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第4話 西の森


「なあ、力はどうやって発動する」


『思うだけでいい』


「思うだけ?」


『ゴブリンを焼き尽くした時のことを思い出せ。お前は火炎でゴブリンを焼くことをイメージしただけで殲滅したろう』


「ああ」


『それにお前の体はワレの力で強化されているから、そのままで神話級の武器と防具を装備しているのと同じだ』


「とんでも無い力だな」


『さっそく来たぞ』


 オークが数体、木々の間から出てきた。だが、昔故郷で見たものとは異なり、やけにデカく強そうだった。


「この辺じゃあ、みんなあんななのか?」


『いや。おそらく違う。何かがおかしい。もしかすると……』


 オークが奇声を発して向かってきた。


「おい、どうしたらいい」


 棍棒を振り下ろしてきた。


 とっさにガイアは左腕を上げて受けた。


 ちょっとした木の幹くらいの太さの棍棒が粉々になった。


 ガイアは右拳でオークに突きを入れた。


 オークはくの字になり、後に飛んだ。


 残りの2体のオークの動きが止まった。


 ガイアを警戒するように見ている。


「魔法は何が使える」


『全てだ。イメージすればこれまでに無いような魔法も使える』


「なんだよそれ、チートすぎるだろう」


 ガイアはとっさにオークの自重が100倍になり、地にめり込むように潰れる姿をイメージした。


「グラビテ」


 不思議な言葉が浮かんだのでそれを唱えた。


 ズズズズドーン!


 オークは潰れてスライムのようになり、そして地中に消えた。


「な、なんだこれ」


 自分でやったにもかかわらず、その効果の凄まじさにガイアは驚いた。


 オークの姿はもうどこにも無かった。


『初めてにしてはやるじゃないか』


「これで本当に6割の力なのか?」


『いいや。まだ1割も出していない』



 その後、ガイアはさらに森の奥に進み、いろいろ試してみた。


 近接格闘で無敵なのは分かったが、服は普通の安物なので、攻撃を受ければガイアは無傷だが服は傷む。さらに返り血を浴びれば汚れる。金がなくて今着ている服が一帳羅いっちょうらなので近接格闘をするのは止めた。


 代わりに中・遠距離からの各種の魔法攻撃を試した。


 雷撃、火炎、水、氷、土、風、いかなる属性の魔法も使えた。


 さらに毒や混乱、同士討ちなどの魔法もイメージするだけで使えた。


 森の中で一通り力の使いかたを学んだ。


「ふう。そうとうな数を殺ったな」


『ああ』


「これならかなりの金になる」


『討伐証明はどうなった?』


「あああああああ」


 ガイアは強力な魔法ばかりを試していたので、倒した魔物は粉々になったり、焼失したり、大地に飲み込まれ、何も残っていなかった。


「失敗した――」


『まあ、よい。お前が討伐した魔物を全部持っていったら、ギルドで大騒ぎになるところだったぞ。何か適当な魔物を一匹、力を加減して倒して討伐証明を持って帰れ』


 ガイアは魔物を大きく損傷しないで倒す方法を考えた。


(やっぱり氷結系の魔法を力を制限してかけて凍らせるのがいいかな)


 ただあまり凍らせると触れたとたんに粉雪のようになってしまう。


(そうだ氷の槍で急所をひと刺しするのがいいかな)


 そんなことを考えていると魔物とは違う気配があるのを感じた。


 森の出口に付近だ。


(歩いてゆくのは面倒だな)


 ガイアは空を飛ぶことをイメージした。


 すると体が中に浮いた。


(本当に飛べるのか!)


 そのまま森の上空に行くと、気配のする方向へとひとっ飛びした。


 思った通り人だった。


(こんな時間に何をしているのだ?)


 ガイアは力を使う練習に夢中になり、日が暮れるのも気が付かなかった。基本的に魔物が生息する森に人間は夜間は立ち入らない。魔物は夜でも目がきくし、鼻で匂いも感じ、暗闇で見えない人間と違い自由に動ける。しかも夜間に強くなる魔物もいる。光の無い夜の森では人間は圧倒的に不利なので、誰も立ち入ることは無い。


 上空から見ると、5人くらいの男たちが女を運んでいた。


「なあ、もうこの辺でいいだろう」


「これ以上奥に入ると俺たちも危ない」


「よし、下ろすか」


 縛った女を男たちは地面に投げるように放り出した。


「さるぐつわを取れ」


 口に噛まされた布を取られると女が「貴様ら、ただで済むと思うなよ」と言った。


「強がりもそこまでにしろ、手足を縛られて、武器も無く、ここに放置されたらどうなるかわかるだろう」


「朝までには骨も残っていないだろう」


「おのれ」


 女は手足を縛っている縄を解こうとしたが出来なかった。


「じゃあな」


 男たちは去って行こうとした。


 だが、男たちは数歩進んだところで足を止めた。


 暗闇に光る赤い目が睨んでいたからだ。


「ひ、ひぃいい、出た――」


「慌てるな、まだ森の入口だ。大した魔物ではない。どうせオーク程度だろう。魔道士!」


「もう詠唱は唱え始めています」


「よし、剣を抜け」


 全員が戦闘態勢になった。


 赤い目はそれでもまだ動かない。じっと様子を伺っているようだった。


「詠唱が終わりました。ファイヤー!」


 後列にいる魔道士の前に赤い魔法陣が出現し、火炎魔法が赤い目に向かって放たれた。


「やったか?」


「わからん。だが手応えはあった」


「よし、死体を確認する。魔石や肉が手に入ればラッキーだな」


 剣を持った前衛の男たちが前進して、焼け焦げた木々の間を慎重に調べる。


「いないぞ」


 前方の男が振り返ってそう言った瞬間、悲鳴が轟いた。


 後ろにいた魔道士が真っ二つになっていたからだ。


 その横には鋭い牙を持った巨獣がいた。


「サーベルタイガー!?」


 文字通りサーベルのような鋭い牙をもった虎系の魔物だ。


「西の森にサーベルタイガーがいるなんて聞いたことないぞ」


「逃げろ。あれはAランク冒険者でも倒すことが難しい相手だ」


 男たちはバラバラに駆け出した。


 だがサーベルタイガーは一瞬で追いつき、次々と牙を立てた。


 十数秒後には、森に静寂が再び訪れた。


 サーベルタイガーは血に染まった牙を剥き、女の方にゆっくりと近づいていく。


「い、いやああああああああああああああ」


 女は恐怖で顔をひきつらせていた。


 ガイアはサーベルタイガーの心臓を狙って氷結の矢を放った。


 ズドン!


 地響きを立てて、サーベルタイガーが倒れた。


 ガイアは地上に降りた。




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