺の名前を呼ぶ。

 ──俺も、あなたの名前を呼んでいい?

 「いいよ」

 「私は君に呼ばれるのが、何よりも好きなんだ」

 「君にだけ呼ばれたいんだもん」

 肖子涵は彼の首元から顔を離して、額同士をつける。

 「──宁巴」

 

 五月の儚い日。

 自分の誕生が好きだ。

 あなたに生きてほしいと願ってくれたから。

 

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