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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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金曜日の会合

日本企業として、世界に誇る自動車販売台数シェアナンバーワンのユタカ自動車 豊一颯(ゆたかいぶき)社長が、俺に話しかけてくる。


「武将君と呼んでいいかの?」


俺は、堂々と向かいに座り目を見て話す。


「よろこんで」


豊社長は、上機嫌だった。


「君の着物姿、舞踊、全部虎雄が生き返った様じゃったよ」


仁父さんも目頭を押さえながら


「先輩、僕も同じことを考えていました。」


仁父さんと亡き父虎雄は、同じ大学同じ経済学部の同級生で、豊社長はその先輩という事で、若い時より親交があったそうだ。


豊社長は当時、ユタカ自動車の3代目として経済学を学びに大学に通っていた。

葛城仁父さん、老舗(しにせ)京織物の次男坊として、オヤジはKABUKIコーポレーション創設者の孫として、友人関係を深めており、よく立ち飲み屋や赤ちょうちんでチューハイをこよなく愛飲していたらしい。


今では、チューハイをこの二人が飲んでる姿は想像することもできないが


豊社長は、更に俺を見ながら


「それに、候葺縁(こうぶきゆかり)社長の合いの手、今の時の人 彭城楓真(さかきふうま)君とのコンビネーションは最高じゃったな。娘や孫に自慢できるじゃよ」


「ところで君は、将来何をしたいのじゃ?」


突然降りかけられた、話題に俺は全くこれまた、武将流に普通に堂々と答える。


「僕の高校の恩師に言われた言葉が3っつあるのですが、その中で、【この世界に形を残しなさい】という言葉がありました。」


「それ以来私は、ずっと考えて参りました。」


「それは、将来【(ゼロ)シティ】を作り上げたいと考えております。」


威厳モリモリの豊社長は、不思議な顔をして「【(ゼロ)シティ】とはなんじゃ?」


俺は続けて、全く変わらずに武将節で話を続ける。


「今、電気を作るのに一番利用されているのは、火力発電です。しかし火力発電は、膨大なCO2を排出してしまいます。また、造った電気は貯める事が出来ず、永遠に作り続けなければなりません。」


「私が目指すのは、まず火力発電に代わる発電方法と電気を貯める事の出来る、巨大なバッテリーを備えた街を作ることです。」


「二酸化炭素を排出することなく、造った電気は町の地下に貯めておく。それに加えて、町の道路インフラには、信号機の下にカメラを設置して、全てAIを駆使して最適な信号機の点灯時間を管理させて渋滞、犯罪のないクリーンな街を【(ゼロ)シティ】と勝手に名前を付けましたが、排出ガスゼロ、渋滞ゼロ、犯罪ゼロという街を 世界に先駆けて、作り上げたいと思っております。」


俺が始めて、妻の舞にも言ったことがない将来の夢。

他人には一切明かした事が無い俺の目標。


それを始めてあった、ユタカ自動車社長に明かした最初の一瞬だ。


豊社長は、黙って俺の話を聞き、真剣な表情で


「それが、本当に可能じゃと思うのかね?」


俺は迷わずに


「はい」


応える。


「バッテリーとカメラは、どうにかなるかもしれんが、発電はどうするんじゃ?」


俺は迷わずにずっと、以前から考えていた構想を 真っすぐに豊社長の目を見て話す。


「御社の新開発されました、水素自動車の原理を発電力に大規模化出来れば、可能と考えます。」


「がははは~」


「自動車と街の発電所を同じというわけにはいかんじゃろ、万一水素爆発が起きたら、住人全てが死んでしまうかもしれんじゃないかね」


「はい、それも考えました。なので水素発電所は、海底に沈めてしまえば、良いと考えます。」


「御社の技術力なら可能だと判断いたしますが」


「がははは~小僧、わしに宿題を出してきおったわ。」


「面白い!!面白いぞ!!武将君。」


「そうか、海底に沈めるか、、、、それでは真剣に検討して、考えさせてもおうかの~」


厳しい眼付を(ほが)らかに、笑いながら好々爺(こうこうや)とかした、世界に誇る自動車会社の社長は、上機嫌だった。


「それじゃな、小難しい話はこの辺で終わりにして、皆でうまいもんでも食うて、親交を深めようじゃないか」


パンパン


豊社長が両の掌を叩くと、すっと俺達が入ってきた(ふすま)とは反対側の(ふすま)が開き、(ぜい)を尽くした立派な料理の数々が運び込まれる。


(今日はカロリー取り過ぎじゃねぇ~)


昼間は、高級ウナギを取り、夜は高級割烹で和食のフルコースだ。


豊社長は、雰囲気通り日本酒をそれも、幻の銘酒と言われる青森県の【田酒】特別純米吟醸を(ます)に注ぎ、ぐびぐびと飲む。


仁社長と縁社長は、相変わらず高級赤ワイン【ロマネ・コンティ】を大きな足の着いたワイングラスを右手の指で足を挟み込み、優雅に飲んでいる。


俺と楓真は、未成年なのでノンアルコールの発砲ワインを飲んでいた。


料理は、贅沢で綺麗で美味しい一品ばかりが次々と並べられる。

若い俺達にとっては、アルコールを(たしな)むより、腹の空腹を満たす方が魅力的に感じる。


流石にこれだけの人達を前に、がっついて食べるわけにはいかないので、ゆっくりと歓談しながら美味な食事を口に運ぶ。


今夜は、上機嫌の豊社長は、話の相手に候葺縁(こうぶきゆかり)社長を選び、話しかける。


「なぜ、経済界の女帝ともいわれるそなたが、こんなジジィの集まりに来たがったんじゃ?」


候葺縁(こうぶきゆかり)社長の長所でもあり、短所にもなりかねない、はっきりと物申す姿はどんな時でも、どんな相手でも変わらない。


「わたくし、武将様と同棲していますの。」

「なので、このお話を聞いた時一緒に居ましたのよ、そして仁さんにお願いしたところ快く、快諾いただいたので、図々しくもお座敷に上がらせていただきましたの」


豊社長は、不思議そうな顔しながら「武将君と同棲じゃと、確か武将君は、仁君の娘さんと結婚しているんじゃなかったな?」


女帝は、平然と「ええ、ですから【妾】として、おそばにはべらせていただいておりますのよ」何か問題でもあります?


誇った顔で、豊社長を見て次に俺に微笑みを向ける。


(お願いだから、そういうの勘弁してほしいんだけど、、、)


「ほっほっほっ 武将君とはそれほど魅力ある男性なのじゃな」


女帝は、全く動じずに朱色の着物の(すそ)を直し、姿勢を正し


「はい、これほど素敵な殿方はわたくし存じ上げません。」


「こ、こほん」


思わず、咳ばらいをして話を逸らそうとする、葛城仁父さんだが、元々候葺縁(こうぶきゆかり)さんと俺を会わせたのは、お父さんだからなぁ~


楓真が珍しく、自分から話してくる。

高くきれいな響くソプラノで


「将軍は、俺が唯一認めた人間でもある。」


(何その、上からのマウントは~勘弁しろよ、お前の一言は一般人の一言とは重みが全く違うんだぞ)


日本酒で、顔を赤らめて笑いながら


「今、世間で最も注目の的のスターも、同じ意見とわのぅ~」


「ところで【将軍】とは、武将君のニックネームかな?」


長身スリムのイケメンのスターが、楓真節でのたまう


「俺達仲間内では、そう呼んでいる。」


(おいおい、流石に天下のユタカ自動車社長に対して、ため口はやばいだろう)


ほろ酔い気分の銀髪の世界に影響を及ぼす男は笑いながら


「よいな、【将軍】か、実に武将君に相応しい、呼び名じゃて」


「それに、彭城楓真(さかきふうま)君、君も相当 才能に恵ま、れかなり努力してきたのじゃな。君も武将君と【同類】ということじゃな」


漆黒のスターは、正座したまま一言答える


「ああ」


(生意気だが、かっこいいなぁ~)


経済界の帝王は、楓真の無礼な態度にも感情を高ぶらせることもなく、岩山の様に動かずに堂々と受け止めている。


(流石は、日本を代表する会社の社長だなぁ~、余裕と威厳を同じ体内に持っているよ。)


帝王は、にこやかに低い声で


「頼みがあるのじゃが、是非ワシの為に一曲聞かせてくれんかな?」


漆黒のアーティストの天才は、本人は普通に喋っているつもりだが

聞いてるこっちはハラハラしながらも


「誰にも、口外しないと言うなら良いだろう」


(契約を破っても、俺の顔を立てようとこいつなりに思っているんだな、豊社長が約束を破るとは到底思えない。)


俺も立ち上がり、田酒の升を片手に上機嫌の豊社長を見下ろすかのように


「今、ヒットしている【ジャスティス・ロー】は、実は僕が作詞作曲しました。お耳汚しになるかもしれませんが、私も彼と一緒に歌ってもよろしいでしょうか?」


すると、朱色と黒と金色の豪華な、女王も立ち上げり


「それでは、私も【舞】を御披露させていただきますわ」


バンバンバン


豊社長は、自分の膝を叩き喜びをあらわにする。


「そりゃ、豪華じゃ。是非楽しませてもらいたいのぅ」


始めに、武将が舞った時とはまるで、別の雰囲気の中再び3人のパフォーマンスが始まろうとする。


楓真がスッと、音もなく立ち上がり 3人並んでテーブルより離れた少し広い場所に移る。


ススっと、足音を立てずに縁さんが、少し前に出る。


打ち合わせも、何もしていない。


誰が何をやるかもわからない中、3人は同時に日本経済界のリーダーと言ってもおかしくない、ユタカ自動車 社長 豊一颯(ゆたかいぶき)に優雅に一礼する。


俺が、リズムを指でパチンパチンと鳴らす。


「ワン、ツー。ワンツースリー。」


楓真が、静かに高い声ソプラノ声ではもりだす。


「ぅううう~ふぅうううう~」


パチン パチン パチン


俺は指を鳴らし、リズムを刻む。


候葺縁(こうぶきゆかり)さんが、日本舞踊とは、かなり違った、アレンジの【舞】を踊りだす。


静かに静かに、そして高くゆっくりッと滑り出す3人のパフォーマンス。


突然、楓真が大きく音と声を跳ね上げ、声のエンジンを高回転域にぶち込む。


「はぁああああああー」


縁さんの舞も、声に合わせて激しくなる。


イントロが、終わりついに【ジャスティス・ロー】を俺と楓真でデュエットで、歌いだす。


もちろんメインは、楓真が歌い、俺がバックを守る。

そして、候葺縁(こうぶきゆかり)さんが、見事なくらい完璧にリズムに合わせて、自由に強弱をつけて時には静かに時には激しく、また時には優雅にオリジナルで舞う。


後ろで見ている 俺からから見ても、見事(・・)の一言だ。

この人のいろいろな意味でのポテンシャル、性能は底が全くまだ知れない。


俺ももっと頑張れなければいけない。


楓真の歌は、アカペラでも全く質を落とす事が無い。

逆にアカペラの方が、楓真の綺麗で透き通る様な声が、響き渡る。


昨今では、パソコンで音を作り、声を加工して配信して、ヒットしている歌手も実在するらしいが、こいつの歌は正真正銘【本物】だ。


こいつの凄い所は、声もそうだが、スタイルや顔、纏う空気が並みでないところだ。


並み、、、嫌、超が付くほどすげぇ~


毎日、何年も付き合ってきても、この凄さは見飽きない。


3人の突然のパフォーマンスに、豊社長も仁父さんも大喜びだ。


リズムに合わせて、膝や手の平を叩きリズムを取って楽しんでいる。


楓真は既に、プロのアーティストだから客を喜ばすのが仕事だが、俺と縁さんは普通とは言えないかもしれないが、一般人であるには違いない。


その突然の3人の演技は、想像以上に完成度が高く、優雅で気品に満ち感動するものであった。


3人の芝居が終わると、豊社長は惜しみない拍手をしてくれた。


今晩の会食は、大成功の様だ。


俺にとっても、自分の夢を初めて打ち明けた、大切な一夜で会った。

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