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第1話 道具屋アベルに新人現る

「さあ 紅茶のお代わりをどうぞ」

「奥様の旦那様はどんな人生を歩んだのですか?」


「さあ――でも 幸せだったと思います。

だって、私の事を愛していましたから・・。

人を愛せるって(・・・・・・)――とっても 幸せな事だと思いませんか?

幸せにあふれた人生だったわけですから。

ほっほほ 少しだけのろけが過ぎてしまいましたね」


瞳から一しずくの涙が落ちた・・。


「でも 愛してもらえた私も幸せでしたよ」


「いいえ 奥様。 奥様は羨ましいですよ

90歳を超えられても旦那様を想っていらっしゃるのですから。

―――――――――――

「はぁ・・ここは・・どこだ・・」

「おい アベル 酔っぱらってんじゃねぇぞ」


目を開けると机にヨダレ

突っ伏している顔の先にはオレの好きなナッツと手には確りと木製のビールジョッキが握られていた。

ここは居酒屋だ。

俺は――そう 今日も幼馴染(おさななじみ)の錬金術師との勝負に敗れてここで飲んだくれていたんだっけ?

俺は道具屋だ。

だからポケットから毒消し草を一つ取り出すといつものように口にほおばる。

毒消し草を飲むのなら酒を飲むなと言われそうだが、語るも涙で、お酒を飲みながら朝まで話せるぐらいの積もる勝負の日々があるわけよ。

俺たち道具屋・武器屋・そして錬金術師なんかはお城にアイテムを収めている。

収めるアイテムの質・量などによって王様より褒美(ほうび)とランクと呼ばれる星を貰うんだ。

こんなやつ→「☆」

それが幼馴染の錬金術師に「ち~とばかり」及ばないわけ。

「はぁ・・ いつもどうして 勝てないんだろう・・道具屋じゃ無理かぁ!

 おやじ!金はここに置いておくぞ」

「おう また 飲みにこいよ!がははは」


俺は自分の道具屋「道具屋アベル」へ戻る。

ギルドの入り口に入りギルド受付のとなりが俺の道具屋。

お店に入って水瓶から水をたらふく飲んでベッドに転がり込む。

ギルドにお店まで完備されている便利な街なんてそうそうあるものじゃない。

普通はあっても居酒屋があるぐらいだろう。

ちなみに隣は武器屋だ。

王様は冒険者たちの事を考えているんだ。。おやすみ・・。


鳥の声で目を覚ましパンにチーズを乗せて道具屋の奥にある料理室で焼くのが俺の日課。

食事を軽く済ませるとすぐに店を開けて昨日ダンジョンで採取してきた物を並べる。


「薬草をくれないか?」

「はい 8ゴールドになります」


でも時には難しいお客もいる


「おい! 聖水を40個くれ!」

「40個ですか?勇者様 お許しください。ダンジョンに5回は潜る必要が・・」


そんな忙しいのも午前中だけ。

冒険者の人たちは午前中にアイテムを買い込むと冒険にいってしまうので

午後からは俺たちはもっぱらお城へ行き、御用聞きをしている。

ちなみに俺は午後からはお店を閉めている。なんせ 一人身なもので・・さみしいぃ~。


お城には武器屋・道具屋の俺・そして幼馴染の錬金術師のパウルが来ていた。

「王様。お呼びでしょうか?」

「ふむ お前たちには今日も仕入れを行ってきてほしいのじゃ。

収めたアイテムのレア度によって また 星をやろうではないか?

さあ ゆけ!」


帰りの道中にパウルに声をかけられる。

「お前の店、閉まっていたけど潰れたのか?」

「いいや 俺一人しかいないから店は閉めてるんだ」

「がはは オレみたいに人を雇えばいいじゃないか?

美人の売り子はいいぞぉ~。ボインからコインまでオレの好きな子を選んで働かせることが出来るんだ」


パウルは方組をすると俺の耳元にささやいてきた。

すきなこと(・・・・・) やれるかもだぜ がははは」

錬金術師のパウルのお店は売り子が多いし店も派手な作りで立派に見える。

親の代から財産を受け受け継いだお店に――パウルはイケメンで錬金レベルが8と来てやがる。

俺なんて薬草レベルが10だぞ MAXだけど上やくそうが作れるレベル。

一体この差は何なんだろうね。。


「お待ちください」

後ろからまた お城の女性に声をかけられた。

パウロは「お前の彼女が来たぜ」と言って笑って行ってしまったがこの人は道具屋の俺にいつもアイテムを頼んでくる人なんだ。

この人からの依頼を優先したために王様からの星がもらえなかったこともある。


「あの・・アベル様。上毒消し草を2つお願いします」

「上毒消し草ですか?あれは 普通の毒消し草を4つも使って一つ出来るアイテムですよ」

「あなたにしか・・頼める人がいないのです・・」

「困ってるなら 仕方がないですね」


言っては悪いがみすぼらしい姿できっと困っているに違いない。

俺は道具屋に帰るとギルドの受付のお姉さんに話しかける。

「ループさん 今日もダンジョンに採取に行ってきます」

「はい 行ってらっしゃい」


俺が行くところはダンジョン

道具屋や武器屋や錬金術師は基本的にダンジョンに潜ってアイテムを採取するんだ。

まあ 転売して稼いでるやつもいるけどそれには資金という物がいるので現実的ではない。

俺は道具屋が唯一(ゆいいつ)店で取り扱っているお鍋のフタ(、、、、、)ヒノキの棒(、、、、、)を装備してダンジョンへ潜った。


ダンジョン1階層は敵が弱い。

進んでいくと 昆虫系の魔物のカメックスが3体現れたぞ。

「くらえ! ヒノキの棒!!!」

ぷしゅ~

このカメックスは殴り倒すと異臭を放つのが難点。

「くぅ~ 臭い」

ただ 攻撃といってもそれしかしてこないのだけど。。

「さてとドロップはっと 薬草かぁ~」

モンスターを倒すと アイテムをドロップできる。

武器屋ならこん棒とかヒノキの棒とか――道具屋なら薬草とか毒消し草とか

その店の特徴に由来(ゆらい)するアイテムをドロップすることになる。

錬金術師は鉱石とか拾うらしいけど アイツらはチート能力持ちだから黒い石を光る石に変えたりできるみたいでズルいの一言の職業だ。


「よっしゃ! 毒消し草ゲットだ」

しばらく探索を進めて 薬草7つに毒消し草が4つになった。

俺は薬草を一つ捨てて代わりに毒消し草を入手した。

このダンジョンで持つことのできるアイテム数は10個まで、頼まれていた上毒消し草を作るとなるとアイテム整理をしなくちゃいけない訳だ。

「今日は帰るか・・」


カメックスを倒し疲れて帰宅をすると道具屋をノックする音がする。

もう店は閉めているけど街の外から来た冒険者はそれを知らないからたまにこうしてノックしてくるんだよな。

「はいはい いまね・・え!」


ドアを開けた先にいたのは 金髪にショールを被った色っぽい女性だった。

ずっと眺めていたい。。

疲れを忘れるほどの魅力の持ち主だ。

「あの・・実は こちらで雇っていただきたいのです。何でもします。お願いします」

以前 錬金術師のパウルの言葉を思い出す。

(「すきなこと(・・・・・) やれるかもだぜ がははは」)

生唾ご「ゴクリ」と飲み込んだ。

前進が熱くなって照れ臭い。

まだ 雇うなんて言っていないのにあんなうるんだ瞳で見つめられたら――潤った唇で・・されたら。

もう 我慢できないじゃないか!

「あはは 奇遇ですね。俺はアベルっていいます。

実は一人で店をやっているので午後からは店を閉めていたのですが

働いてくれる人を探して午後からも店を開けようと思っていたんですよ

あなたなら大歓迎ですよ」


「私はルビスーー猫耳族です。猫耳族の私を雇ってくださるなんて まぁ~なんて素敵なんでしょう」

ルビスは神に祈る様に手を合わせて俺に祈りをささげた。

するとルビスの後ろから満面の笑顔の何かが飛び出した。

「あんがとう! よろしくねぇ ブイ!」

猫だ。

後ろからは猫耳族の少女が現れた。


それは頭の回転のよくないアベルにとってすぐに理解できることではなかった。

ルビスはしつけのつもりで少女に「きちんとご挨拶しなさい」というと少女は照れ臭そうに「ベル」と名乗った。

ルビスはアベルに「|この子もよろしくお願いします《・・・・・・・・・・・》」というとギュっと握手をしたので赤面してしまったアベルは思わず――うなずいてしまった。


ちぇ! 子持ちだったのか・・。

でも ルビスさん・・いいや ルビスってふあっとした感じでいいかも。

「あら アベルさんから匂いが・・」

「ああ カメックスですよ」

「お風呂沸かしますね ふふふ」

「え! いいんですか?」

「ベルもぉ~手伝う」


こうして新しい道具屋アベルがスタートするのだが、ギルドの改装に伴って武器屋と争う事になろうとは・・・。

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