─才能の使徒─
「才能って、とっても綺麗なものだと思わないかい?」
『…』
「そうだよね!そう思うよね!」
『…人殺し』
「人殺し?それは君の事だろう?」
『…は?』
「君はたくさんの人を見殺しにして、ひとりだけ生きのびた」
『…ちが』
「違くないよ。ほら、積まれた死骸が見えるだろ?」
『…違…う』
「…いい加減認めろよ」
「人殺しの【ウォリアー】さん」
「はぁ…っ…はぁ…っ…!」
薄暗い通路。石の冷たさを直に感じる。彼女は、後ろに感じる気配から、一心不乱に逃げ続けている。
「だれっ…!だれなのぉ…!」
曲がった先は行き止まりだった。絶体絶命だ。彼女は目を瞑り、気配と葛藤しながら、壁を伝いへたりこんだ。
「いや…っ」
もう無理だと悟った時、彼は舞い降りた。
黒髪の男は、気配を迷うことなくなぎ倒し、彼女を救って見せた。
ありがとう、と彼女が口にすると、彼は唇を歪ませてクスッと笑った。
途端に意識が朦朧としてくる。人は恐怖から解放され、安堵を手にすると、一気に疲れが襲ってくるのだ。
パタッと冷たい石を枕に寝転ぶ。それを見た彼は、黒い髪をなびかせ、慌てて彼女を抱き上げた。
「きっと、この世界は終わらないだろう。
つまり、この人生も終われないだろう。
結局、誰も救えないだろう。
そして、絶望で塗り固められるだろう。
その未来が本当だと、俺は信じて疑わない」
その言葉を最後に、彼女の意識は途絶えた。
京極巳波と申します。
初投稿です。よろしくお願いします。
暗くありません。元は元気です。いえーい。
私は人間です。機会じゃないです。
キカイジャナイデス。カクコトナイデス。