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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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二十歳の誕生日

マツウラ商事さんの大企画は、陰ながら支えてくれた葛城仁社長やCOOBデザインCEO候葺縁(こうぶきゆかり)さんのおかげもあり、大成功の結果となった。


そして、京仁織物株式会社 戸塚営業所にとっても横濱銀行 戸塚支店とのパイプが太くなり、資金繰りに全く心配がなくなったこととマツウラ商事の工事及び新事業提案を受けて、売上成績はドカンと跳ね上がった。


T・T・Dトラオ・テクノロジー・デベロップメントから入荷しているコーティング剤は、京仁織物株式会社の専売権利と表面上は歌っているが、中身は一度火吹武将個人に卸されて、そこから京仁織物株式会社に流れているのである。


その事実を知らない、当の本人。


火吹武将は、仕事の成功と自分の二十歳の誕生日を自宅で迎えるために、少し浮ついた気分で帰宅の途についていた。


もちろん会社でも、すったもんだがあり、火吹武将の成功と二十歳の誕生日を祝いたいという気持ちは京仁織物株式会社 戸塚営業所所属の皆、強く切望していたが本人は自宅で気楽に過ごしたいという気持ちを汲んでもらい、武将は口笛でも吹きそうな気持の軽い足取りで自宅へと向かう。


時刻は20:00を過ぎるころだ。


虎ノ門 神谷町付近は仕事帰りのサラリーマンの人々がかなりいる。


最近では、リモートワークが騒がれているが以前に愛する妻の父親である葛城仁に聞いたことがあるが、何千人という会社の人間全員をリモートワーク可能にするには、ハードというか設備投資だけで、何千万、、、下手すると何億もの投資になるらしい、、、


見合った大きさのサーバーを社内に設置して、会社内のインフラ整備を整えるだけで、会社は相当額の出資を強いられるのが現状で、そう簡単にはいかないと言っていた記憶がある。


上場企業ならまだしも、中小企業でそこまでリモートワークに拘る会社はほとんどないというのが現状だ。


実際、俺の様な営業叩き上げは出社して、お客様と会って話して、信頼を培ってい行く。


リモートワークには限界を感じるのが、俺の正直な個人的感想だ。


御堂大智(みどうだいち)ことミッドの様なIT情報プログラミング系の仕事は、十分リモートに対応しているだろうが、結局商品を見てもらい理解してもらうには、目で見てもらうしかないのである。


京仁織物株式会社の主力商品である【テ・コット】高級雨具に使用されている、軽くて丈夫。撥水性にとんだ特殊繊維で編んだ防水布は世界中で販売されている、それに加えて葛城仁社長の実家で、製造している京織物を使った高級ドレスは富裕層に大変指示され、メイドインジャパンを世界中に発信している。


それと、先日小袋織物有限会社に専門受注生産してもらっている、カプラー繊維を更に盛り込んだ新ブランド【ダ・スティン】も順調に売り上げを伸ばしている。


そして、蛇目靴製造会社じゃめのくつせいぞうかいしゃと共同で作り、彭城楓真(さかきふうま)に宣伝してもらっている、【TAKERUシューズ】も爆発的に日本にとどまらず、アメリカ始め中国など各国で売上を劇的に伸ばしていると聞く。


最後に、T・T・Dトラオテクノロジーデペロップメントからの専売契約を結んでいる、特殊コーティング剤は堅調に売上を伸ばし、今後は爆発的に化ける可能性十分な商品である。


京仁織物株式会社の売上、利益率ともに今期は過去最高を記録しそうだと聞いた。


その原因が、自分だという事を全く理解していない、今はまだがむしゃらに走り続けている、火吹武将こと【将軍】である。


電灯や街の明かりで煌々とされている、桜田通りを曲がり住宅街に入ると、雰囲気は一転して静寂が空間を満ちたす。


(あれ?家の電気もついていなぞ、、、)


何時もなら、防犯上から一晩中入り口の正門の前は昔の篝火(かがりび)のように、明るく周囲を照らし出しているのだが、、、、


まぁ~そういう時もあるのだろうってな、軽い感じで正門の脇にある通用口からランダムに画面に現れた暗証番号をタッチして指紋ロックを解除して中に入る。


(中も真っ暗闇だ、、、なんか事件でもあったのか?)


ふと嫌な予感が走る。


その考えを文字通り、【吹き飛ばす】ように


閃光と


爆音が


響き渡る。


っと同時に、夜空を彩る大型の華麗な花。


そう花火だ。


(な、なんだ!)


俺は思わず自分の鞄を胸に抱き、いつでも逃げられるように逃げ腰になる。


そこにパッと、照明が全て点灯し火吹屋敷正門内のだだっ広く広大な芝生を引いた庭を一面照らし出す。


自分でも気づかなかったのが、不思議なくらい、、、


そこには、人が大勢集まっていた。


100や200は軽く超えているようだ。


『武将様~二十歳のお誕生日~おめでとうございま~す!!』


候葺縁(こうぶきゆかり)さんの色香漂う大人の女性の声がマイクを通じて、花火をバックに大音量で響き渡る。


明かりがついた途端に大音響攻撃で、俺はもうバッグを胸に持ち、片足上げて逃げ出そうとしている滑稽(こっけい)な姿を明るく輝く照明に照らし出される。


思わず、あちこちで大起こる、、、苦笑、、、


「火吹財閥本家当主ともあろう者が、そんなへっぴりこしでどうするんだい?」


俺は片足を上げたまま「竜治叔父さん!」


KABUKIコーポレーション現社長で、武将の叔父にあたる人物だ。


「どうして?お忙しい竜治叔父さんが、此処にいらっしゃるんですか?」


竜治叔父は、奥様の京子夫人と並び


「武将の二十歳の誕生日を祝いに来たんだが、そんなにおかしなことかな?僕だって、以前は此処で暮らしていたんだよ」


そりゃ~亡きオヤジの弟だから、当然幼少期からこの屋敷で共に暮らしていたけど、オヤジが他界した時にこの屋敷を出て、今はKABUKIコーポレーションホールディングス関係系列会社の総代表取締役社長だ。


別の場所に立派な邸宅を構えている。


俺の誕生日を祝いに来る暇なんてある訳ないだろうに、、、


「武将様、二十歳の御生誕誠におめでとうございます。火吹家親族一同を代表しまして、お祝い申し上げます。」


高価な着物姿の火吹京子夫人は、品性と品格を伴って静かさの中に、誰も邪魔はさせない気迫を込めて優雅にお辞儀する。


生きてきた年齢と環境がこの人を人ならざる者に変えてしまったように、威厳に満ち立ち込め纏う空気は、厳格で高潔に感じる。


「京子叔母様まで、どうされたのですか?」


未だ理解できずにいる、やや頼りない財閥当主ではある。


すると、いつの間にか俺の隣には妻の火吹舞が、葛城本家で作られた、京織物の深紅と深緑がとても上品に調和した着物を纏い両手を前で交差させて、この場でお辞儀する。


「本日は皆様 御多忙の中、夫 火吹武将の二十歳の誕生日祝いにお集まりいただき誠にありがとうございます。」


(おいおいなんだこれは~、、、またしてもやられたってやつか?)


「舞さんはいつ見てもとてもお美しいですわね」


「京香叔母様、お褒め頂きまして誠にありがとうございます。叔母様もお元気そうで何よりでございます。」


「舞さんの様な才色兼備な女性を奥様にされて、武将様はとても幸福ですことね」


年齢差のある二人は、まだ数回ほどしか会ったこともないのに良き人間関係をすでに築いているのは、妻の舞の安定した図太さと京香叔母様の豊富な経験によるコミュニケーション能力故であろう


すると後方から5人ほど連れた初老の経済会会長である

ユタカ自動車 豊 一颯(ゆたかいぶき)社長が声をかけてくる。


「ほっほっほ~【将軍】は、とても素敵な女性を伴侶に選ばれたようじゃの~」


俺が更に狼狽しながら


「ど、どうしたんですか?豊 一颯(ゆたか いぶき)社長まで、こんなところに来られて、、、」


最後まで言葉に出せない。

仕方ないかも知れない、世界販売台数トップを誇る自動車産業会社社長の登場だ。

いわば、今ここに日本経済を牽引していく、超巨大優良会社の社長がほとんど揃ったようなものだ。


「ここん所、【将軍】にも会っておらんかったからなじゃな~ちょっと、君の誕生日だと小耳に挟んだもんで顔を出しに来たというわけじゃ。」


「それと君の美しい奥方にも会えて、ジィジィは嬉しいぞ」


(もう~はぁ~だよ~)


「タケマサさ~ん!!お久しぶりで~す!!」


遠くからでもわかる。

頭2個以上、抜きんでている青い眼の亡き父の親友。

T・T・Dトラオ・テクノロジー・デベロップメント。Ltd CEOミスターマルガッス・シュタインだ。


俺は今度は顔見知りであった為。


「ご無沙汰しております。親友の桜木優子がその節は大変お世話になり、ありがとうございました。」


心を込めて、最敬礼して感謝の意を表現する日本のサラリーマンだ。


いきなりマルガッス・シュタインさんは俺をその長い両腕で抱きかかえて


「ハッピーバースデー!タケマサ!」


っと、大声で叫ぶ。


身長2メートルの巨人と俺だって180センチあるから、日本人としては決して小さい方ではないが、その身体が軽々と持ち上げられる。


はたから見ていた、人々が思わずこの絵面(えづら)に苦笑している。


そりゃ~わからないでもない。

デカい男同士が、抱き合い誕生日を祝うって、どんだけ嬉しいんだ?マルガッスさん、、、


そしてその横には、ヨーロッパ留学中の帝城高校親友の天才バイオリニスト桜木優香が、そっと影のように後ろで控えていた。

きっと、マルガッスさんのプライベートジェットで一緒に帰国したんだろうな。


そして次は、またもや意外な人物が。


「私からもお礼を言わせてくれますか?」


まだまだ働き盛りの壮年はにこやかに笑いながら会話に加わる。


蛇目野靴製造株式会社蛇目野 勝弘(じゃめの かつひろ)社長だ。

かなり、初めて会った時とは印象が変わった。

この年齢で自分を変えることができることを証明したのはやはり優秀な経営者の証だ。

京仁織物との共同会社【TAKERU】は高級ランニングシューズとして、一つのブランドを定着しつつあった。

初CM起用された、彭城楓真(さかきふうま)の人気に頼る所も大いにあるが、大成功を収めた老舗の靴専門製造会社代表であることは違いない。


「葛城社長から声をかけていただいてね、是非にもと馳せ参じた次第です。改めて、二十歳の誕生日おめでとう火吹武将君。」


「ご多忙の中、ありがとうございます。」


俺は蛇目野社長のごつい手を取り、両手で握手する。

久しぶりの再会だ。

俺にとって初めての顧客で、大切なビジネスパートナーだ。



すると、爆音と閃光を伴って芝生の庭に用意された、ステージから?


照明がスポットを沢山当てられて、腐れ縁ともいうべき今は日本を代表するトップシンガー


彭城楓真(さかきふうま)がバックミュージックからメインに切り替わる。


脇には、候葺縁(こうぶきゆかり)さんとHANZO(_)のミッドと舞を除いたメンバーが壇上に立っていた。


(もう嫌な予感しかしない!)


シャンシャンシャン


シンバルが静かになり始める。


またもやホトだ。


ズンッズズン! ズンッズズン!


そしてまたもやタカヒコのベースも入ってくる。


そうなるとこいつは黙っていない。


「はァ~ああああ~」


「武将!誕生日おめでとう!舞と一緒に上がって来いよ。」


リズムは鳴り続ける。そのリズムに合わせるように体を揺らしセリフを乗せて歌うように、言葉を吐く。


ドラマ出演の成果?うまくなったな、、、


等と、他人事のように考えながらも愛する妻に手を引っ張られて、特設ステージの上に上がらせられる。


リズムは続いている。


すると、悪友であり俺の家の同居人。

楓真にマイクを渡される。


俺はジャパニーズサラリーマン丸出しの草臥(くたび)れたスーツに、寄れたネクタイのまま、マイクを受け取る。


俺は一泊を置き、寄れたネクタイと上着のボタンを留めて、清潔感だけは保ちつつ、静かにしかし凛と張った声と態度でその場に集っていただいた、俺にとっても大切な人たちに言葉を投げかける。


リズムが止む。


静まり返る火吹屋敷の中庭


「正直、この場にいる方々の中で、一番驚いているのは何を隠そう私自身であると思いますが、皆様には私の様な若輩者の為に、ご多忙の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。」


いつの間にか、舞も着物衣装のまま俺の後方にスッと並び立つ。

ごく自然だが、中々この状況の中俺たちの年齢で、これができるかというと・・・・


彼女もまた、違う意味で女王としての教育を受け育ってきたのだ。

葛城唯という母に教わり、葛城仁という父の背中を見て、若くして俺の嫁になるという決断をしてくれたのだ。


感謝しかない。


俺が辛く悲しい時、大切な家族の反対を押し切り、ずっと傍に居てくれた思いは、今もこれからも決して忘れない。


「皆様も既にご存じかと思いますが、私にはどうしても叶えたい夢があります。それは必ずこの国、()いては世界中の国の未来を変えうることになると信じております。」


「その夢を達成するためには、私一人の力ではどうにもなりません。ここにお集まりの皆様に感謝と共にお願いがございます。」


「そう遠くない未来、私の夢の為に、お力を、お知恵を是非にもお貸しいただきたい。これが火吹武将二十歳の決意表明でございます。」


「どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。」


最敬礼するようにお辞儀をすると、斜め後ろに控えていた舞も同じように両手を前に重ねて、優雅に腰を折る。

和装なので、その姿がとてつもなくこの場には、似合って美しく見えた。


自然と湧き上がる。


パチパチパチパチ

パチパチパチパチ

パチパチパチパチ

パチパチパチパチ

パチパチパチパチ


拍手の波。


「私にできることなら~何でもしますよ~マイボス!!」


ミスターマルガッス・シュタインが大声で叫ぶ。


本当の意味で、武将はマルガッス・シュタインのボスなのだが、その場はアメリカンジョークと武将は受け取り


「ありがとうございます。」


と感謝の言葉を述べ、現実の真相を知らない若者は仕事の疲れなどどこかへ吹き飛んでしまい、興奮冷めやらぬ様子だったが、大人たちは二十歳の若者の戯言とは捉えていなかった。


この男なら、やるかもしれない。


いやきっと、やり通すだろうという確信をその場にいる全員に持たすことができる男こそが、火吹武将という人間の本性なのだ。

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