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月に恋する そよいだススキ

作者: 雪 里 枝
掲載日:2020/01/15


 とある平野に、一株のススキがおりました。


 儚くて物憂げなススキは、とても魅力的でした。

 秋山を彩る目映い紅葉も、幽玄なイチョウも、みんなススキのことを褒め称えました。


 けれどもススキは、自分のことが好きではありませんでした。


 風にそよぐほど頼りない自分の姿に、いつも肩を落としていました。



 そんなススキですが、恋をしました。


 お相手は、お空に浮かぶ、お月様です。


 美しい撫子も、凛々しい桔梗も‥‥みんながみんな、月とススキはお似合いだと言いました。



 けれどもススキは、自分に自信がありません。


 遠くに浮かぶお月様を、いつもそっと見上げることしかできませんでした‥‥




 お月様もススキのことを、憎からず想っていました。


 けれどもお月様は恥ずかしがり屋でした。


 ススキのことを雲に隠れて、そっと見つめるしかできませんでした。



 お月様もそんな自分に自信がありませんでした‥‥




 時は巡り、十五夜がやって来ました。


 けれども、いつもの十五夜とは違いました。お月様がその身を隠せる、たなびく雲がおりません。


 満月で浮かぶお月様は、恥ずかしさの余り泣きそうです。



 なので、ススキは頑張りました。空いっぱいに、自分の綿毛を飛ばしました。


 それは雲と比べれば、とても薄いヴェールでした。


 それでもお月様は、自分の為に贈ってくれた、ススキのヴェールが嬉しくて‥‥


 綿毛の向こうの月明かりは、ちょっぴり赤く見えました。




 そして少しずつ、冬の足音が聞こえてきました。


 けれどもこの頃、月とススキの間には、いつも厚い雲が覆っています。


 ススキがよけて欲しいとお願いしても、雲は「ごめんなさい‥自分の力じゃ動けないの」そう言うばかりです。



 ススキは冬、魂を大地の下に移し、眠らないといけません。


 けれどもススキは待ちました。

 眠る前にせめて一目‥‥ あと少し、あともう少しと待ちました‥‥



 雲の切れ間が広がった頃‥‥もうすっかり雪が積もっていました。



 ススキは少しだけ待ち過ぎました。



 お月様は心が乱れ‥‥でも、それからまっすぐ‥‥ 初めてまっすぐ、ススキを見つめました。


 お月様の柔らかい光に包まれ、ススキはゆっくりと、天に召されて行きました‥‥




 それからしばらくして‥‥お月様の周りに、小さな星が回っているのを誰かが見つけました。


 あれはススキの生まれ変わりなんじゃ‥‥ 誰もがそう、心に浮かびました。



 けれども恥ずかしがり屋のお月様は、それを教えてはくれません。


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― 新着の感想 ―
[一言] 両片思い? ほのぼのしながら読ませていただきましたー。
2023/04/28 16:45 退会済み
管理
[一言] あなたは何よりも美しく、あなたは誰よりも遠い(物理)なのですね。お互いに想い合っているはずなのに、隣にいられない切なさよ。 生まれ変わったススキとお月さまは、きっと幸せに暮らしていくことで…
[一言] 月とススキは素敵な組み合わせですよね。 むしろ十五夜と言えば月とススキ、と栗と団子()。 花札にまでその組み合わせで描かれているほどですもの。 月に恋したススキは枯れてしまいましたけど、彼…
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