転生Ⅱ
木って、お前……。
ていうかこれ、転生ってやつだよね? なんか乱造されてるラノベジャンルのやつだ。
めっちゃ流行ってたよね。
そういえば、あの本の続きは借りられず終いだったなぁ……。
――って、そんなことを悠長に考えている場合じゃなかったよ!!
木だよ、木!!
よりにもよってなんで木なの!?
貴族の息子とか娘とか、平民だけど魔法の才能満ち溢れてるだとか、ゲームはやったことないからよくわからないけど、なんかそういうのに似た世界の悪役ヒロインとか、そういうのが普通なんじゃないの!?
現実なんてこんなもんかよお!
この、木が、私の現実!?
意識があるのが余計に残酷すぎる。
あああああああああどうして木なのぉよおおおお!!!
――あ!?
私は思い当たるフシがあったと思い出した。
みんなも思い出せるかな?
寝る前です。
私は願いました。
「今度生まれてくるときは、あのご神木みたいに、強くて丈夫で長生きできる体で生まれたいなぁ……」
あああああああああああああああ!!!
私の願いだこれええええ!!!?
叶えてくれたんだね神様ありがとう!!
でもね、言葉通りに木にしてほしかったわけじゃないのよおおおおおお!!!
転生先が蜘蛛とかムカデとかのお話読んで、ひっどいなって思ってたけど、あれまだずっとマシだよ! 動けるもん!!
私なんて木だよ。動けないし喋れないし。せいぜい、さっきみたいに魔法の的にされるのが関の山!
意識があるんだからせめて何か無いの? 転生作品お約束のスキルとかステータスとか、そういう自分の能力が表になってるやつ!!
いいや。ものは試しだ、やってみよう。
ステータス!!
実際には何も起こっていないけれど、全力で叫ぶ気分で念じた。
すると、視界に自分の情報が記された表が出てきた。
よし良し好しヨシッ! なんか急にらしくなってきたじゃないの!
どれどれ――。
名前、無し! 『』だ。誰かに付けてもらうのかな?
種族名、マジックターゲットウッド……。
魔法の、的の、木?
そのまんまじゃないの!
種族名が酷すぎる件について、異議申し立てを行います!! 誰も聞きやしないので即時棄却ですけどね!!
はぁ〜。えっとぉ、これが細かなステータスの数値かな?
樹齢15年。私の享年より2個下だね……。両親が居なくなった年だ。
……思い出すのやめよう。気が滅入るし。
えっと、レベル1。まぁこれはね、そりゃそうねと。
HP無し。木だしね。
MP100。これはあるんだ。高いのか低いのかも分からないけど。
何だこれ。CO2、H2O、O2……。それぞれ508、502、212?
二酸化炭素、水、酸素か。全部勝手に増えたり減ったりしてるなぁ。
あ、光合成か、これ。
えぇと、あとは、Lx? なんだこれ、やたら数値が高いけど……87040? これも微妙に増えたり減ったりしてる……。
光合成してるってことは、もしかして、日光の光の強さ的な? だったら、お日様の光ってすごく強いんだなぁ。
成長率、87%。高いと思うけど、具体的にどう成長してるかわからないし、体感も無い……謎数値だ。
力、0。木だしね。
……へへへ。
木だしねってなんでも理由になるの、なんかちょっと笑える。状況は全く笑えないけど。
物理防御、255 魔法防御、255。
高い? 高いのかな? 基準値がわからないから判断がつかないよ。
器用さ、敏捷性、運、0。
……。
さぁ皆さんご一緒に。
木 だ し ね !
まぁ、これでそれぞれの能力値はわかったね。
それじゃ、もう一個のお約束であるところのスキルを見てみよう。
よく『鑑定』っていうのが、ぶっ壊れとか言われてるよねぇ。私も持ってたりするのかな?
――お!!
あるじゃん、『鑑定』!
あれ、ちょっと待って。
その下にもう一個、『鑑定・解析』ってあるんだけど、何が違うの?
これは、早速『鑑定』の使い所さんってことかな?
よーし、『鑑定・解析』を『鑑定』!
えーっと――
パッシブスキル? 常に発動してるってことかな?
触れたあらゆるものを自動で解析する。
ん? よくわかんないなぁ。あ、解析済みリストってあるじゃん!
言語、ファイアーボール、ロイド=フォン=タケシタ。
ああ! だから言葉分かったんだ! 子供がちょっと会話しただけなのに……あれ? 言葉理解する直前まで別に触ってないよね? 声で揺れた空気の振動とか、かな? それなら結構すごいな。
ファイアーボールは、下級炎魔法。適正なし、使用不可。
はは、木だしね。使えたら自殺行為だよね。あーでも、火に強い木ってあったよね、仏壇に使われてるやつ……えっと――黒檀だっけ? まぁ、私は仏壇なんて見たこともないし、どんなのか知らないけど。
最後のは、目の前の少年!
名字が日本人風だ! へへ、タケシタて。どう見ても外国人な見た目でタケシタ……ふふふ。
でもお父さんは黒髪だわ、今気づいた。お母さんの血が濃いねぇ。
レベル3。私より高い!?
種族、人間。
称号、異世界人の息子……異世界人!? お父さんご同輩!!? タケシタって本当に日本人なの!?
うわぁ、びっくりしたぁ……。でも、意思疎通できないし、知ってるところでなんだって話だし、この情報は保留で。
さてと、せっかくぶっ壊れスキルとやらを持ってるんだし、片っ端から鑑定してみるのが得策では?
まずは、弟のルイン君から――『鑑定』!
……あれ?
何も起きない? なんで?
うーん、『鑑定』を鑑定はできる? 試しに、『鑑定』。
あ、できた。
アクティブスキル。目に見えるものを全て詳らかにする……か。ん? ますます分からん。なんで出来ないの?
あ、これかな? 視界拡張スキルとの併用不可。
視界拡張? そういえば、木なのに視界があるのは変だよね。何か使ってるってことか。
えーっと、これがそれっぽい?
『空間把握』――生物的存在は五感六感が鋭敏になる。意識の宿る非生物は、意識に応じた疑似視界を得る。アクティブスキル。
ん? これつまり、『鑑定』、死にスキルになってるんじゃないの?
私が生物的存在にならなければ、一生『鑑定』が使えない!?
でも『鑑定』の鑑定とかはできてるのは何故?
外部に対する視界じゃないから? アクティブスキルってことはオフにできるってことだよね?
『空間把握』オフ!
真っ暗になった! さっきの親子の映像が消えちゃった。でも――
ステータスは表示されたままだ!
なるほどなるほど。つまり、外部視界に対して今の私は『鑑定』が使えないと。
自分を知ることには使える……と。
結局死にスキルみたいなものじゃん!!
ひょっとして、神様、転生させるときに手癖で『鑑定』付けたけど、木だったこと思い出して急遽『鑑定・解析』付けました? もうちょっと考えてよぉ……。
いやよそう。会ってもないし会話も何もなかった、存在するかもわ分からないものに責任を押し付けるのは不毛だ。
でも困った。庭木から生物的存在とやらにランクアップするロードマップが見えない。
魔物化かな? でもどうだろう。木の魔物って庭木からおいそれと成れるものなのかな? というか、魔物になって動き回っても、木はどこまで行っても所詮木では? こういうのの倒されたときのドロップアイテムって枝とか薪とかだって本で読んだし……。
目のように見えるのも虚であって決して目じゃないとかもよくある話。
じゃあ精霊ならどうだろう? 見た目もきっと人間っぽいし、きっと綺麗だ……綺麗でありたい。
でも結局、庭木がスタートラインなの絶望的すぎない?
詰んでる……。
転生した初っ端から詰んでる。
投了はできませんか?
無理かー。だよねー。
しかも切り倒されて腐り果てるまで数十年とか数百年とか、下手したら千年以上生き続けるとかいう。
何? 苦行? 地獄の禊ぎ的な?
あーこれそういうやつかー。親より早く死んで、主治医さん相手に姦淫してって、うん。普通に地獄案件だったね私。
転生は転生でも、いうなれば懲罰転生ってところかな?
閻魔大王様ごめんなさい。私が悪かったです。頑張って庭木やりますね、へへへ……。
こうして、私の懲罰転生、木の一生が始まるのでした。
まぁ、とりあえず出来てるのはここまでです。
続き書くかは不明です。
2023-09-06追記。続き書きました。




