プロジェクト【舞】
通称ゴンゾウさんのスタジオ、、、、
【ゴンスタ】に着くと、メンバーは全員揃っていた。
諷真は練習に入る所だったが、俺が呼び止めた。
「ちょっと、みんないいかな?」
「どうしたの?将軍」
ミッドが俺の真剣オーラを感じ取って、首をひねり聞いてくる。
「暁企画の件なんだけど、今校門の前でスカウトされた。」
「舞だけな。」
「えっ、断りの電話、僕が入れといたけど、、、」
ミッドがすまなそうに言う。こいつは基本小動物系だから余計、可哀想な感じに見える。
「どうも、怪しいんだよそいつが、いかにも業界人です、ばりでいけ好かない感じだった。」
俺はHANZOではなく、舞だけというあのチャラ男がどうにも信用が置けない、、、
いや、危険な臭いを感じた。
話を聞いていた、ゴンゾウさんが話に入って来る。
「そんな時こそ、武士の出番よ~、頼りになるわよあの子~」
「そうだな、、、二度と俺達にかまわない様にきちんとしておくか」俺は思考に耽った、、、
「ゴンゾウさん、今、武士君いますか?」
「2階にいるわよ~」
「みんなは練習しててくれよ、俺ちょっと武士君と話してくるから」
俺達は男だから、いざといなればそれなりの対応が取れる。
だけど、舞は気は強いが女性だ。
男には力で適わない、、、それで奴らの狙いは舞だ。
俺は2階に上がって行きながら「武士君、ちょっといいかなぁ~」と言いながら勝手知ったる、階段を上る。
そして、俺と武士君の話は終わり、俺は練習に戻り、武士君は出かけて行った。
練習はいつもより遅くまでやった。
タカヒコは塾があるからと先に帰ったが、、、
俺達が練習を終えたのは21:30くらいだった。
ー火吹家ではー
シゲさんこと重道勘蔵55歳は俺達が連絡もなく帰宅が遅くなるのを気にして、車で最寄り駅の地下鉄神谷町駅まで迎えに来ていた。
正装でロールスロイス ファントムの横で直立不動で待つ姿は昭和の執事そのものだ。
周りの空気まで緊迫した雰囲気を醸し出す。
22:00オフィス街の神谷町ではまだ人はそれなりに歩いていた。
遠くに、駅の階段から俺と舞が上がってくるのを見ると、シゲさんは安心した。
そこで、俺は近くにコンビニに一人で入り、舞は道路近くの電信柱に背中を預けてスマホをいじくって待っている。
いきなりで
突然だった!!
一通りもまだある明るいオフィス街で、、、
黒い大きいワンボックスカーが道路脇に急停止すると同時にスライドドアがガラッと開く。
中から如何にもガラの悪い黒いジャージを着た男が3人飛び出してくる。
男の一人は舞の口を後ろから手でふさぎ、残りの二人が舞を抱え込む様に黒いワンボックスに連れ込む。
一瞬の出来事だった。
目撃した、シゲさんが珍しく慌てて駆け寄ろうとする、、、
舞が車に連れ込まれると同時にグレーのスポーツウェアを着た、デカい男達が4人、黒いワンボックスカーに走り寄る。
素早い!!
4人のうち、2人は車の前に回り込み、車のフロント部分を持ち上げる。
舞を拉致した怪しい男達は車の中で叫んでいた。
「早く車を出せ!!」
ブゥウウウウウーン!!
エンジンは回転数を上げ、唸り上げる。
舞が叫ぶ
「ちょっと、何処触ってんのよ!!」
黒いワンボックスのタイヤは物凄く早く回転する。
しかし、残念なことに地面からタイヤは浮いており虚しく空転する。
車のフロントに回った2人が、車を持ち上げたのだ!
FF(フロントエンジン、フロント駆動)の車は前輪が地面に着いていないと進む事が出来ない。
まぁ、当然と言えば当然だが、実際それをやれるかどうかは個人差がありすぎる、、、
グレーのスポーツウェアを着た残りの二人がワンボックスカーのスライドドアを開ける!
見事な位、一瞬で決めた。
舞を抱きしめている奴の腕を力付くで、外し関節を固く決めて、でかい身体を丸ごと相手に乗せ押し付け動きを封じる。
黒ジャージの男が悲鳴を上げる。
「ギャー!イテェ、イテェ。」
すかさず、もう一人のグレーのスポーツウェアを着た巨大な男が、舞を助け出す。
俺は直ぐにコンビニから出てきて舞を抱きしめる。
後はグレーのスポーツウェアの巨人たちの一方的な虐殺になっていた、、、
運転手を引きずり降ろし、太い腕で首を絞め落とす。
残りの黒ジャージの3人はその場で抑え込まれて戦意を喪失していた。
俺が「大丈夫か舞?」と心配げに聞くと
舞は戦意喪失した、黒ジャージの男一人の股間を細い足で思い切り蹴り上げた。
見事に決まり、泡を吹いて倒れ込む黒ジャージの男。
舞は一言
「ざまぁみなさい」
っと捨て台詞を吐く。
負けてないな~舞は、、、っと密かに股間を蹴られた男に少しだけ同情した、、、、
そこにシゲさんが息を切りながら走り寄ってきた。
「大丈夫でございますか?舞様、武将様」
「シゲさんどうしてここに?」
俺が驚き、シゲさんと目を合わせる。
っと、そこにミッドがカメラを回しながら現われる。
「全部撮ってるからね~誰に言われてこん事したのか言ってもらおうかな~」
俺がグレーの巨人に向かって声を掛ける
「武士君、誰から頼まれたか聞きだしてもらえる?」
「うっす」
武士はドスのこもった声で答えて黒ジャージの男一人に向かってドスドス歩きよる。
(こえぇ~だろうなぁ)
密かに思う。
武士は黒ジャージの男一人の腕を掴と、指の関節を決める。握手するように、、、
余りの痛さに絶叫する黒ジャージ男。
「ギャー!! 話す。話すから勘弁してくれ~」
「暁企画の社長だよ、女を攫ってくれば100万くれるって言うからよ~」
「やはりな」
俺が舞をシゲさんに預けて
「その暁企画の社長さんに言ってもらえますかね」
「俺達に係るのは止めろって、次は警察に突き出しますからね」
「証拠はこのカメラが全部ばっちり写したからねぇ~車のナンバーも取りましたよ、後全員の免許書を取らせてもらいましょうかねぇ~」
ミッドが自分の顔より大きいカメラを肩に担ぎながら言う。
免許証を撮影させて、黒ジャージの男達は開放してやった。
意識を失った仲間を引きずり逃げるように車に乗り急発進してその場から立ち去る。
俺は振り返り、4人の巨人を見る。
「武士君と友達にもすごく助けられたよ」
「ありがとう」
グレーのスポーツウェアを着た4人の巨人は土門武士が入っている格闘倶楽部【乱囚】の友人達であった。
乱囚はプロの格闘選手~プロレスラーまでいる、列記とした格闘倶楽部だ。
「俺の事は【武士】でいいっす。将軍さん」
「ありがとう、武士。それに友達のみんなも助かったよ」
「「「うっす」」」
こえぇって、、、
暁企画がやばい芸能プロダクションだと聞いて、わざと舞にお取りになってもらった。
武士達にガードしてもらって、、、
しかし、まさか車で拉致するとまでは俺も読めなかった。
武士達のおかげで事なきを得たが、汚い大人のする事は高校生の俺達には読み切れない、、、
シゲさんが珍しく黙ったまま、ジッと何かを考えているようだった。
俺達はそのままシゲさんの運転するロールスロイスで帰宅する。
舞は気丈にも普通に振舞っていたが、本心は怖かったに違いない。ずっとおれの手を握っている、、、
舞を囮にしたのは、不味かったかもしれない、、、
しかし、俺にはその時にはそれしか、解決策が浮かばなかった、、、
もっともっと勉強しなくては、社会の事、人間の事、、、
帰宅すると、シゲさんは直ぐに何処かへ車で出かけて行った。
自宅近くにある。KABUKIコーポレーション本社ビル
【社長室】
「久しぶりだね、重道君、どうしたんだいこんな遅くに」
「ご無沙汰しております。火吹社長。」