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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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未来の目標

「はっ、はっ、はっ、はっ」


タッタッタッ。


今日も保東康臣(ほとうやすおみ)ことホトは、1人走り続ける。


この一年で、大分引き締まった体躯は軽やかに速度を増して、帝城高校まで疾走する。


今のホトを【ぽっちゃり】とか【デブ】とかいう人間は、見た目だけでいう奴はまずいないだろう。


それくらい、身体は引き絞られ精悍なイメージを醸し出していた。


溢れる汗さえも、不快には感じず。流れる若きエネルギーの如く爽快な感じを周囲に放つ。


そんな姿を同じく帝城高校に通う、俺の妻火吹舞や親友の常慶貴彦(じょうけいたかひこ)等は、声をかける事はなくとも暖かい眼差しで応援していた。


戦い方は、それぞれ異なれど走り出した人間に言葉は不要だ。


救いを求められれば、全力で全員で知恵と時間を割いて救いの手を出し助けるが、それ以外の手助けは一切不要。


それが、自然と確立されている【将軍】こと、火吹武将のチームの規律である。


武将本人が、そのように生きているからこそ皆も真似をする。


各々がそう思うからこそ、親友にあえて簡単な言葉はかけない。


各々の信念を汚す事になると思うから、、、


今は自分たちには、力が、、、


経験が、、、


絶対的に足りない。


既に走り出している、火吹武将や彭城楓真に一日も早く追いつくために!!


そして約束の25歳までに、己を鍛え上げる為にそれぞれ戦っているのだ。


馴れ合いで、勝てるほど甘いものでないことだけは全員一致した考えだ。


舞は、東京大学 文科1類をトップの入試合格得点で、入学を果たす。


同じくタカヒコも東京大学 理化1類に合格。弁護士目指して猛勉強中だ。


一方、今も走り続けているホトは、進学せずに帝城高校を卒業したら、COOBデザイン株式会社に入社が決定している。


COOBデザインも東証一部上場企業だ。


幾ら私立の進学校の帝城高校卒業でも、高卒で入社できる会社ではない。


COOBデザインの社長こと、俺の妾を公然と言い放つ候葺縁(こうぶきゆかり)さんが、ホトの事を気に入り自社で鍛え上げると俺に宣言したのだ。


そして、入社までのこの一年間。

ホトは縁さんの言いつけ通り、一日もさぼることなく通学の往復約10キロをそれこそ雨の日も嵐の日も毎日一人で走り続けたのだ。


縁さんに恋する、ホトに全く邪心は無いとは言い切れないかもしれないが、それを実行できる人間もそういるとは思えない。



そして、桜が散り始めるころ俺達の親友は、それぞれステップアップして一つ上の頂に上がり更に己を磨く。



場所は全く変わり、今日は土曜日。

世間的に休日だ。


俺と舞は、シゲさんの運転する高級車で、赤坂にある朝日テレビの地下駐車場に来ていた。


前に自宅の屋敷にテレビ生出演依頼に出演するために来ていたのだ。


一緒に出演することになっている楓真は、その前に一仕事こなして、直前に来るらしい。


超売れっ子のスターは、分単位のスケジュールだ。


車を出ると、東大合格発表の時にカメラマン兼ディレクターでその場にいた、早坂と名乗る30台半ばくらいの男性が、俺達を迎えてくれた。


「火吹武将様と舞様ですね。お待ちしておりました。本日は出演承諾していただき誠にありがとうございます。」


明らかに年上の早坂さんは、馬鹿丁寧に腰を折り俺達に話しかけてくる。


俺はその態度を見て、直感した。


俺達の素性を調べ上げたんだな。


っと。


俺は直ぐに頭脳をフル回転させて、これからの展開と態度を決める。


そして、着てきたスーツのネクタイをぎゅっと閉め、覚悟を決める。


いざ出陣!!


俺の考えは一瞬で、決まり胸を張り堂々と、歩んでいく。

火吹家当主として、家族の大黒柱として。


ゲスト出演の俺達に、控室など普通はないはずなのに、立派な10人は余裕で入れる、控室が用意されていた。


ここで俺は改めて確信した。テレビ局側は、俺達の素性と彭城楓真の関係を知っていると


コンコン


控室の扉がノックされて、早坂さんが入ってきた。


「失礼致します」


(敬語だ、、、)


身体の大きな早坂さんは、今日の番組の内容の趣旨を話し出した。


要約すると、東大トップ合格を果たした舞が、結婚育児をしながら今後の目標を語ってもらいたいという事らしいが、、、


テレビ局は、俺と楓真を一緒に呼んだ。


それだけで終わるはずがないと、俺は悟った。


生番組の生放送だ。


全てがその場で、全国に放映される。


実際、自宅の屋敷にいる仁父さんや唯母さん、縁さんはテレビを見ているはずだ。


子供たちの面倒見ながら


そして、チームや親友の皆も。


俺の隣に座る、妻の舞に緊張の色は全くない。

相変わらず、ぶっとい心臓してんな。


コンコン再度、控室の扉がノックされて、女性が声をかけてくる。


「失礼します。まもなく出番なので、付いてきていただけますか?」


俺は毅然と椅子から立ち上がり


「わかりました」


と答え、舞は黙って俺の前を共に歩き出す。


舞の後ろ姿を見て、とてもじゃないが2人も子供がいる女性とは思えないほど、スタイルがよく女優の様に優雅にそして堂々と歩く。


流石は我が愛する妻だけの事はある。


番組の司会は、アメリカ人で日本語が堪能で、経済に詳しい有名な芸能人だ。


アシスタントは朝日テレビの局アナでとても美しい女性だ、俺達が出演するコーナー担当は、舞の合格発表の時にいたリポーターをしていた女性のようだ、番組は順調に進行していき、もうすぐ俺達の出番と言う所で、楓真がスタッフと一緒に駆け込んできた。


「ギリ間に合ったな」


楓真は、汗をキラキラ光らせながら俺に笑顔を見せる。

きっと、こんな顔するのは俺達にだけなんだろうな、、、


なんせこいつ、最近大分変ったとはいえ、コミュニケーション滅茶苦茶下手糞だからな。


だが、大抵の女子ならこいつにこんな笑顔向けられたら、一目で恋に落ちるだろうな。


「あんた、スケジュール詰めすぎじゃないの」


舞が、楓真に物申す。


今の彭城楓真にこんなこと言えるのは、舞くらいしかいないだろうな。


「俺がスケジュール組んでるわけじゃない。こなしているだけだ」


楓真も何年も親友として、付き合ってきた舞だからこそ、普通にしゃべるが、普段はこんなこと言われたら無視するか、全く答えないだろうな。


後ろで控えていた、楓真のスタッフの一人である山田仁造さんが、恐る恐る声を挟む。


「すみません。楓真さんは今が大事な時なので、ちょっと無理してしまって、、、人気がもう少し定着してきたら、仕事も選んでいきますので、今はご容赦ください。」


大の大人が、未成年の俺達に向かって、平謝りする。


幾度となく接してきた【大人のルール】。もう慣れたけどな。


以外にも舞が


「こちらこそ余計なことを言ってしまい、すみませんでした。楓真の仕事が人気商売なのは、よくわかります。」


スケジュールスタッフの山田さんに、長い髪を肩から下げて両手を前で組み、腰を深く曲げて謝罪する。


舞も変わったな。


そこで、小声でテレビ局のスタッフが俺達に合図する。


「お願いします。」


同時に番組内では、司会者の米国人が流暢(りゅうちょう)な日本語で


「それでは、これからの未来を大きく変えていくかもしれない、若者たち代表のこちらの3人に登場してもらいましょう」


っと、声を張り上げていた。


舞、俺、楓真の順番で、番組中央の椅子に向かって登場する。


俺だけが、司会者や自分より年長の人達に、軽く会釈しながら入場するが、他の二人は全く変わらず堂々と会釈もお辞儀もせずに真っすぐに前を向き歩いていく。


(楓真はまだしも舞までも、、、)


スタジオ内が、ちょっとざわつく。

今や時の人である。


彭城楓真の登場と、火吹舞の美しさにスタッフからもどよめきが湧き上がる。


まともな一般人って俺だけって感じじゃね。


等と、自分の事を一番理解していない男は、今後の展開に自分の人生分岐路に立つことになるのだった。


コーナー担当のアナウンサーの女性が始めに俺達の素性を説明しだす。


「今や、知らぬ人はいないと思いますが、彗星の如くスターに登り詰めた、彭城楓真さんとこちらの美しい女性は、先日東京大学文科1類にトップ成績で入学された、火吹舞さんとその旦那様である火吹武将さんです。」


「そして、驚きなのは皆さん3人とも同じ高校に通っていらした、学友という事です。」


「それに火吹舞さんは、この若さにして実は夫である武将さんと高校生の時にご結婚され、2人のお子様もおられて東大トップ入学という偉業をこなした才女であり、御覧の様にとても美しい方です。」


司会者の米国人が、合いの手を挟む


「それは、凄いですね。結婚、出産、育児、受験を全て経験して、素晴らしい結果を残すというのはとても大変だった(・・)と思いますが、どうですか?」


舞は、首を司会者の方に向けて、その美しい小さな口からはっきりととした美しい声で


「東京大学に入学できたことは、大変光栄で嬉しく思いますが、これはあくまで通過点です。私たち(・・)の目標はまだ先にあります。」


司会者は、自分の手元にある台本の様なノートを見て


「目標というと、やはり夫である、火吹武将さんの会社を継ぐという事ですか?」


俺はそこで確信して、立ち上がり言葉を返す。舞の代わりに夫として、チームのリーダーとして


「司会者様のおっしゃられるのは、私の曾祖父が起こしたKABUKIコーポレーションの事をおっしゃていると思いますが、今の私はKABUKIコーポレーションとは全く関係ありません。」


またもや、スタジオ内がざわつく、、、


(KABUKIコーポレーション創始者の曾孫、、、)


スタッフ全員が、事情を全て聞いているわけではないらしい。


だが、俺は何も動じることなく、話を続ける。


「今、私は妻のお父様が経営される会社で営業をしておりますが、私には夢があります。」


司会者が、少し熱っぽく体を前のめりに話しかけてくる


「KABUKIコーポレーションの創始者曾孫の君の夢とは一体どんな物なのですか?」


俺は立ちあがったままカメラの方を向き、胸を張り両手を広げて大きな声で話し出す。


「25歳になったら、起業するつもりです。」


青い瞳の日本語が堪能な司会者は「起業とは?一体どのような事をされるつもりなんですか?そして25歳に(こだわ)るのは何か理由があるのですか?」


俺はカメラの前で起立したまま、広げた手を前に出してゆっくりとそして大きな声で、語り始める。


「CO2排出問題を始めとして、私は今の我国日本のインフラを変えていくつもりです。」



「「「「!!!!」」」」


楓真を含めて、舞やスタッフ始めその場にいる、スタッフ全員が息をのむ気を感じる。

俺みたいな若造が、何を世迷言をと思うには、俺には実際の力がある事をしっているから


「現在、電気を作るのにほとんど火力発電に頼り、電気は貯める事が出来ないので24時間作り続けています。CO2をばらまきながらです。」


「これを私は解消するための技術とインフラを整えた街を作り上げたいと思っております。そこにはAIと防犯カメラを駆使してAIが信号機の最適の点滅時間時間や、顔認証の防犯扉を各所に設置して渋滞、犯罪の無い安全でクリーンな町作りを作りたいと考えております。」


「勝手に私はその町の名を【ゼロシティ】と呼んでいます。」


「また、25歳に拘るのは他界した父が会社経営者となったのが25歳だったからです。」


シ~ン


スタジオ内が、静まる。


「こ、こほん」


司会者が咳払いをして、自分を取り戻す。

余りに突飛な事を俺が、宣言したものだから全員俺の言葉に吞まれていた。


その中、職業柄か司会者の芸能人が、立ち直り俺に言葉をかけてくる。


「それは、随分途方もない事をお考えのようですが、実現したら素晴らしいですね」


(こいつは俺の言葉を信じていないな)


直感的に感じ、それに対し言葉を続けようとした時、意外な事が起こった。


「【英語】ミスター、失礼を承知で申し上げますが、私の夫の言った言葉が実現不可能な、若者の世迷言(よまいごと)等とお考えなら、今この場で考えを改めていただきたいです。私の夫の話す言葉に不可能はありません。」


ネィティブな英語で、舞が米国人国籍の司会者に話しかける。


話しかける?


いや違うな、意味はよく分からないが喧嘩を売っているようだ。


司会者は再度驚き、一瞬言葉を失う。


っが、直ぐ立ち直り仕切り直す。生番組だから。


「こ、これは失礼しました。奥様はとても英語がお上手ですね。それも夫である火吹君の目標をサポートするために勉強されたのですか?」


舞は座ったまま


「はい、現時点では英語、韓国語、中国語、フランス語が話せますが、大学を卒業するまでには地球上のある言語をほぼ話せるようになるつもりです。」


(なんだって!!そんなこと聞いてないぞ、、、でも舞ならやりかねないな、、、)


司会者は「・・・・・」


「え、え~と す、すると、同じ学友である今やスターの彭城楓真君も火吹君のお仲間という事ですか?」


(かみかみじゃねぇ~か)


楓真は、多くを喋らずただ一言だけ、偉そうに


「そうだ。」


(おいおい、幾らなんでもそりゃ言葉たらんだろ)


スタジオ内で、カメラに写り込まない場所にいるスーツ姿の偉そうな人が、右手を大きく振っている。


(時間が、大分押しているんだな、、、生番組だからな)


青い眼をした司会者が、慌ててまとめる。


「若さとは、宝石のように素晴らしい。自由な発想と行動力をお持ちです。そして今日来ていただいた3人は既に、目標を持ち実現に向かっている。日本の将来を明るく変えていただきたいものです。」


「それでは、最後に彭城楓真君に一曲唄って頂きましょう。曲名は皆さんご存じの【片翼の堕天使】です。」


紹介と同時に、諷馬は自然に立ち上がりすた中央に立ち、マイクを掴む。


ただそれだけなのに、カッコいいじゃないか!!


男の俺でも惚れるぞ!


武将と舞の目標を始めて、周知に知らしめた一瞬だったが、それ以上に一般の人々にとっては、楓真の歌の方が魅力的だっただろう。

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