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「セドリック様っ!!」


 池の中に吸い込まれた小さな体を追いかけるように飛び込んだ。

 ぶくぶくと口から溢れ出す空気を追って、小さな体に手を伸ばす。

 ひらひらと視界にチラつくエプロンのフリルが邪魔で仕方がない。やっぱり私にはフリルは似合わない。エプロンはシンプルなものにしようと決めた。

 不思議と水音も聞こえず、無音。まるで空に浮かんでいるみたいだと思った。

 こんな時にそんなことを考えていたのか、とまた家令に言われそうだと現実逃避しながら、唯一わかる感触、なんとか掴んだ小さな体から手を離さないように、水面へと向かった。


「セドリック様」

「ニーナ!」


 顔を出すと、見慣れた面々が叫んでいる。

 止めていた空気を一気に取り入れようと勝手に身体が動き出す。


「ゴホッゴホッ」


 うまく呼吸ができない。身体が重い。

 誰かが、腕を引っ張り地上に引き上げてくれた。


「早く! 毛布を!」

「しっかりしろ!!」


 遠くからいろんな声が聞こえる。

 震える体。ポタポタとしたたる水滴。

 呼吸がうまくできない。苦しい。

 喉が痙攣したように引きつって痛い。

 

「せ、セドリック様を、お願いします……」


 なんとかその言葉を絞り出した後、私は気を失ったらしい。


 らしいというのは、それから3日3晩、高熱にうなされていた私は、その時の記憶があいまいだったからだ。


 そして、その寝込んでいる間に見た”不思議な夢”もまた、あいまいだった。


 自分に瓜二うりふたつの人物が話す、乙女ゲーム、破滅フラグ……聞いたことのない様々な言葉が、雨のように私の頭の中にポツポツと落ちてきた。

 たしかだったのは、このままではバットエンドと言う悪い未来が待っているということだけ。



「・・・まぁ、なんとかなるでしょ!」




 こうして、なんとも間抜けなキッカケではあったけれど、私は”破滅フラグ”というものを回避することにした。

 すべてがあいまいな記憶のままで。


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