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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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金曜日の昼

COOBデザイン株式会社本社の本社は、六本木駅から徒歩8分くらいの所に、白と黒をはっきり分けたデザイン感あふれる、お洒落な15階建ての立派なビルだ。


その最上階に、社長室があり


俺達は全員、社長室に案内され、目の前にはCOOBデザイン株式会社CEO候葺縁(こうぶきゆかり)さんが相変わらず、色気と女性フェロモンをまき散らしながら、社長室の自分のデスクの大き目の椅子に長い足を交差させて、魅力的に座っていた。


俺は、驚いているメンバーより一歩前に出る。


それは、そうだ東証一部上場企業の社長が、自分たち平社員の前にいること自体が異常事態だ。


流石の肉食系女子たちも、候葺縁(こうぶきゆかり)さんの迫力にはかなわないらしい。


俺はお辞儀をして、話し始める。


「お世話になっております。候葺縁(こうぶきゆかり)社長。」


候葺縁(こうぶきゆかり)社長は何も言わず、自分の椅子から優雅に立ち上がり、机を回って俺達の目の前に来る。


後ろのメンバーが、緊張するのが感じる。


候葺縁(こうぶきゆかり)社長は門田主任の前に立ち、じっと睨む。


背の高い門田主任は、候葺縁(こうぶきゆかり)社長の上から見える大きく開いた胸元に目のやり場に困り、思わず深くお辞儀をする。


「お世話になっております。門田と申します。」


候葺縁(こうぶきゆかり)社長は、「よし」と小声で言い、次に安藤聡先輩の前に立つ。


「確か、あなたは帝城高校でお会いした、素敵なナイト様ですね。」


安藤先輩も緊張しながら、「あの時は失礼いたしました。」と言いまたまた、深くお辞儀する。


女王は「失礼な事なんて、何もあなたはしていないわよ。あの時も言いましたけど、あなたは素敵なナイト振りでしたわ」


そして、次に近藤直子さんの前に立ち、話しかける。


「あなたのお名前と出身大学は?」


近藤さんは、誇らしげに「近藤直子。出身大学は早稲田大学 経済学部です。」とはっきりと答える。


「っそ」


女王は、無視して次に歩みを進める。


寸動永誇(すんどうえいこ)さんの前で、同じ質問を投げかける。


「あなたのお名前と出身大学は?」


寸動さんも胸を張り誇らしげに「寸動永誇(すんどうえいこ)上智大学です。」


「ふ~ん」


「二人にお聞きしますわ、当社が御社との取引額はご存じかしら?」


寸動さんが、はっきり答える。


「おかげさまで、先月は3560万円で、(おおむ)ね1か月4000万円前後のお取引を頂いております。」


女王は、更に聞く「その売上額は、そちらにとってどれほどの取引先になるのかしら?」


寸動さんが、変わらずに答える。


「御社にとりましては、大変大切なお客様です。」


「そっ」


「ところで、あなた方お二人は、火吹係長の事をどう思いかしら?」


「「???」」


いきなり、仕事の話と関係なく俺の話になった。

嫌な予感しかしない、、、


「火吹係長は高校中退で、未成年で係長。あなた方の上司として相応しいとお考えなのかしら?」


近藤さんが、女王陛下に物申す。


「それは、当社内でのことなので、お答えする義務を感じませんが」


色香漂う、女帝は爪をとぎ、大きく口を開け牙で食らい尽くすように苛烈な言葉を吐きだす。


「それが、上顧客社長に対する態度とは思えないわね。」


門田主任が、おたおたしながら割って入ろうとする。


候葺縁(こうぶきゆかり)社長、彼女らは営業ではなく、、、」


候葺縁(こうぶきゆかり)社長はチラリと、背の高い門田主任を見て


「京仁織物株式会社の社員でもないの?」


寸動さんが、感情的にヒートアップして言葉の炎を吐く。


「そのような事を、おっしゃるのは、候葺縁(こうぶきゆかり)社長と火吹係長の間に親密な関係があり、火吹係長が候葺縁(こうぶきゆかり)社長に私たちを納得させてくれとでも言われたんですか?」


「あなたは、論外ね。人を見る目も謙虚さも備わっていない。地球は自分を中心に回っているとでも思っているの!!」


女王陛下は、ついに業火を身にまとい、氷の意志ある槍の言葉を投げつける。


あまりにらしくない。と俺は思った。


しかし、候葺縁(こうぶきゆかり)の攻撃は更に続く。


「近藤さん、寸動さんあなた方が優秀で、頑張ってこられたのは、よくわかります。しかし組織や世の中はあなた方が思う程、優しくなくてよ。」


「今月限り、京仁織物株式会社との取引は中止させていただきますわ!!」


ついに、女王陛下の決定は告げられた。


門田主任と安藤先輩がおろおろする。

それは、そうだ。

自分たちのせいで、大きな取引先を失ったとあっては、左遷もしくは希望退職者リストに名を載せる事になりかねない。


始めて肉食系女子たちの顔に焦りと動揺が見られる。


そこで俺が、自然体で堂々と話に加わる。


候葺縁(こうぶきゆかり)社長、取引を中止されるのは、私の係の者が失礼なことを言ったせいですか?」


「そう言う事になるわね」


「私の部下が、失言をしたことは謝罪しますが、それが原因で、取引自体を辞めるとは、いくら何でも大人気ないのではありませんか?」


「もし、どうしてもお気持ちを変えられないというのでしたら、私が(・・)御社とのお取引を中止させます。」


「部下の失態は、上司である私の責任でもあります。しかし、彼女らに非はあるものの、取引中止の責任まであったとは私には思えません。」


「よって、私の責任で、御社とのお取引を中止いたします。」


俺は、最初から最後まで変わらず、堂々と声を荒げることなく、普通に話す。


女王は、両手を豊かな胸の前で組みながら、近藤さんと寸動さんの前に行き


「わかった? 京仁織物株式会社と取引しているのは、そちらの商品に魅力があるのは事実だけど、もし火吹係長が京仁織物株式会社を退職して、ライバル会社に就職したら、内は火吹係長の新しく勤める会社に全部乗り換えるわよ。」


「所詮、会社同士のつながりなんて、担当同士の人間関係が一番大切なのよ。」


「そして、これが一番大事な事だけど、火吹武将という人間は、上司として人間として男性として超一流だという事よ」


「彼は、内との取引を自分で中止したとしたら、その穴埋めを自分の力で、新規顧客を必ず取ってくるでしょうね、会社には絶対迷惑をかけないために。」


「それが、【火吹武将】という人間なのよ。」


「それと、これもきちんと言っておくけど、私と彼は男女の関係もありませんからね。」


「クリーンな信頼関係よ」


(縁さん、俺の事を心配して、演技しているんだ、、、)


「っと、言う事で取引中止の話は無かったことにしましょう」


俺以外の一同が、ホッと安堵する雰囲気が伝わってくる。

俺だけは、変わらずに堂々と自然体でいるだけだ。


そして、門田主任が感謝と謝罪と退出の挨拶をしている所に、最後の核爆弾が落とされた。


「ところで火吹係長。今晩の【ユタカ自動車】の豊社長との会食は、着物で行きましょうね。」


「「「「えっ!!」」」」


当然の結果だが、皆に驚きが一気に走る。

そりゃそうだろう、いち係長が天下のユタカ自動車社長と会食するなんて、有り得ないものな。


散々振り回されて、やっと解放された時は既にお昼時だった。


俺は六本木にある、よく亡き父に連れて行ってもらったうなぎ屋に皆を連れて、行くことにした。


始めてできた部下との、人間関係を構築するために、、、


散々食い散らかされた後だけど、、、


暖簾(のれん)をくぐり、扉を開け人数を受け付けの女性に伝える。


寸動さんが、俺に話しかける「係長、ここって高級うなぎ屋さんじゃないですか」


俺は、後ろを振り向き


「私の初めての係の食事会です。せっかく六本木に来たのですから 美味しいものでも食べて帰りましょう。」


寸動さんは、俺を心配する顔で


「いえ、そうではなくて、係長失礼ですが、大分高いお店ですよ」


「そこは、私のお小遣いで出しますので、気にしないで下さい。」


俺の事情を知る、安藤先輩だけ安心した顔をしているが、他のメンバーは、動揺しっぱなしだ。


一般的には、そうなのかもしれない。

特上うな重がランチで1人前、12,000円(税別)だからな、、、

5人分で6万円+税&サービス料、席料。


未成年の係長に払える金額にしては、確かに高い。


席について、注文すると同時に寸動さんと近道さんが、噛みついてくる。


「COOBデザイン株式会社の社長と何であんな、深い信頼関係を係長が築けたのですか?」


「ユタカ自動車社長と会食って、一体どういう事なんです?」


たたみかける様に、話し込んでくる。


俺は葉美香噛(はみか)みながら


「一生懸命仕事してるだけですよ。」


「まぁ、とりあえず、美味しいウナギでも食べて親睦を深めましょう」


ほくほくとした、高級国産ウナギが湯気をまき散らして、テーブルに配膳される。


流石にランチで1万円を超える、うな重はうまかった!!

肉食女子も、食欲に釣られて俺への追及は一時お預けとなった。


安藤先輩と門田主任は、既に先に食べ始めていた。


「係長!こんなうまいウナギ初めて食べましたよ!!」


安藤先輩が、目を輝かして微笑み一杯で俺にお礼を言う。


「うん、これはめちゃくちゃ美味しいですね。係長」


門田主任は、今年29歳になる長身の心優しい独身だ。

結婚する気は、あるのかないのかは話したことがないので、知らないが、良い夫になる素質は十分あると思うと俺は思っている。


極上ウナギを全てたいらげて、一息つき会話が始まる。


寸動さんが、満腹なお腹をさすりながら、今までとは違う雰囲気で、俺に話しかける。


「係長の事をもっと知りたいですね。お話を聞いても良いですか?」


俺は、寸動さんの纏う空気が変わった事に気が付いていたが、何ら普段と変わることなく話し始める。


「私の事ですか、、、そうですね妻と子供が二人いますね。」


「「え~!!」」


寸動さんと、近藤さんが声をそろえて、驚く


(いつもの事だけど、そんなにおかしいかな?)


「18歳で、結婚、父親という事ですか?」


「そうです。妻が妊娠したので、高校を中退して働き始めました。たまたま知り合いが京仁織物にいたので、入社できました。」


裏事情を知っている、安藤先輩は黙って只聞いている。

信頼のおける人柄だと俺は、密かに思った。


近藤さんも今までとは全く違う、話し方で俺に話しかけてくる。


「それで、たった一年で実績を作られて、係長昇進ですか。」


「まじめに仕事しているだけですよ。」


近藤さんは、じっと俺を見つめて


「係長は、簡単そうにそうおっしゃいますが、私の大学の同期でも皆真面目に仕事してますが、係長になった人はまだいません。」


「COOBデザインの候葺(こうぶき)社長のおっしゃる通り、火吹係長は特別な、方なのですね。」


「そんなことありませんよ、どこにでもいる普通の男ですよ、僕は」


安藤先輩が、ついに溜まりかねたらしく、発言する。


「いや、自覚が無いのは係長の悪い所ですよ。係長は充分特別です!」


「ははは」


笑うしかないよ、、、


あっという間に、お昼のひと時は終了し、高級ウナギ店を出る、火吹係長のメンバーだが、入った時と出る時の雰囲気は全く異なるものとなっていた。

肉食系女子の火吹係長の見る目、態度が全く180度変貌していた。


優秀な大学を卒業した、プライドより火吹武将という人間の性格に惚れ込んだのだろう。


頭の良い人間ほど、自分を変える事が容易なのだろう。


二人とも、もともとのポテンシャルは、きっと相当高いのだ。


渋谷にある、京仁織物株式会社 本社に帰社すると、丁度午後からの支度をしていた、俺の所に木下課長が慌てた様子で、走ってきた。


「火吹係長、申し訳ないんだが、トラブル発生だ!!」


木下課長は、髪の毛がやや薄いがキリッとした、眼光は鋭く仕事は間違いなく出来る男性だ。

その課長が、焦りながら俺に助けを求めてきた。


「どうしました?」


俺は課長の動揺しきった態度とは裏腹に、全く変わらない態度で話しかける。


木下課長は、まくしたてる様に大量の資料を持ちながら、話してくる。


「庶務に任せていた、この資料をまとめる仕事が担当の庶務の子が風邪をひいていて、誰も引き継いでいてくれていなかったんだよ。」


「この資料は、今日中に顧客担当に渡さなければならない資料なんだ。今から手伝ってもらえるかな?」


大量の資料を持ち大量の汗をかきながら、俺の顔をじっと見つめる小柄だが、厳しさの宿る目で俺を見る。


俺は即断する。


上着を脱ぎ、シャツのボタンをはずして、腕まくりする。


「わかりました。午後の予定はキャンセルして、お手伝いします。」


「僕も手伝うよ」


門田主任と安藤先輩が、同時に俺の行動に準じる。


意外だったのは、近藤さんと寸動さん迄も


「そういう仕事は、私たちの方が早いですから、こちらに回してください。」


っと、声をそろえて言う。


「それに、係長は今夜は大事な会食の予定が入ってるじゃないですか!皆で手分けしてやっつけましょう」


俺の起こしたアクションに瞬時に応じる、優秀でやる気あるメンバーたちだ。


「よしじゃ、課長。資料をこちらに下さい。」


「助かるよ。」


ドサッと、大量の資料の束を俺のデスクの上に置く。


サッと、近藤さんと寸動さんが、資料を分別してそれぞれに割り当て、即座にパソコンに打ち込み始める。


データは係全員で、サーバーにあげて、共有しお互いの間違いを確認できるようにして、数分後には作業が始まっていた。


思わず驚くのは、自分でお願いしてきた木下課長だった。


「か、火吹係長、、、」


感嘆のあまり、言葉が出てこない。

そりゃそうだ、法人営業第2部でも超有名な気の強く、自己主張が強く協調性に欠ける、厄介扱いだった女性2名をたった一日で、従え一致団結した優秀なチームを火吹武将は作り上げていたのだ。

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