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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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挑戦

20分後、マツウラ商事の役員会議室には続々と役員が再度集まってきた。


俺たちは、指示されたようにマツウラ商事の本社ビル及び工場の建築見積と図面、完成図、弊社取扱商品の防水シートの見積もりをマツウラ商事さんの社員に頼んで印刷してもらった。


通常なら印刷まで、やってくるのが当たり前なのだが、状況が状況だったので、失念してしまっていた。


そこは土井田課長の顔見知りのマツウラ商事社員の人に頼んで印刷してもらったのだ。


土井田課長が普段から、そういった無理を聞いてもらえる人間関係をきちんとマツウラ商事さんと結んでいた証拠だ。


そして、プレゼンテーションは佳境に入ってくる。


松浦社長が初めに席に着き座ったまま


「火吹所長の言う、大型強力空間除菌装置が出来るかどうかは、今の技術陣に聞いてみたけど即答は出来ないが、やってみる価値はありそうだという意見だったよ。」


「僕個人の意見としても、非常に興味がある内容だね。ただしリスクは大きいかもしれない」


「そこで、京仁さんの見積もりと合わせて検討しよういうことになった。火吹所長そちらの方というか、こっちが本当はメインなんだけどね。説明してもらえるかな?」


俺は一歩前に出て、話を始める。


「はい、今回の工事のポイントは大きく分けて2つです。」


「1つは、高級感を持った高耐久でデザイン性も兼ね備えた本社工事。もう1つは機能性を重視し、コストを抑えた工場建設。両方合わせてコスト的には御社のご希望に添える金額に近づけたと思います。」


「以上の2点ですが、肝心なのは共に当社で扱っております。高耐久コーティング剤を使用して、半永久的にメンテナンスフリーとなる点であります。」


「初期投資費用は、始めに申し上げた通り大手建設会社さんには叶いませんが、当社にしかない高耐久コーティング剤の使用により今後のメンテナンス代金がほとんどかからないという点です。」


松浦社長が、更に体を押し上げて聞いてくる。


「そのコーティング剤というのは、詳しく説明してもらえるかな?」


俺はスッと半歩身を引き


「それに付きましては、弊社取引業者のCOOBデザイン建設会社社長清水郷壱からご説明させていただきます。」


こういう話し合いの場や公共の場では、たとえ社長だろうと上司でも呼び捨てにするのが、大人のルールだ。

俺は、亡き親父にその辺は小さい時から嫌って程叩き込まれていた。

大人ばかり大勢いる前で、紹介されたりスピーチを求めらることもあった。

尊敬する親父の事を父虎雄と呼び捨てにするという事など、まだ小学生になるかならないくらいの時からやっていた。

俺にとってはごく自然で、当たり前のことだ。


そして、


今度は半歩清水さんが前に出て、皆の前でお辞儀する。


「COOBデザイン建設の清水です。此度、マツウラ商事様の図面とデザインを担当させていただきました。よろしくお願いいたします。」


「まず、コーティング剤についてですが、アメリカにあるT・T・Dトラオ・テクノロジー・ディプロップメントという会社が特許を取っている、この世界に一つしかない恒久的なコーティング剤です。しかも原料は塩という健康被害など全く問題なく厚生労働省からも認可のおりている正式な商品であります。」


「普段、弊社で建築させていただいております。一軒家の外装全てに噴霧して使用しておりますが、お客様からは大変好評をいただいており、汚れても雨が降れば綺麗になるものだから、掃除をする必要もないほどだと伺っております。また、このコーティング剤を使用すると防音、保温、保湿に優れていると皆さまおっしゃられます。」


「そして、そのコーティング剤を日本航空様のジェット機に使用したいとお申し出があり、只今話し合いの最中であります。」


(なんだって!そんな話聞いてないよ~これは効果ありそうだな)


実は自分の会社だという事を全く知らない、本人が一番驚いているという中々に面白い図になっていた。


松浦社長は、腰を浮かし机に半分乗り上げるようにしながら


「それは、ジェット機にも使えるという事ですか?」


清水社長は、真っ黒に焼けた顔にスーツ姿というスーツの色を間違えたらやば目の人に見えかねない、姿で淡々と話し続ける。


「濃度を自由に変えられるので、濃くして塗り重ねればジェット機でも船舶でもなんでも使えます。しかも火吹所長がおっしゃっていたようにメンテナンスは全く必要ありません。耐久性に関しては、半永久的と(うた)っていますが開発されてまだ間が無いものですから、絶対に大丈夫とは言えませんが、現場の職人としてやってきた者としてこれほど優れたコーティング剤は、私は今迄見たことがありません。」


し~ん


さすがは、現場第一主義の建築担当者で俺よりはるかに、経験と修羅場を乗り越えてきている人間の言葉は、ここにいる全員に重くのしかかる。


そんな中、やはり松浦社長がいち早く自分を取り戻し話を続けてくる。


「そのコーティング剤のサンプルはありますか?是非この目で見たいものです。」


清水郷壱社長は、ガラガラ声の低い音で


「では、本日夕方にはこちらにお持ちするように手配いたします。その際に実際に塗布して実演させますのでご覧ください。」


(仕事も行動も滅茶苦茶早いな、、、今更だけど、、)


「最後に一応申し上げておきますが、このコーティング剤は現在日本においては弊社しか取り扱いが無く、今後もT・T・D様とは専売契約を結んでおります。」


(さすがやり手だなぁ~マルガッスさんとすでにそんな話になっていたのか!)


全くもって、自分の会社の事を全く理解していない男である。


そして、その後はマツウラ商事本社のデザインと工場建設の機能性について説明が終わる頃には、マツウラ商事役員全員、溜息しか出ない感じだった。


デザインに関しては、おそらくCOOBデザイン社長の候葺縁(こうぶきゆかり)さんからみっちり叩き込まれたのだろうと想像できた。


それほど、本社ビルのデザインは素晴らしく、ファッションで言えばまさに、トレンディを盛りだくさんにしたような素敵な出来だった。


しかし、この完成図と清水郷壱社長の印象が全く違って見えるのは縁さんの影響力の凄さなんだろうけど、そんなことは絶対に本人には言えない事実だ。



松浦真一社長が最後に


「当初、考えていたことと大分違う話になりましたが、大変興味深い内容でした。サンプルを拝見した上で前向きに検討したいと思います。来週中には回答させて頂くという事で、よろしいでしょうか?」


俺は堂々と「はいかしこまりました。」とだけ答える。


マツウラ商事事件のプレゼンはこれで終了したかと、思った。


一番初めに、役員会議室から出ていこうとしていた、50代くらいの役員が、俺の前で立ち留まり話しかけてきた。


「火吹所長。間違っていたら悪いが、君はKABUKIコーポレーション創設者直系の家系じゃないのかな?」


立ち上がり、それぞれが会議室を出ようとするところで、本日最後のどよめきが起こる。


(この人も例のテレビを見ていたのかな?)


「「「「!!!!」」」」


「KABUKIコーポレーション創設者の一族、、、」


「名前が火吹所長だからKABUKIコーポレーションなのか、、、」


「だから、あんな発想が生まれるんだな!」


様々な噂話にしては、俺にも聞こえるくらい大きな声で、役員会議室の出口はごった返す。


有能な松浦真一社長でさえもこの事実には、驚いたように俺の前に立ち


「君がKABUKIコーポレーション創設者一族というのは事実なんですか?」


俺はもう、今まで何十回と繰り返してきたことをこの場で、宣言する。


「この仕事とは全く関係ありませんが、それは事実です。」


ザワザワザワ


先ほど一番初めに俺の事をKABUKIコーポレーション創設者、俺にとっちゃひい爺様なんだけど、それを言った50代の役員が松浦社長の方を向き興奮気味に話す。


「社長!だとすると、彼は25歳でこの日本のインフラを一新するつもりでいます。この事業ももし成功出来たらその大プロジェクトに加われるのではありませんか?」


(いやいや~それは~話しを大きくし過ぎですよ~)


「それは本当ですか?」


(松浦社長までそんなこと(おっしゃ)らないでくださいよ~)


「お話の内容は、大分大袈裟ですが私が25歳で独立を考えているのは事実です。」


松浦社長は今日一番興奮気味に俺に喰い付いてくる。


「日本のインフラを変えるというのはどういうことですか?」


俺は変わらず、いつもと同じ態度と声のトーンで


「今回の件とは全く、関係ないことと前置きさせていただきますが、私が目指すのはクリーンで安全で貧困のない国を増やしていきたいと考えてます。」


「具体的には?」


この人も有能だ。態度と質問に嘘はないと感じるし、始めにコスト勝負だと宣言してくれた事実と言い、信頼に足る人物だ。


「はい、CO2を大量に吐き出す、火力発電を全て廃止して、ユタカ自動車社長 豊一颯(ゆたか いぶき)様と相談させていただいております、大型水素発電の開発がメインになりますが、AIと最先端情報技術を駆使したクリーンな街作りから始めようと考えております。」


俺は嘘偽りなく、自分の構想を話したつもりだが


周囲の反応は劇薬をぶち込んだ、核爆弾並みに凄かった。


「火力発電を廃止する!!」


「もうユタカ自動車社長と話し合い中なのか!!」


「水素発電とは、水素自動車の超大型番ということか!」


「AIと最先端技術、、、未来都市、、、」


マツウラ商事の重鎮役員達がどよめく中、やはり松浦社長は別格のようだ。


「火吹所長、腹を割って話しますね。」


「はい。」


「正直、君の話はとても興味深く、商売として考えるととても大きな魅力を感じます。しかし、そこまでの話になると当社の体力では、追加融資を受けられるかわかりません。」


「初めにお話しした、コスト重視という件もそんな懐事情(ふところじじょう)から出たものであるのです。当社に万一の事があれば、何百人という従業員を路頭に迷わすことになります。それは社長という立場にいる私にとっては厳しい判断になるのが正直な感想です。」


俺は松浦社長の目を見て、静かに正確に話を聞いていた。


「松浦社長。」俺は180センチ長身を少しかがんで、顔を松浦社長の視線まで下げて


「おっしゃることは、大変よくわかります。」


「ただ、私はマツウラ商事様だからこそ、このような提案をさせていただきました。他の会社では出来ないのです。」


「商売には挑戦とリスクが必ずついてくるものだと、私の亡き父が言っていました。もし、銀行が融資をしてくれるようでしたら挑戦するおつもりはございますか?」


「・・・・・」


「私個人でいう事が出来る内容ではありませんが、銀行が融資を受けてくれるならば、挑戦してみたいと思いますね。」


35歳。マツウラ商事2代目の社長は、決断のできる男であった。


「ただ、最終的には役員会議にかけて決定という形になると思いますが、私個人的にはやってみたい気持ちは変わりません。」


「わかりました。」と俺は言い。自分のスマホを出し、番号をダイヤルタッチする。


相手は横濱銀行渉外部部長 新倉誠である。

直ぐに、新倉部長は電話に出てくれた。


「新倉部長。今、大丈夫ですか?」


「はい、昨日は誠にありがとうございました。」


俺は即刻内容を新倉部長に大体伝えて


「今日、これからマツウラ商事様までこれますか?」


「はい、これからすぐに伺います。30分もかからないと思います。」


(この人もそうだ。俺が見て立派に思える人物の一人だ。)


スマホでは、ごく普通に会話していた新倉渉外部長だが、スマホを切った途端に、跳ね上がるように周囲にいる人たちを驚かす。


「加藤課長、鈴木君。緊急事案だ、すぐ私と一緒に来てくれ!!」


柔和な銀行屋の顔をかなぐり捨てて、慌てる上司を見て只事ではないことを感じ、自分の仕事を放り投げて自分のカバンに必要書類をたたき込み、新倉部長と一緒に車を出す。


呆気にとられるのは、残された職員だ。

普段、沈着冷静を絵にかいたような、新倉部長が鬼の形相をして走り出していく様子は異常事態だ!


緊張が、横濱銀行戸塚支店の閉店後の作業に入っている社員達の間をピンと張り詰める。


銀行にとって、緊急事態とは良いことか悪いことのどちらかだからだ。


だが、今回は凄いことが起こりそうな予感しか皆感じなかった。


それは、新倉部長が加藤課長と鈴木社員を連れて行ったからだ。


それにその突然変異状態が起こる前に、新倉部長はスマホで誰かと喋っていた態度が、いつもより少しだけ緊張している程度だったので、悪い話なら最初から緊急事態宣言発令となっていただろうから、周囲の者たちは一体どんなことが起こるのか興味津々な気持ちと裏腹にとてつもない緊張感に包まれていた。


新倉部長が来るまでの間、俺はマツウラ商事社長松浦真一さんとマツウラ商事玄関前の自動販売機の前で、缶コーヒーを飲みながら、歓談していた。


清水郷壱社長は今後の手配をして、この時点で皆に丁寧に挨拶をして現場に戻っていった。

昨晩徹夜したなどとは、微塵も感じさせず黒く陽に焼けた頼もしい、最強戦士だ。


俺と松浦真一社長が一緒に居ると、一般従業員が前を通るたびに挨拶していく姿が、とても良い印象を受けた。


だが、社員にとっては自社の若社長と取引先の若所長が自販機でコーヒーを飲みながら歓談する姿は、ある意味異常に思えたようだった。


俺にとっては、歓談と思っていたが松浦社長にとっては、そうでないように感じられた。


こういうスマートなスタイルの男性が、情熱的に話をするからそう感じたのだが、始めに受けた第1印象とは違った、魅力を俺は松浦さんに感じていた。


それは責任感を持つ覚悟を持った者だけが持つ、特別なオーラ。

鉄壁の防御の持つ盾と何物でも貫き通す槍のようだ。

全く矛盾していることだが、その両方を持つ者こそが経営者たる。


松浦社長は父親の家業を継いだ2代目。世間でよく言われている2代目はボンボンが多く、会社を駄目にするという噂話とは縁遠く正反対側にいる人間のようだ。


話している内容は、仕事の話とはまるで変り、主に俺のプライベートを聞きたがっていた。

だが俺に妻と子供が二人いると話すと、松浦社長にも昨年誕生した子供がいるとわかり、子供の話題で盛り上がっていた。


この人はオンとオフをはっきり分けられる人なのだなと、改めて感心させられた。


そこに、白い何の社名も入っていない軽自動車が、マツウラ商事の駐車場に滑り込んでくる。


中からは、大きな体を窮屈そうに後部座席の扉を跳ね上げて、新倉渉外部長が言葉通り飛び出して(・・・・・)きた。


「お待たせしまして大変申し訳ございません。」


走ってもいないのに、汗だくで挨拶を交わす。

横濱銀行戸塚支店 渉外部長だ。


人柄は信用しているが、汗っかきなのが玉に瑕かもしれない。


連れの加藤課長と鈴木営業社員と名刺交換して、俺たちは再度役員会議室に戻ることとなった。


会議室には、俺たちと松浦社長の他にはマツウラ商事の経理担当役員と副社長と常務、専務取締役の総勢11名の緊急案件の会議が行われようとしていた。


松浦真一社長が分かりやすく、懇切丁寧にこれまでの内容を銀行側に話す。


そして


「正直にお話します。当社はメインバンクであるトナミ銀行さんから100億円の設備投資の融資は決定しております。それに加えて、火吹所長の案件に乗るとなると研究費諸々で後20億円は融資頂きたいのです。」


「それを横濱銀行さんが、準メインバンクとして弊社に融資をお願いできないだろうか?」


新倉部長は既に【銀行屋】の顔に戻っており、熱心にマツウラ商事から提示された、決算書類の数字を銀行屋なりに読み解いていた。


15分ほどの間が空き


新倉部長は銀屋として、厳しい眼と柔和な顔で話をしだす。


「20億円の決済となりますと私だけの判断では、この場で即答はいたしかねます。」


「っが、この決算書の内容、新事業開発。火吹所長の未来構想等を据えて、一度所内に戻り前向きに検討させていただいてよろしいでしょうか?」


(俺の未来構想は関係ないんじゃね~)


っと思っていると松浦社長は、席から立ち上がり


「よろしくお願いいたします!!」


新倉部長に頭を45度下げて、お辞儀をする。

松浦社長と同じように、マツウラ商事の副社長、常務、専務、経理担当取締役が同じように、席を立ち新倉部長にお辞儀をする。


顔を上げた松浦真一社長は新倉部長に向かって経営者として最後の切り札を切る。


「もし、このお話がまとまれば当社のメインバンクとして、横濱銀行さんと今後お付き合いしていきたいと私は思います。」


100戦錬磨の新倉部長はにこやかな顔の中に鋭い眼光で松浦真一社長を見つめて


「銀行としましては、大変喜ばしいお申し出で、ありますがトナミ銀行さんは良しとしますかな?」


「その時は、横濱銀行さん一本でいくつもりです。」


じっと、新倉部長の鋭い眼差しをものともせず睨み返す。


若き獅子。松浦真一である。


数秒の間の後に新倉部長は、にこやかにほほ笑み


「それでは、今までトナミ銀行さんからのお借り入れ金額総額も含めて一括返済できるように上にあげますが、よろしいですかな?」


横濱銀行がメインバンクとなるのだから、トナミ銀行からの借り入れは、全て横濱銀行から一括返済して尚且つ、20億円融資するという内容だ。


若き社長はここでもしっかり決断する。


「ええ、その方向でお考え下さい。」


新倉部長が右手の人差し指を立てて顔の前に出す


「1つ、お聞きしてもよろしいですか?」


「はい、どうぞ」見た目はスマートで、お洒落な二代目社長は軽やかだが、目は少しも笑っていない顔で微笑む。


「松浦社長は、メインバンクをどうして当行にご変更しようと思われたのですか?」


会社にとって、メインバンクを変えるという事はある意味、裏切り行為にもなりかねない。

今後、元の銀行との取引は出来ないものと思わなくてはならないからだ。


松浦真一は背筋を伸ばし、堂々とと前を向き全魂を込めて話しだす。


「理由は二つあります。」


「一つは、火吹所長のご紹介だからというここと今 新倉部長にお会いしてこの方達となら、共に未来の可能性に歩んでいけると思ったからです。」


「もう一つの理由は、トナミ銀行さんの社風なのかしれませんが、毎回毎回融資を打診すると【担保】はどうするのか?とか連帯保証人には何人付けろだのと、自分たちの安全ばかり言ってきます。」


「父がこの会社を大きく出来たのは、確かにトナミ銀行さんの力があったからこそですが、今の規模になると自分の銀行の安全第一を考え、私たちの考えなど一切無視です。」


「私が社長に就任する時も、トナミ銀行は私の年齢が若いだの経験が足りないだのと難癖付けて、融資金額の一括返済を条件にしてきました。」


「それを、私が必死で頼み込み、自宅まで抵当権を付けて1年間だけ待ってもらいました。その間に当社は大きな取引先を何件もとってきて業績が上方向に向いた。するとやつらは突然手のひらを返したように、今回の100億円の融資を申し込んできました。」


「この会社が今あるのは、私一人の頑張りだけじゃない!マツウラ商事の社員全員が頑張ってきたからこそ、今のマツウラ商事があるのに奴らは自分達の保身や安全ばかり優先する。そんな銀行とこれほど大きなプジェクトのパートナーになれると新倉部長は、バンカーとしてどうお思われますか!!」


(この人は普段冷静だが、心の中は燃え(たぎ)る炎がある人なんだな)


俺は大きく松浦真一という人間の評価を変えざるを得なかった。

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