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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
45/107

T・T・D Co.LTD

シゲさんは、いつもと変わらずにそして堂々と話を続ける。


「ミスターの会社にスパイがいますね。開発に携わった人間は何人いますか?」


「ス・パ・イ、、、」


流石の歴戦の勇将達も驚く事を平然と、シゲさんは静かに語る。


「ファンドが、直接手出しをせずに銀行を傀儡(かいらい)とする時は、ほぼ、内部事情を把握しているスパイ、又は裏切者がいます。」


マルガッスさんは、シゲさんの話す内容を飲み込むのに少し時間をかけた。


そして話し出す。


「この技術開発を担当し、存在を知っているのは、私を含めて4人だけです。しかも全員、我が社の取締役で~す」


シゲさんは、悲しげな顔をして


「こういう言い方は、ミスターに大変失礼かと思いますが、もしその中に裏切り者がいたらどうされますか?」


金髪を揺らして、背の高い米国人は立ち上がり


「もし、それが事実なら~背任行為で~す。」


「絶対許される事ではありませ~ん。クビです!」


シゲさんは、静かに立ち上がりリビングにある書棚の引き出しを開け、万年筆を4本取り出す。

そして、その万年筆をマルガッス・シュタインさんに手渡す。


「これは、KABUKIコーポレーションが新開発した、万年筆を模したレコーダーです。画像もキャップの装飾品を模した部分がカメラで撮影します。」


「もちろん防水で、データはその場で指定のコンピューターにWi-Fiで飛びます。証拠は万年筆の中には残りません。悪用されては困るので、販売は一切しておりませんが」


「これで~裏切者を探せと、、、」


「はい。新技術開発記念とでも言って、プレゼントしてください。計画が失敗したことを知った、裏切者は必ず何らかの行動を起こすでしょう。」


「出来ますか?」


「やりますで~す。悪い奴は許さないので~す」


「それでは、ご報告をお待ちしております。」


シゲさんは、丁寧にそして慇懃(いんぎん)にお辞儀をしていつもの定位置に戻り直立不動となる。


リビングに座る、歴戦の勇将たちも、KABUKIコーポレーション先代社長の右腕だった、古参の幕僚の能力の高さと周到な準備に舌を巻かずにはいられなかった。




そして俺達が、楽器機材をかたずけてリビングに戻った時には、いつもと変わらず、皆団欒(だんらん)とした雰囲気だった。


ミスターマルガッスさんが、ちょっと(はしゃ)いでいるくらいか、、、


しかし、舞と桜木優香さんと唯母さんの姿が、そこには無かった。


俺はちょっと、違和感を感じたがきっと子供たちを桜木さんに見せに行ったのだろうと思い込んだ。


背の高く、青い瞳のミスターは明るく俺に近寄ってきて


「武将さん、あなたとお話がしたいで~す」


っと、唐突に話しかけてきた。

そこに、色香漂う経済界の女帝はすかさず割って入る。


「ミスターマルガッスの会社で、新しく半永久的に劣化しない特殊コーティング剤を開発されたそうです。しかも原料は塩なんだそうですわよ」


「コーティング剤を開発、、、」


俺は突拍子もなく、聞かされた内容を頭脳をフル回転させて飲み込むことに努めた。


女帝は更にたたみかける

「ええ、武将様がご提案された、COOB(コブ)デザインハウスの合皮の家に使えそうですわよ」


「!」


(それは、凄いぞ。ビッグビジネスチャンスだ、それに蛇目野社長の靴にも使えるかも、、、)


「マルガッスさん、よろしければ詳しくお話を聞かせて下さい。」


青い瞳のCEOは両手をあげ大げさな手ぶりで


「もちろんで~す」


ミスターは、自分が開発した技術と効用と実験結果を親切丁寧に日本語で説明してくれた。

一部日本語に訳すのが難しい単語は、候葺縁(こうぶきゆかり)さんがすかさず和訳してくれた。


聞けば聞くほど、マルガッス・シュタインさんの開発した技術が凄いことが理解できた。


多種多様な方面で、転用が可能な事も頭の中では、物凄い勢いで、ビジネスモデルが湧いて出てきた。


(これは、凄い事になるぞ。)


俺は青い瞳の、父の戦友の目を見て話をする。


「この技術の日本への提供先をここにいる、方たちの会社だけにしていただく事は可能ですか?ミスター」


自分の会社だとは知らずに、背の高い米国人にたずねる火吹武将の態度は真剣で、必死であった。


マルガッスさんの答えはちょっと意外なものだった。


「それは、できません。」


(えっ?)


「この技術は全て、武将様だけ(・・)にお預けいたしま~す。」


「!!」


(俺個人に、、、いくら父に恩があるからと言って、、)


にこやかに微笑みながら、赤葡萄酒をゆっくりと(たしな)みながら、義理の父親であり最高上司である、葛城仁父さんが口を挟んでくる。


「いいんじゃないかな?武将君にとっても僕らにとってもそれが一番自然で良い形だと思うよ」


経済界の女王にして、女性の色香漂う、女王も即答してくる。


「そうですわ。我が社も武将様個人から技術を買い取ることにいたします。」


「決まりで~すね」


立派な体格で、背筋がピンと張った素敵なアメリカンなCEOは、立ち上がり「それでは~、乾杯いたしましょう」自分の持ってる、バーボンのロックグラスを右手で、前に出しちょっと、オーバーアクションで叫ぶ。


葛城仁と候葺縁(こうぶきゆかり)は直ぐ様、立ち上がり自らの大きく丸い高級赤葡萄酒グラスを同じく右手に持ち前に出す。


(えっ!お、俺、、未成年だよ、、、)


(すか)さず、シゲさんがノンアルコールの発砲白ワインを細長いグラスに入れて、後ろから俺に手渡してくれる。

何とも、どこまでも気の回る有能な老獪(ろうかい)で信頼するオヤジ代わりの紳士だ。


俺もシゲさんから渡された、グラスを持ち右手を前に出す。


マルガッス・シュタインさんが、俺を見て


「ミスタータケマササマ、乾杯の音頭をプリーズで~す」


片言で、俺に言葉を求めてくる。


俺は逡巡せずに即興で、思いついたことを言う。


「これは、間違いなくビックビジネスになる事でしょう、皆様のお力をこれからも、未熟な私にお貸しいただけますようお願い申し上げます!」


「乾杯!!」


「「「乾杯!!」」」


カ~ン!!


澄んだ、心地よいが気持ちの籠った、甲高い音が鳴り響いた。


何故か、仁父さんも(ゆかり)さんも頬を赤らめて、興奮したように喜び、グラスを重ねる。


俺以外の三人の大人は、グラスに残ったアルコールを一気に飲み干した。


そして、マルガッスさんが空いたグラスを床に叩きつけて割った!!


ガシャン!!


俺が驚いていると、すかさずに仁父さんと(ゆかり)さも同じように、空いたグラスを床にたたきつけ割る。


ガシャン!ガシャン!


仁父さんが、俺の方を見て優しく微笑み


「これは、古来 戦いに赴く将官の儀式の様なものなんだよ。」


と説明してくれる。


「わかりました」


と、俺は言いノンアルコールの発砲白ワインを一気に飲み干し、同じように空いたグラスを床に叩きつけ割る。


ガシャン!!


4度鳴る、火吹低の床を高級グラスの破片が散らばる。

火吹武将の知らぬところで行われた、覚悟の出陣式でもあった。


10兆円という途方もない、お金をかけた事業の始まりだ。


キラキラ光る、高級グラスの破片を残して、武将の思惑とは別に急速に動き出す。



-2週間後-


平日のお昼時、火吹低の電話のコール音が、軽やかに鳴る。


俺は当然仕事に行っている。仁父さん、(ゆかり)さんも同じく、舞や楓真はそれぞれ学校や仕事場に行っていて留守だ。


残るのは、子供たち二人と葛城唯母さんとツネさんとシゲさんだけだ。

火吹衛士隊の隊長の谷樫心衛は、正門と本低の間にある、衛士塔に常駐している。


静かにシゲさんが、スピーカー付きの受話器替りのボタンをタッチする。


相手はいきなり大声で話してきた。

受話器ではなく、スピーカーから声が大音量で溢れ出す。


相手はかなり興奮しているようだ。


シゲさんは、黙って会話を聞いていた。


「シゲさ~ん、犯人が見つかりましたで~す!!」


重道勘蔵こと今年56歳の執事は黙って、話を聞いていた。

相手は、当然だがマルガッス・シュタインさんだ。


「やっぱり~取締役で~お金で会社を売っていたんで~す」


「あの万年筆のレコーダーが、決め手となりましたで~す。」

「シゲさ~んにはとても、感謝してま~す」


重道勘蔵は、静かに一言。


「裏切者は、一人ではありませんね。」


「・・・・・」


珍しく、陽気なマルガッスさんが黙り込む。


「言いにくいです~が、取締役の4人全員が~裏切者でした~」


シゲさんは、全く異なることを口に出し、スピーカー越しに話しかける。


「ミスターの会社の従業員は、何人いますか?」


「・・・・・」


またもや、逡巡する金髪で青い瞳のアメリカ人は、言葉に詰まる。


「大体、1200人位いますが、、、それが~何か関係ありますか~?」


勘蔵は、いつもどんな時も変わらずに、話す。


「役員全員を解雇しては、会社の維持に問題が生じるでしょう、それに役員の側近もグルだと思わずにはいられません。」


「優秀で信頼できる人員を20名、KABUKIコーポレーションより、そちらに派遣するように、火吹竜治(たつじ)社長に掛け合ってみましょう」


「それは~とても助かりま~す。私もどうしたものか~悩んでいたので~す」


「ミスター、今更ですいませんが、御社の社名を教えていただけますか?」


電話越しにでも想像できるように、背の高く立派な見た目の白人は胸を張って宣言した。


「【T・T・DトラオテクノロジーデベロップメントCo.LTD】です。」

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