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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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ホワイトナイツ

桜木優香さんのバイオリンが、力強くロック調に力強く、時には軽やかに魔法の腕の様に、弦を持つ右手が動き、迫力のある音を鳴り響かせる。


そして、楓真と俺と舞が3人で、ギターとキーボードを弾きながら綺麗に楓真の声とはもる。

これが、HANZ(_)の本骨頂。

特に舞のはもりは、高音で綺麗でよく通る素晴らしい声だ。


それに、ベースのタカヒコとリズムをしっかり刻み続けるホトのドラム。


これが、俺達。


HANZ(_)+1人。



虎ノ門のど真ん中にある、火吹邸は1時間以上に及ぶHANZ(_)+桜木優香さんの復活歓迎ライブも午後8時を超えた。

いくらオフィス街のど真ん中、日曜日で、住民はほとんどいないとはいえ周辺への配慮もあり、終了を迎えた。


舞が最後に、皆に一言。


「桜木優香さんとは、これから帝城高校で会う事が出来ます。名残惜しいですが、今日はこれで終了致します。」


「皆さんも気を付けてお帰り下さい。」


帝城高校の女王の火吹舞の一言の重みは、半端ない。

皆、まだ居たい様だがゆっくりと少しづつ動き出す。


谷樫心衛(たにがししんえい)土門武士(どもんたけし)の火吹衛士隊が、皆を誘導するように両手に、赤く光る誘導灯を持って正門に級友たちを案内する。


帝城高校の級友たちは今この興奮する気持ちを持て余しながら、明日からまた始まる日常の事考えて、帰路につき始める。



急遽設置した、楽器機材はHANZ(_)のメンバーが自ら片付ける。


そんな中、機材を片付けている俺に走り寄ってくる、華麗で色香溢れる女性が、珍しく興奮したように俺に身体を押し付け、ささやくように話しかける。


「武将様、とても素晴らしいライブでしたわ」


「私、感動しました。武将様を更にお慕いいたしました。」


すると、すかさず黒髪が見事な、俺のファーストレディである舞が割って入る。


「ちょっと、オバサマ 私の夫に近寄りすぎなんじゃありません!」


火吹家の女帝は両手を胸に組んで、ぎらついた眼を(ゆかり)さんに烈火のごとく向ける。


「サービスはもうおしまいです。居候は居候らしくなさってくださいな」


大人の色香漂う、美しき女性は優雅に俺から離れ、舞に向かってお辞儀する。


「これは、大変失礼いたしました。年甲斐もなく少々興奮しすぎたようです。失礼いたしました。舞お嬢様。」


ゆっくりと流麗に頭を下げながら、大人の余裕からか口元に笑みが見える。


「皆さん、夜も冷えてきました。中に入りましょう」


普段はひっそりとしているが、実は一番の火吹家の実力者である。


葛城唯母さんだ。


ホトとタカヒコ、ミッドが俺の方を見て、後は任せて家に入っていろと言われたが、舞と桜木さんや大人たちは屋敷に入ってもらったが、俺はみんなと片づけを手伝った。

(ここ、俺んちだしな、、、)


楓真だけは、明日の撮影が速いので先に食事をとり、寝ると言って自室に戻っていった。


不器用なあいつらしく、俺達に一言


「わりぃ」


と言い、桜木優香さんには


「よかったぞ」


っと、言って屋敷に入っていった。


何をしても絵になる男は違うなぁ~


桜木優香さんも、一言 楓真に褒められただけで、頬を染めて嬉しそうにしているし、やっぱ持って生まれたスター性っていうのかなぁ?


俺も負けないように精進しよう!!


っと、思いながらホトとタカヒコ、ミッドと共に楽器機材を地下室迄、運び込む。


これが結構、大変なんだよ。

ドラムだけで、12セットもあるし嵩張(かさば)るし、キーボードや、アンプ、スピーカー、ミキサーなんて大の男でも一人じゃ運べない。


でかい台車に積み込んで、皆で押していく。

原始時代と全く変わらない、単純労働だ。

運ぶものは、最先端の楽器機材で、価格にしたらいったいくらになるか、わからない。


何しろ、カスタムしまくりのオンリーワンの機材ばかりだ。

オヤジが若い頃、俺と同じくギターに(はま)って、金に糸目をつけずに集めたらしい。


ギブソンのオリジナル限定版なんてものまであるから、オークションンに出したら、一体いくらの値段が付くかわかりもしない。


それを俺が音楽を始めた頃に、最新のものに変えられる物は変えたらしい、オヤジなりに俺に音楽方面の期待も込めていたのかもしれないけど、近くに超天才がいるから、俺はそっちの方面では、プロになるなんて簡単に言えなくなってしまった。


楽器をかたずけてる、俺達とは別に大人たちは皆リビングに集まり、桜木優香さんの復帰祝いを兼ねた、宴会(・・)を開いていた。


マルガッス・シュタインさんは、バーボンをロックで飲んでおり、カランとなる氷の音が澄んで心地よい響きだ。

仁父さんと(ゆかり)さんはいつもの赤葡萄酒を大きなグラスに優雅に液体を回しながら飲んでいた。


未成年の舞と桜木さんは、ジュースを飲みながら談笑していた。


ツネさんと唯母さんが、給仕に走り回っていた。


シゲさんは、いつもの執事の姿のまま、入り口近くに直立していた。


っと、突然。


マルガッス・シュタインさんのスマホの着信音が、大きな音で鳴り響く。


「失礼しま~す」


スマホに映し出される連絡先に、ちょっと緊張したような表情を見せて立ち上がり、部屋の隅に向かいながら着信のボタンを押す。


部屋の隅で、英語で話しているマルガッス・シュタインさんが突然大声で


「ホワッツ!!」


っと、叫んだ。


仁父さん始め、大人たちが一斉に歓談をやめて、マルガッス・シュタインさんの話が落ち着くまで、待つ。


上場企業の経営者が、揃っているこの屋敷に、今かかってきているマルガッスさんの電話がただ事でないことを一瞬で、かぎ取る。


どんなトラブルも、大抵一本の電話から突然始まるのだ。

嫌という程、体験している、優秀な大人たちは何も言わず、アルコールのグラスをテーブルの上に置き、ただ待つ。


30分くらい、マルガッスさんの電話は続いた。

その間、言葉を吐き出す大人はここには一人もいなかった。


ただ、訳が分からずにいる桜木優香だった。


舞と候葺縁(こうぶきゆかり)さんは英語が堪能だ。

何を話しているか、黙って聞き取っていた。


やがて、マルガッスさんはスマホを切り、肩を落として暗い顔でいつもの陽気さは全く気配を消して、重苦しい顔をしたマルガッスさんは、リビングで沈黙して待っている、大人たちの所にやってきた。


仁父さんが、代表して話を始める。


「ミスター何かありましたか?」


マルガッスさんは、リビングの椅子に座るなり顔を両手で覆いこんで、下を向く。


「私の~会社が乗っ取られそうで~す」


仁父さんは、冷静にそして静かに諭すように話す。


「TOBを仕掛けられているのですか?」


※TOBとは自社の株式を50%以上保有して、会社を乗っ取ることであるが、敵対TOBと協議和解TOBなど種類は様々だ。


「そうで~す」


葛城仁は、そこで唯母さんに向かって、感情のこもらない声で話しかける。


「母さん、舞とご友人を連れて、子供たちの所に行っていてくれないかい?」


唯母さんは、慣れたように一言


「はい」


と、言い私と桜木さんに向かって「行きましょうかね」と声をかける。


私は仁父さんに、ただならぬ用件を話し合うのに、【子供の自分がいてはいけない】と判断したようだ。


一瞬で、私は無性に腹が立った!


そんな私の感情を読み取って、唯母さんは優しく私の背に手を当てそっと


「舞、今お父様たちは戦場にいるのよ、私たちは兵士ではないから、ここは言う事を聞いてあげて」


母の言いたいことはよくわかる。

それでも、自分の感情が制御できない、、、


母と桜木優香さんに抱えられて、リビングを出ていく私は思わず


「母さん、私 悔しいよ。(ゆかり)さんがあそこにいれて、私がいられないなんて、、、」


舞の大きな瞳から、大粒の涙がこぼれる、、、


「大丈夫よ、舞ならすぐにあそこの場に居られるようになるわよ。もっとたくさん勉強して、経験を重ねて立派な大人になることですよ」


何とか感情を抑え込み、納得をしたように見せる事は出来たが、、、悔し涙は止まることはなかった。


しかし、唯母さんが想像していることとは異なり、この瞬間、舞は一人覚悟を決めたのだった。


【最強の女戦士】になると。


すでに走り始めていると思っていた自分が、歯がゆい、恥ずかしい。


今の私には力が、経験が能力全てが足りなすぎる。


私は戦士だ。


夫と共に戦う戦士なのだと。



未来の最強戦士の覚悟が決まった頃、リビングでは、、、



仁父さんが、珍しくシゲさんに話しかけていた。


「シゲさんもこちらに来て、話を聞いてもらえますか?」


シゲさんは、全くいつもと変わらずに


「畏まりました」


っと、一言。白い手袋を外し、「失礼いたします」と言って、リビングの大型ソファの端に座る。


そこで、仁父さんは静かにマルガッスさんの方を向き


「よろしければ、詳しく聞かせていただけますか?ミスター」


マルガッスさんは大きな両手で、塞いでいた顔をあげゆっくりと話し出した。


「私の会社では~今度新しい技術で作り上げた、半永久的に続く特殊コーティング剤を開発しました~」


「日光や、風雨に~さらされても、全く素材を老朽化させません。エアープレーンからシップ、カーやバッグ、ハウス迄、コーティング剤の濃度や厚さによって~ほぼ全ての物に塗布できま~す」


「しかも~この新しいコーティング剤が素晴らしいのは~原料が塩だということなので~す。」


「海の近くに~、プラントを建造すれば~ほぼ原料が無限に無料で手に入るので~す」


「当然、塩だけではありませんが~特殊原料と技術を用いて~開発にこぎつけました~」


「そして~その技術の特許を私個人ではなく~会社で取得したので~す。」


「だから~我が社を乗っ取りにかかってきている~見たいで~す」


「困りました~」


最後は、暗く消えうるように話す、ハンサムな米国人だが、今はその陽気さは全く伝わってこない。


いきなり、話に加わったのは候葺縁(こうぶきゆかり)さんだった。


「ミスター、TOBの相手はどこですか?」


「スタンリーバンクで~す」


「スタンリー銀行?すると、背後にはベルゴレドファンドが恐らく敵の首魁(しゅかい)ですわね」


仁父さんが、低い声で


「ファンドが相手となると、ミスターの会社の技術だけが欲しいのでしょうね。厳しい言い方かもしれませんが、株式を50%以上取得されれば、会社はバラ売りされ、技術と権利だけ持っていかれるでしょう」


「オーマイガッツ!!」


それまで沈黙を保っていた、ソファの端に座る重道勘蔵ことシゲさんが、始めて口を開く。


「ミスターは、武将様の事を御信用できますか?」


意外な人物から意外な質問が飛び出る。


マルガッスさんは、しばし思考に耽る。

シゲさんとは、長い付き合いで、かつての同僚で、いわば戦友だ。


そのシゲさんの言葉を軽んじて聞く訳がない。


「武将君の父上、虎雄社長は~尊敬に値する人柄で~経営者の鏡ともいうべき人柄でした~」


「武将君の事は、私は一緒に過ごした時間が少ないので、何とも言えませ~ん。シゲさんは~どう思ているのですか~?」


シゲさんは、背筋をピンと張りマルガッス・シュタインさんの方を向き、青い瞳を凝視して語る。


「武将様は、故虎雄社長を超える人柄、人徳をお持ちで、経営者としても先々代を超えて、経済歴史に名を残すお人になられると思っております。」


静かだが、重く威厳のある語り口調に、周りにいる人間は誰も反論しない。


「シゲさんが、そう言うなら~私も武将君を信頼しますが~それが何か今回の件と関係ありますか~?」


シゲさんは、変わらず感情こもらない声で、重く


「スタンリー銀行は、ミスターの会社株式取得にいくら用意していますか?」


「500億円だそうです。とても我が社だけでは~太刀打ちできませ~ん」


シゲさんは、金額を聞いても変わらず、世間話をするように


「ミスター100億ご用意いたします。」


マルガッスさんは、驚いたように


「シゲさん気持ちは嬉しいですが、スタンリーバンクは500億円で~す。」


シゲさんは威厳を持って


「ミスター100億 ドル(・・)です。」


「「「!!!」」」


そこにいる全員が驚く、約1兆5千億円!


「火吹武将様個人として、ミスターの会社を買い取ります。当然、今まで通りミスターにはCEOを続けてもらい、社員の雇用条件も全く変わりません。」



「ホワイトナイトに、武将様が成るということでわね。」


妖艶な美女は、頭の回転が速い。

金額や内容に驚くことなく、現実を冷静に受け入れ判断する。


シゲさんは、重く最後に一言


「はい。ただし、この件は武将様には【その時(・・・)】までご内密にお願い致します。」


しかし、ここに集う日本の成功者である人たちでも、KABUKIコーポレーションの底知れぬ財産の金額に驚かずにはいられなかった。


故虎雄社長の右腕、火吹家の金庫番を預かる、重道勘蔵のみが知る事実だ。

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