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第6話 スタンビート 前編


「どうしちゃったんですか?」


 朝食を取りに宿の食堂にゆくと、ミサが悲鳴のような声をあげた。


「ええと……」


「昨日、私が買ってきたばかりの服ですよ。どうしたらそんな風になっちゃうんですか」


 昨日の西の森で、服の両袖は無くなり、全体的にボロボロになっていた。最初のオークとの近接戦の結果だ。ただの町民の服ではあっという間に傷んでしまう。


「怪我はありませんか」


 ミサが心配そうにガイアをチェックした。


「大丈夫。体は頑丈だから」


「もう、そんなことを言って、無理しちゃだめですよ!」


「うん」


 ガイアは朝食のパンを頬張りながらうなづいた。


「でも、どうしよう……」


「何が?」


「ガイアさん、もうお金が残り少ないんですよね。新しい服なんて買えないじゃないですか」


「それなら大丈夫。ほら、お金はあるから」


 ガイアは金貨の詰まった革袋を見せた。


「そんなにたくさん! どうしたんですか」


「魔物を倒した報奨金だよ」


「だから服がボロボロになったんですね」


「うん」


「もう、ガイアさんったら、本当にむちゃなんだから――」


「それより、新しい服がほしい」


「はいはい。また買ってきますよ」


「いや、今度は自分で買うから、店を教えてほしい」


「分かりました」


 結局、ミサは店まで付いてきた。


 今度は少し高いが冒険者用の耐久性が高い服を買った。


 帰りにガイアは、お礼にと屋台で甘い菓子をたくさんミサに買ってあげた。


「ええ――。本当にいいんですか?」


 ミサは大喜びした。


「あれ、でもこんなに甘いお菓子を買ってあげたら、後で虫歯になるとか言って、お父さんに叱られないかな?」


「お父さん?」


「宿のご主人だよ」


 ミサの顔が曇った。


 あれっと、ガイアは思った。ミサは宿に住んでいたので、てっきり宿の主人が父親だと思いこんでいた。


「違うの?」


「はい」


「そうか。ごめん」


 それ以上は訊いてはいけないような雰囲気だったのでガイアは話題を変えた。


 それから数日間はガイアは西の森に通い、力のコントロールを覚えた。


 白狐も西の森に行きたがった。何でも気になることがあるので調べたいとのことだった。


「それで、その気になることはわかったか?」


『いや。だが、魔物が変異して強化されて、統制も取られていることや、どうやら人間が魔物に加担しているのは間違いない。そんなことは普通ありえない。だから、野狐が裏にいると睨んでいる』


「野狐が?」


『ああ、魔物は野生の野獣と同じだ。野獣と違うのは魔力があり、力が強大だというだけだ。しかし、最近、魔物が知能的になり、しかも強化されて、集団で統率の取れた行動をしている。そんなことは普通はありえない。ただしワレと同じくらいの力を持つ者なら可能だ』


「だから野狐が裏にいるというわけだな」


『そうだ。しかも、やっかいなことに野狐は人間に憑依している。人間も仲間に取り込んでいるはずだ』


「まさか、ギルド長が野狐なのか?」


『それはない。それなら一目見ればすぐにわかる。ただ、野狐となんらかの関係があるかもしれない』


「そうか」


『それにあのサラという女が追っている相手が野狐ならば、一緒にいれば、いずれ野狐の元にたどりつくかもしれない』


「そうだな」


 ガイアの腹が鳴った。


『もう腹が減ったのか』


「お前に憑依されてから、すごく腹が減るようになった」


『まあ、消費するエネルギーが普通の人間とは違うからな』


「少し早いが宿にもどるか」


『飯にしたいのだな』


「そうだ」


 宿に戻ると主人が心配そうな顔をして出てきた。


「あのう、ミサは一緒ではなかったのでしょうか」


「いや」


「帰りが遅いので、てっきりどこかで合流して一緒にいるのかと思いました」


「俺は町の外で魔物を狩っているんだから合流することなんてないよ」


「それが……」


「どうした?」


「ミサは肉の薬味にするハーブを摘みに町の外に行ったのです」


「えっ?」


「ちょうどハーブを切らしてしまい。ガイアさんのためにと夕食の支度に間に合うように摘んでくると言って出ていったきりなんです」


「なんだって!」


「ただ、町の外と言ってもハーブを摘む場所は本来は魔物が出るようなところではないのですが……」


 すると警鐘の音が響いて来た。


「これは?」


 宿の主人の顔が青くなった。


「スタンビート!」


「えっ?」


「スタンビートが発生したという警鐘です」


 ガイアはそれを聞くとギルドに向けて駆け出した。


 ギルドにつくと中は騒然としていた。


「どうなっている?」


「西の森の方から魔物が町を目指して暴走している」


「数は?」


「分からないが、すごい数らしい」


「対応はどうなっている?」


「Cランク以上の冒険者と兵士が向かっている。だがあいにく、今、この町にいるCランク以上の冒険者はジョンのパーテイとギルド長だけだ」


 ガイアはそれを聞くとギルドを出ようとした。


「おい、どこにゆく」


「町を守りにゆく」


「お前は新参者のEランクだろ。無理だ」


 その言葉を無視してガイアは駆け出した。





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