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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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人間主義

夜の日本玄関口である成田国際空港は、この時間でも騒然としていた。


その一角、アメリカからの到着ロビーで姿を現した


御堂大智(みどうだいち)ことミッドの姿だが、、、


全員が、思わず押し黙る。


始めに気を使いながらも高いソプラノ声で話しかけたのは、妻の舞だった。


「ミッド、お、お帰りなさい。でも、どうしたの?」


ミッドは久しぶり俺達に合うのが楽しみだったのだろうが、思わぬ反応に、自分で納得して


「ああ、これね」


っと、自分のお腹を摩りながら言う。


そう、小柄で小動物系だった小さな高性能CPUミッドの体重は優に100キロを超しているようだった。


パンパンに膨れ上がった、顔は汗だくになっていて指も一回り、、いや二回りは太くなっているようだった。


「いやぁ~向こうはさぁ~、料理のボリュームとカロリーが日本と全く違うんだよ。それに僕もそっちに気にしている余裕が無くてさぁ~こんな、妊婦さんみたいになっちゃたよ。」


「いやいや、いくら何でもそりゃ~やばいぜよ」


ミッドとは逆に、ダイエットに成功したホトが言うとなぜか説得力がある。


「お帰り、ミッド。お疲れ様だったな。」


皆がミッドの『見た目』に驚いている中 俺は黙って、右手をミッドに出す。


ミッドは、汗ばんだ右手で俺の手を握り返してくる。


「ありがとう将軍。」


そして、チームの皆はハッと我に帰り


武者修行を終えて帰国した、親友の凱旋を祝いあった。


「ミッド、お疲れ。来週からは俺が入れ替わりで行くから、いろいろ教えてくれよ」


銀縁の眼鏡の中央部分を左手薬指で支えながら、タカヒコが声をかけハグし合う。


身長180センチのタカヒコと165センチほどのミッドが抱き合う姿は中々、見ごたえあるがタカヒコは外見で人を差別する人間ではない。


司法という仕事柄、どんな差別も彼にとっては罪悪であり、違法なのだ。


どんな人間でも同じように接するのは、そう簡単なことでは無いが、彼はそんなことは当の昔に卒業していた。


こういうところが、妻の舞からすると【武将化】していると言われる所以の一端かもしれない。


すると美しい声と香りが漂う空気に乗って、ミッドの周囲を包み込む。


「お久しぶりですわ、ミッドさん。」


膝をお軽く折り、右手を出すだけの仕草が華麗で品格を表現する。

COOBデザイン株式会社今はまだCEOの候葺縁(こうぶきゆかり)さんだ。


手を握り締ながら


「帝城高校の卒業式依頼ですかね?相変わらずお綺麗ですね、、、そ、そうだホトと婚約されたそうで、おめでとうございます。」


縁さんは大人の余裕もあってか、ニコリと微笑み


「ありがとうございます。御堂(みどう)さん」


ミッドは、体格のせいなのか、緊張しているのか額にも汗を掻きながら


「僕の事はミッドで、構いませんよ。候葺さん」


スッとバッグからハンカチを手の空いてる左手で取り出して、優しく自然な振る舞いで、ミッドの額を噴く日本経済界の女王の姿は優しさと威厳に包まれていた。


「それでは、私のことも縁と呼んで下さいましな、ミッド。」


親友の婚約者とは言え、これだけ美しい女性から自分の額の汗を拭いてもらうという行為に驚きながら


「わかりました。でも僕らより年長者ですから縁さんと呼ばせてもらいますね。」


「ええ、よろしくてよ。ミッド。」


まだ呼ばれ慣れてない、ミッドは大人の女性、、、それもこれだけ美しい女性はアメリカ広しと言えど、そういるものではない。


ドキドキしてしまうのは仕方ない事であろう


ミッドの荷物を皆で、手分けして持ちその場から離れようとするところで


妻の舞が、声をかける。


「ちょっとみんな待ってもらえる。」


「どうしたんだ?」


横にいる俺が目線を横にずらして声と視線で愛する妻に問を出す。


「うん、もう一人ね帰国する人がいて、その人も もうすぐ到着ロビーから出てくると思うの」


「誰なん、、、」


俺の言葉は、自分の視覚に入ってくる姿によって納得してしまった。


ぴょんぴょん跳ね回りながら、ロビーから出てきたのは、、、、


相変わらず黄色のエナメルのバイオリンケースを右手に持ち喜びを体全部で表しながら登場するのは


帝城高校の旧友。


バイオリニストの櫻木優香さんだ。


彼女もフランスだったかな?音楽留学していたんだよな。


「舞さ~ん!!皆さんお久しぶりです。」


舞に飛び込むように抱き着く彼女は、女性としてかなり成長していたようだ。


以前はもっと、か細く儚い印象が強かったが


今の彼女は、光り輝いていた。


そしてその未来を今を彼女に与えてくれてのは、将軍こと【火吹武将】その人である。


当時、帝城高校2年の17歳の彼が2億円ものお金を用意して20歳まで生きられないと言われていた彼女の病気をアメリカで手術治療して、その後フランスへ音楽留学に渡航した帰りであったのだ。


そして、櫻木さんの後ろからは身長2メートル近くあるブロンドの青い眼をしたナイスガイにして、櫻木優香さんをフランス音楽留学に誘ったミスター。


マルガッス・シュタインさんが、大きく長い両手を振りながらロビーから出てくる。


この一行の目立つこと間違いなしの団体は、周囲の視線を沢山浴びながらもごく自然に旧友同士の再会を祝して顔中で感情を表していた。


【うれしい】


っというただ、その一言を


この感情が収まるまで30分ほどその場で、皆で再開を祝しあうと


リーダーの俺が皆に声をかける。


「さぁ~それじゃ場所を移して、軽く一杯やろうか」


すぐさま、行動に移るメンバーたち


舞は、櫻木優香さんのバッグを持ち横に立つ。


タカヒコはホトと一緒に一行の進軍する道を切り開くべく先頭に立ち、両手を下げながらがらも周囲に気を配る。


ミッドの荷物は俺が持ちミッドが俺の横で歩き出す。


最後尾は、この軍団の老兵にして最強の二人が英語で会話しながらついてくる。


もちろんそれは、シゲさんとマルガッス・シュタインさんの二人だが、ともに俺の親父と一緒に働いたKABUKIコーポレーション故社長の右腕と左腕だ。


成田空港の出口まで一行は、歩んでいるところで何やら騒がしぐなっている光景が前方に見て取れる。


初めに感ずいた、ホトが横のタカヒコに目で合図する。


タカヒコは後ろを振り向き俺に支持を求める。



騒ぎは、若者が大声を出し警備員3人に取り押さえられているところだった。


周囲は騒然としており、若者は大分興奮していた。


年のころは俺と同じか、ちょっと上くらい。


あまり清潔感は感じられないが、不審者や犯罪者には俺には見えなかった。


言葉の端端からちょとずつ内容が聞こえる。


「僕は、今日中にイギリスに行かなきゃ行けないんで、、、、」


「パスポートも旅券も持ってないのに、飛行機に乗れるわけないだろう!!」


「それでも、、、、僕は学会の発表に行かなくてはいけな、、、」


「おとなしくして、一度警備室で話を聞くから」


「そ、それじゃ、、、

間に合わないんです」


かなりパニックになっているようだ。


俺は一行の中より、抜け出し3人の警備員に声をかける。


「失礼ながら、彼は他人を傷つけるような犯罪を犯したのですか?」


警備員の一人が、俺の顔を見て


「パスポートもチケットも持たずに飛行機に無理やり搭乗しようとしたんですよ」


もちろん国際線に搭乗するのは、様々な手続きが必要で、最終的には荷物 持ち物検査やパスポートの確認が行われる。


それらを一切無視して、飛行機に搭乗するのは、、、、


どう考えても不可能だ。


今どきの小学生でもわかりそうなものだが、、、、


俺は不思議に思い青年に、声をかける。


「そんなに興奮なさらないで、話を聞きますよ。」


警備員に押さえつけられた青年は、ぎらついた眼で俺を睨むと


「君なんかに、何がわかるっていうんだ。」


興奮バンバンで優しく話しかけた俺の言葉を思いっきり拒否る。


パン!!


思いっきり綺麗で軽やかな音が、木霊するほど大きな音を立てて暴れる青年の頬を容赦なく思いっ切り引っ張たかく。


顔が真横を向いて、頬を真っ赤にする青年は自分に

何が起こったかわからない様子だが、冷静さは取り戻したようだ。


その前に仁王立ちするのは、、、


絶世の美女にして、経済界の女王。


侯葺 縁(こうぶき ゆかり)さんが一言。


「男のくせに見苦しくてよ」


呆気にとられる警備員たち、、、、


しかし、男3人がかりで暴れて取り押さえていた青年をたったの一発で黙らせたのは、いかにも彼女らしかった。


「僕はこういう者です。後は、僕たちのほうでキチンと責任持ちますので、勘弁してもらえますか?」


すぐさま、名刺を出して身分を証明しながら婚約者のホトが割って入りその間をつなぐ。

うまい連携だ。


これが、この3年間にわたるホトの修行の成果か


ホトの礼儀正しくも柔和な笑顔と相反して、婚約者の縁さんの迫力に負けて、渋々警備員たちは立ち去っていく。


「さて」


俺は警備員たちが、口々に不満を囁きあうのを遠くに聞きながら振り返り、当事者である青年の前に右膝をつきしゃがみこむ。


青年は顔色が悪く、健康的とは正直言えなく衛生面でも少々問題ありそうだった。


無精ひげを生やし、よれよれのシャツとズボンを着用しており、持ち物はかなり使いこなした皴皴のカバンのみ。


この出で立ちで、旅券もパスポートもなく無理やり飛行機に搭乗しようとすれば、、、、、


まぁ~騒ぎになるよな。


「私は火吹武将といいますが、あなたは何故あれほど急いでいられたのですか?」


目線を合わせて優しく親切丁寧に、話しかける。


だがその獅子の両眼は、笑っていなかった。


その堂々たる威厳が、本人の意識とは関係なくあふれ出す。

反論を許さない絶対王者の態度だ。


しばし、無言の空間が誕生したが、、、、


騒ぎを起こした青年は、自分の首を下にうなだれ武将との視線を外し呟くように話し出す。


「ぼ、僕は新しい技術を発表するために渡航しなければいけなかったんです。」


俺は黙って聞いていた。


「君たちには分からないと思うけどね、、、、」


「どんな技術なんですか?」


否定されたのか馬鹿にされたのかわからないが、武将は平然と堂々たる態度で、詳細を聞く。


青年は驚きながらも少し小ばかにしたように話し出す。


「新しい半導体技術というか、簡単に言うとね人工的に作れるレアメタルの新製法技術さ。」


「へ~、君は希少鉱物である、レアメタルを人工的に作れる製法を開発したっていうの?」


今では、体積満載のミッドが口をはさむ


俺は後ろのミッドに顔を向けて


「どういうことなんだ?」


ミッドは、即座に答えを分かりやすく話し出す。


「半導体に使われる鉱物のことをレアメタルというんだけど、日本はほぼ外国、、、中国からね 結構高額な値段で輸入しているんだよ。」


「それじゃ、もし彼の言う研究が実現化したらIT関連のハードが一変する可能性があるってことなのか?」


俺が少々驚きを隠せずにミッドに確認する。


「アメリカでも研究はしていたけど、実現には至ってないという話だったよ」


(そりゃ~簡単に出来たらみんなとっくにやってるだろうしなぁ~)

(でもLEDの青色発光ダイオードを日本人が開発した時も50年先の技術みたいなこと言われていたよな)


一人頭の中で、考えていると目の前の青年は興奮気味に


「成功したらじゃない。もうすでに出来上がった理論なんだよ。」


「だからその理論を学会で発表しないといけないんだ!!」


俺は不思議とこの青年の全てが、ストンと心に落ち込むのを感じた。


この出で立ちから常識知らずなところ、、、、


会話も成り立たないコミュニケーション能力不足。


全てを切り捨てて、研究だけに没頭していたに違いない。


しかもおそらく一人で。


京仁織物株式会社の主力商品テ・コットを開発した、木島工場長のお弟子さんのイメージがふと沸いた。


研究者って、変わり者が多いのか?


俺個人の偏見なので、軽くスルーしてもらって話は続く。


「君のその理論とやらを僕に見せてもらえないかな?」


3倍超過体重の情報系スペシャリスト、ミッドが俺の後ろからぐるっと回って、青年の横に座る。


「君みたいな、デブに英語で書いてある僕の理論がわかるはずないだろ!!」


青年はギラついた眼で、ミッドを見つめる。


ミッドが珍しく【デブ】という単語に反応するのが感じ取れた。


すかさず俺が仲裁に入る。


「彼は今日までアメリカにいて、今帰国したんだ。だから英語は問題ないよ。そして彼はマサチューセッツ工科大学大学院を卒業している。」


「だから、概要くらいは見ただけで分かるんじゃないかな?」


【アメリカ】


【マサチューセッツ工科大学院卒業】


のキーワードに反応して、青年の態度がかなり穏やかというか逆に同志、仲間、尊敬といった態度に急変する。


分かりやすいやつだと俺は心の中で思う。


社会に出て7年目だが、社会においていや大人の世界観というのが、どれだけ偏った学歴主義に成り立っているかということは嫌というほど体験した武将だからこそ感じる感情であろう


しかし、彼の心はこんなちっぽけなことで折れるほど弱くも細くもなかった。


彼の身上は強いて言うなら


【人間主義】


学歴を上げることに努力した時間と労力には、敬服するがヒトとしてどうあるかということのほうが、彼にとっては重要なのだ。


彼の身近な存在で言えば、清水豪建設社長の清水郷壱さんが正に武将の中では、尊敬の対象である。


おそらく高卒の清水社長の行動力と半端ない胆力、そして

行動力、それらを支える体力。


あの侯葺縁さんとタッグを組める、数少ない人材だ。


例外は常にあるのでこの際、チームメイトのホトのことは横に置いておこう。


「武将様。」


静かに低く声をかける、慇懃なる昭和の執事。

シゲさんが、俺の耳に聞こえるかどうか微妙なところで囁く。


「往来ではできないお話のようなので、VIPラウンジに行かれた方がよろしいのでは?」


VIPラウンジ。


何度か幼少の頃、亡き親父と一緒に入ったことがある。


空港にある専用ラウンジの中でも金色のカードを持っていないと入れないラウンジのことだ。


しかもオヤジはいつもVIP専用の個室に案内されていたっけな


「わかりました。移動しましょう」


一行は、すぐにまとまって動き出した。


5分も歩くと漆黒の自動ドアに金色の文字でLOUNGEと書いてる。


いかにもな感じだ。


シゲさんが先頭に立ち、先に入りスーツの内ポケットからカードを提示すると


受付をしていた綺麗な女性は態度を豹変させて


「た、只今支配人を呼んでまいりますので少々お待ちくださいませ」


っと、言い小走りに奥に消えていくのとシュッとしたオールバックで髪を固めた壮年の男性が、腰を折り挨拶してくる。


「奥の個室が開いてございますので、皆様でお使いください。」


シゲさんは、全く変わらない口調で


「ありがとうございます。飲み物は結構ですのでしばらく誰も近づかぬようご配慮お願いできますかな」


支配人と呼ばれた男性は、腰を45度曲げて


「かしこまりました。」


平身低頭とはこういうことなのだろうなと俺は思いながら


しかし、シゲさんが見せたあのカードにはどんな魔法がかかっているんだ?


カード見せただけで、この厚遇ぶりは想像したくないが余程凄いものなのだろうな


っと、一人関心していた。

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