舞の決意
泣いて泣いて泣いて
泣いて泣いて泣いて
泣き疲れて、いつのまにか寝てしまった、、、
親父とお袋の入った骨壺を安置している畳の和部屋だ。
朝、起きると顔が沢山泣いたせいか、膨れ上がっていた。
気が付くと、毛布が掛けられていた。
ツネさんがかけてくれたのかな?
っと、横を向くと、、、
見知った、腐れ縁の幼馴染、、、
舞が寝ていた、、、
裸で。
な、なんだどうした?
俺は何かしたか、パニックになる。
気が付くと自分も裸だ。
どうした?どうした?
なんだなんだ、、、
舞が微かに寝言の様に囁く
「おはよう、武将」
頬を赤らめて言う、、、
「お、おはよう、、、」
俺は気まずい雰囲気をどうしていいか分からず黙ってしまう。
舞はゆっくり起き上がり、発達途上の美しい裸体を惜しげもなく俺の前で服を着始める。
俺は直ぐ、後ろを向き着替えを見ないようにする。
着替える衣擦れの音が妙に艶めかしい、、、
舞は全く気にならないらしい、、、
「武将も着替えれば?」
いつもの様に、変わらず普通に話しかけてくる。
俺は慌てて、服を探し着替えると舞に向き合う。
「どうして、うちにいるんだ?」
「あなたを一人にしておけなかったから、、、これからは一緒に暮らすわよ」
「はい?」
な、何を言っているんだ、、、
いくら超幼馴染の腐れ縁で、両親同士親友だったとしても中学二年生で同棲はまずいだろう、、、
部屋は腐るほどあるが、異性と同棲は俺の頭の中には全く想像できなかった。
舞は毅然と言い放った。
「武将と同じ部屋で一緒に暮らすのよ、なんか文句あるの?」
なんだって、、、
俺は両親を亡くしたばかりで、心の整理も着いていないしこれからどうして良いのかもわからない。
そんな状態で舞と同棲、、、同じ部屋で!
何を馬鹿な事を言っているんだと思い、口に出す寸前に、、、
俺の口は舞の唇に塞がれた。
「!!」
衝撃だった。
舞の唇の柔らかさに驚いて、こんなに近くで見る彼女の美しさに更に新鮮な驚きを感じて両親が他界した事はその時一瞬頭の中から消えた。
舞は唇を離すと、中二にしては豊かに育った、胸を誇らしげに張り宣言する。
「私はずっと昔から、武将が好きだった。」
「何か問題でもある?」
「・・・・・・・・」
俺の頭はメモリーオーバーで考える事を停止した。
それから、舞はシゲさんとツネさんに朝の挨拶をして、これから同居する事を伝えた。
シゲさんは、昨晩 舞の父親が車で舞を送ってきている事を知っているので何も言わず、物静かに挨拶を交わす。
「よろしくお願いいたします。舞様」
ツネさんはびっくりして
「ご両親は御存じなの?本当にそれでいいのと」
自分の娘に言う様に心配ぶりをそこら中に振りまいていたが、舞の固い決意と両親の許可は取ってある事実を知ると朗らかに微笑み
「よろしくお願いしますね、舞お嬢様。」
と告げた。
その時、正門の来客を告げる電子音が鳴る。
シゲさんが、直ぐにインターフォン越しに会話をする。
二言、三言話しインターフォンを保留にして俺の方を向く
「武将様、彭城諷真様がお見えでございます。武将様とお会いしたいとの事でございます。」
俺と舞が同時に
「「彭城が!」」
「何でここに?今日平日だろ、学校はどうしたんだよ」
俺が驚いて、叫ぶ。
彭城諷真、俺と舞の同級生。帝城中学2年生同じクラスだが、余り喋ったことが無いというか、、、
諷真が他人とコミュニケーションを取りたがらない性格だから、人と話しているのをあまり見た事は無い。
イケメンなのは知っているが、、、
シゲさんは慇懃に
「お会いになりますか?」と聞いてくる。
俺は動揺を隠さず
「会うよ、一階の応接間に案内してもらっていいですか?」
「かしこまりました」
と言い、インターフォンを取り
「只今、お迎えに参りますので、少々お待ちください」
っと、伝え颯爽と部屋を出て正門まで迎えに行く。
なんだ、なんだいろんな事が起こりすぎて、俺の頭は考察停止状態になっている。
舞が優しくトンと背中を叩く
「行きましょ」
「彼が、何しに来たかちょっと興味あるわよ」
「そうか?」
「だって、女子の憧れナンバー1よ、私にとってはナンバー2だけどね」
それじゃ、舞のナンバー1は誰なの?
とは聞けないよなぁ~
俺の部屋は2階にある。
一階まで幅が広くて、でっかい階段をゆっくりと降りていく。
少し待っていると、シゲさんが彭城諷真を案内してきた。
「どうぞこちらでございます」
と、扉を開け案内する。
彭城は舞が一緒に居る事に少し驚いたようだが、顔には出さず俺に向かって黙って歩いてきた。
俺から話しかけてみる
「珍しいな、彭城どうしたんだ?」
彭城は一言
「俺とバンド組もう」
っと、言った。
「はい?」
俺は両親無くして、傷心癒えず、舞が勝手に転がり込んできて告白されて、唇奪われて、昨晩はなにしたか全く覚えておらず、想像もしたくなかったが、、、
そんな状態で
バンド?
何が何やらてんやわんやで、再びフリーズ。
舞が明るく喋りだす。
「彭城諷真君ってさ、本気で音楽のプロ目指しているってホントなの?」
「ああ」
短く答える。
こいつも言葉足りねぇんだよな~こいつ、、、
「なんで、俺とバンド組もうなんて思ったんだ?」
「お前しかいないと思っていた。」
男に告白されたの?俺、、、
確かに、2歳から舞と一緒にピアノを習ってはいたけどプロ目指す気持ちは俺にはないなぁ~
彭城は珍しく、長く喋りだした。
「中一の音楽祭で、葛城はピアノ弾いて、火吹はソプラノ歌っていただろう」
「その時に、こいつらとならバンド組んでもいいなって思った。」
「なになに、バンドやるのって私も入っているの?」
自分に指さして驚く、舞。
「ああそうだ」
返答はやっぱり短い。
「「・・・・・・・」」
どうしたもんかね、、、
今はそれどころじゃないんだけどな、、、
珍しくシゲさんが、会話に入ってきた。
「武将様、よろしいではございませんかおやりなさいませ」
ツネさんも「そうですよ、気晴らしにもなりますし、家に籠っていても良い事ありませんよ」
そりゃそうだろうけどさぁ~
俺の身になってくれよ、、、、
そうか、、、
彭城も、、、
舞も、、、
シゲさんも、、、
ツネさんも、、、
俺の事が心配なんだ!
だから、明るく振舞ってくれているんだ、、、
シゲさんだって、ツネさんだって辛いに決まっている。
親父やお袋とはすげぇ仲良かったもんな、、、
本当の家族だったよな、、、
辛いに決まってる。
舞や彭城もそうだ。
俺がしっかりしなくちゃ!!
皆に心配かけてる場合じゃない。
俺が火吹家当主なのだから、しっかりしなくては!!
「いいぜ、やるよバンド」
「条件が一つある」
「何だ?」短く彭城が聞く。
「バンド名は半蔵だ!」
彭城諷真は少し考え、ニヤッと笑った。
忍者の風魔一族に敵対していた服部半蔵から名前を取ったことが理解できたから
「いいだろう」
交渉成立。
ここから、HANZOがスタートする。
皆に気を使ってもらって、、、