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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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谷樫心衛

新しい、居候が増えて3日。


とりあえず、何事もなく普段の様に過ごしているつ・も・り・だ。


ただ、自宅が物凄く華やかに香り立つ室内に変わったのは、言うまでもないことだろうけど、候葺縁(こうぶきゆかり)の女っぷりや見事。凄い。際どい。


を通り越して、大人の女性の色香のお手本のような存在となっていた。


部屋にいる時もリビングでくつろいでいる時も、食堂で食事をとっている時も一時もスキがない。


女性としての、、、、


ジャージにパジャマ姿なんか見たことも無ければ、スッピンすら見たことがない。


本人にとっては、ごく当たり前の事の様だが、共に暮らす俺達、、、特に男子にとっては目のやり場に困ることが多々あるのは事実だ。


(ゆかり)さんにとっては、自分の好みの男性二人(仁父さんと俺らしいが)と共に同じ屋根の下で暮らせることに、大変満足しているようで毎日鼻歌を歌いながら、リビングに降りる階段を優雅に女優の様に左右の足を交差させて、分厚い絨毯(じゅうたん)が引かれた、幅5メートルはある階段を華麗にゆっくりと降りてくる。


何も変わらずマイペースなのは、こいつだけだろう


天才という名にふさわしく、俺にとっては日本一の色男。


彭城楓真(さかきふうま)


朝食の最中だ。

珍しく、楓真もいて屋敷に住む全員が、食堂で食事をとっていた。


「楓真君って、アーティストなんですって?」


新しき住人の候葺縁(こうぶきゆかり)が、楓真が小さな口で朝食をがっついている最中に声をかける。


だがこいつはいつもの様に


「ああ」


と、だけ答える。


「一度、君の歌を聞いてみたいわ」


経済界の女王は、そんな態度の諷真にも触手を伸ばすかのように普通に話を続ける。


楓真は無視。


このままでは、会話にならないと俺はいつものように割って入る。


「ここだけの話ですけど、楓真はデビューがもう決まっていて、間もなくテレビにも出るんです。ですから、もう少しお待ちください。」


「そうなんだ、彼と武将君たちはバンドを組んでたって?本当なの?」


「ええ、僕と舞と他に友人3人で、HANZO|《_》というバンドをやっていました。」


「へぇ~、私の知らないことばかりね。もっと武将君の事が知りたいわ」


大人の色気とフェロモン全開で、ウィンクしながら俺に話しかけてくる。


「えへん。食事中はお静かに願えませんか?【オバサマ】」


舞お嬢様は、暴言を平然と普段と全く変わらずにおっしゃる。


「失礼致しました。このお屋敷に来てから 私、大分浮かれております。ご容赦くださいませ。【舞お嬢ちゃん】。」


「「「!!!」」」


(おいおい、どっちもやばいって、、、、)


舞のおでこに怒りマークが、ついて口がひん曲がってるよ。

朝から、あんまりハラハラドキドキさせないでくれよ、、、


葛城唯母さんが、二人をたしなめる。


「朝は、時間がないんですから、ちゃっちゃと済ませましょう。」


ガタン。椅子が下がり諷真が立ち上がる。


「先に行く。」


何事も無かったかのように、いつもと変わらずマイペースで出かける。180センチの長身天才ミュージシャン。


ただ、椅子から立ち上がるだけで、格好がよく絵になるんだよな。


「仁父さん、僕もお先に出ます。」


「うん、気を付けてね。会社でまた会おう」


「わかりました、行ってきます。」


俺は楓真と共に、急いで上着を羽織り玄関まで出ていく。


楓真には、スタッフがいて運転手の武藤さんが、玄関で大きな黒塗りのワンボックスカーの横で、立って待っていた。


俺は武藤さんに会釈して、「おはようございます」と声をかける。


武藤さんは少し緊張したように、最敬礼で俺に挨拶を返してくる。


そんなに気を使わなくてもと、、、


思いながらも、以前仁父さんに言われたことを思い出した。


慣れるしかないか、、、



そこに、甲高い爆音が鳴り響く。


候葺縁(こうぶきゆかり)が乗る、深紅のフェラーリSF90Strdaleが、車庫から出てくる。


(一体いくらするんだこの車?)


「武将君、駅まで送っていくわよ」


「い、いえ、大丈夫です。歩いていきますので」


玄関後方から、鋭い舞の視線を感じて、丁重にお断り申し上げる。


甲高い爆音とともに、「それじゃね」っと言って、赤い跳馬は、物凄い勢いで、走り去っていった。


そして横には、シゲさんが慇懃(いんぎん)


「武将様、いってらっしゃいませ」


とロールスロイスの前で、お辞儀する。


この後、舞を帝城高校まで送っていく準備をしているのだろうな。


そして、更に横には黒塗り高級セダンが、停車している。

葛城仁社長の送迎車だ。


こうして、火吹武将の普段の1日は、始まっていくのだった。


(これ、やっぱ、普通じゃねぇよな、、、)




その日の仕事もいろいろあったが、無事に終わり、帰宅途中に土門武士にスマホで連絡を取る。


武士はワンコールで、電話に出た。


「武士君、今いいかな?」


「大丈夫っす。」


身長2メートルの巨人は、ドスのきいた低い声で返答してくる。

性格を知らない人間が訊いたら、声だけでビビっちゃうだろうな。


「前に話していた、谷樫 心衛(たにがししんえい)さんとこれから会って話しできるかな?」


「うっす。すぐに折り返すんで、ちょっと待っていてもらえますか将軍さん」


「うんわかった。よろしく頼むよ」


一度スマホを切り、俺は周囲を見渡す。

最近コロナ、コロナと物凄く騒がれていて、町中マスクをした人間だらけだ。

経済効果にも、凄く影響が出そうだ。

実際、コロナ倒産している会社も1000社を超えてるらしいからな。


これからの日本の経済、世界経済の事をちょっとつたない、データを(もと)に思考してみる。


原材料が不足しているのは否めない。が、それでも俺はこの世界で戦っていかなければならない。


もっともっと勉強して、知恵と経験を付けなくては!!


それには、候葺縁(こうぶきゆかり)社長の存在は大きかった。


俺にとって、これほど近くにバキバキのやり手の経営者が居てくれるのは、大変勉強になる。


舞には毒にしか映らないようだが、、、


などと考えていると、スマホの着信音が鳴る。


(武士からだ)


「火吹です。」


「将軍さん、先輩と連絡取れました。1時間後に渋谷の【箕酪亭(みらくてい)】というカフェで、待っているそうです。場所はメールで送ります。よろしいですか?」


「うん、ありがとう。悪いね」


「自分も同席して、良いっすか?」


「別に構わないよ」


「ありがとっす。それでは後程、失礼しまっす。」


バキバキの縦社会人間は、喋り方に特徴があるものの、心優しい大きな鉄人だ。


俺は、今 京仁織物株式会社本社前にいるから、同じ渋谷なら1時間時間をつぶさなくてはならない。


この時間なら、学校も終わっているだろうから大丈夫だと思い。


ミッドこと御堂大智(みどうだいち)に電話する。


ITのスペシャリストは、すぐに電話に出た。


「どうしたの将軍?また、調べもの?」


「いや、そうじゃなくて、桜木優香さんの事について何か進展はあったかな?」


病気で余命、僅かと言われたバイオリンの名手は、今アメリカで病気の治療に専念しているはずだが、先だってミッドから学年が上がる頃には、病気も完治して、日本に帰国すると聞いていたものだから、空いた時間に連絡してみた。


「うん、来月には日本に帰国するみたいだよ。もちろん病気を治してね。」


「そうか、それはよかったな」


「帰国時期がわかったら、将軍に連絡するよ。」


「了解、ミッド。英語の勉強の方はどうだ?」


「うん、日常会話くらいは何とかなりそうだけど、僕らが使う言葉は専門用語が多くて、単語が難しくて大変。」


「そうか、楓真は間違いなく大成功する。」


「準備は完ぺきに澄ませておけよ」


「うん、わかった、、、ありがとう将軍。」


「将軍と友達でなかったら、僕の未来は大きく変わっていたかもしれないな」


「そんなことない、俺の力じゃない。ミッドの実力だよ。自信を持て。」


「ありがとう。アメリカに行ってもネットで何でも聞いてくれて構わないからね」


「ああ、頼りにしている。」


「それじゃ、またな」


「うん、電話ありがとう。」


会話を切る。


楓真のデビュー曲【ジャスティス ロー】正義の法律を作詞、作曲したのは俺だが、編曲したミッドが全て制作したことにして登録した。


ヒットした時の印税で、ミッドの夢だったマサチューセッツ工科大学留学資金調達のために、俺が決めた。


チームのミッドの能力が上がれば、チームの実益に繋がる。

とても、高校生が考えられるようなことではないが、俺は自信をもって決断した。


ミッドがチームをもし離れたら?


そんなこと、ミッドだけではないが、他の誰一人として抜ける事なんて考えたこともない。


一蓮托生。


これが、俺達だ。


そんなこんな話をして【箕酪亭】を探していると、お洒落なテラスが張り出してある、いかにも渋谷の街に相応しいカフェが見つかった。


待ち合わせ時間より20分前だ。


(ま、先に珈琲でも飲んでるか)


と、店内に入ろうとすると、丁度反対側の道路を恐ろしく目立つ男が二人揃って全速で駆け寄ってくる。


二人とも身長2メートルを超し、1人はスーツを着ているが、スーツの上からでもわかるほど、体格はガッシリして頭は短髪で丸坊主に近い、強面の四角い顔、鋭い目つき、しなやかで強靭そうな筋肉、間違いなく町で出会ったら、目を逸らしてしまう2人だ。


谷樫さんと武士だ。


「おまたせっす。将軍さん」


180センチの俺が見上げる所から、声が降ってくる。


「いやいや、まだ時間前出しそんな走ってこなくてもいいのに」


「遠くに、将軍さんが見えたもんで、、、こちらが先日話した、谷樫心衛(たにがししんえい)先輩っす。」


黒色のスーツを着込んだ、武士と同じく身長2メートルはありそうな褐色の肌に、短髪、鋭い眼光、熱い胸板の男が話を始めた。


「直接お会いするのは初めてですね、谷樫心衛(たにがししんえい)です。よろしくお願いします。」


俺より、7歳以上は年上の逞しい男性は、腰を折り挨拶してきた。


「こちらこそ、先日は突然電話してしまってすいませんでした。まずは中で話しましょうか?」


っと、箕酪亭の店内にとてつもなく目立つ3人は入っていった。


当然だろうが、箕酪亭の可愛らしい女性従業員は、ひどく怯えた様子で俺達を迎えてくれ、壁際角の空いたテーブル席に案内してくれた。


6人は余裕で座れるテーブルだが武士と谷樫さんと俺が座ると、丁度よい広さだった。


3人とも珈琲を注文し、出てくる前に俺が話しかける。


「率直にお尋ねします。谷樫さんは、信頼できるお人柄でしょうか?」


谷樫は、丸坊主に近い短髪の頭を掻きながら


「自分で、言うのは恥ずかしいですが、仕事柄 口は堅いと思います。」


武士が割り込んでくる


「谷樫先輩は、格闘の世界でも十分通用する実力を持ちながらも怪我をされてしまって、今の仕事についてますが、谷樫先輩を慕う後輩は沢山いるっす。」


「それだけ、信頼されてるってことっす。」


俺は、武士の言葉を黙って聞いていて


「怪我をされたのですか?」


「ええ、左肘の靱帯(じんたい)を一度やってしまって、手術して生活には困りませんが、格闘家としてやっていくには致命傷です。」


「なので、現在セキュリティ会社で仕事してますが、実際燃えきれてない自分をいつも感じております。」


「燃えきれてない?」


「ええ、格闘家として朝から晩まで練習に励み、強敵と戦うことには生き甲斐と言いますか、、、完全燃焼してました。」


「今 働いているセキュリティ会社は、警備する仕事とは言え、万一警報が鳴っても警察官立ち合いの元、現場に入り報告書を書き、暇な時間は待機の毎日で、正直うんざりです。」


「もっと自分を酷使し、充実した仕事がしたいと思っております。」


「谷樫さんの一番大切にしているものは何ですか?」


鋭い目つきの逞しい巨人は迷わず答える。


「自分より大切に思える(あるじ)を守ることです。」


(おいおい、ここにも変なのがいたぞ、、、(あるじ)って、今時ないだろ)


「私に谷樫さんの主君になれと?」


「はい。私はお会いした瞬間から決めておりました。この方に私の全てを捧げようと。」


(だから、俺の何を感じ取ったって言うんだよ、、、初対面だよ、簡単に人を信じていいのか?一生の問題になるかもしれないんだぞ。)


(でも、俺 こういう奴、、、嫌いじゃない。)


「先日お話しした、私の自宅の警備会社独立のお話を飲んでくださると言う事ですか?」


「はい!」


力強く、褐色の巨人は鋭い眼光で俺を睨み返事をする。


(だから、こえぇって、、、)



俺は右手を出す。


谷樫さんも馬鹿でかく、ごついが信頼に値する男が右手を伸ばしテーブルの上でむさ苦しい男同士固く握手を交わす。


丁度そこに、可愛いウエイトレスの女性が珈琲を3杯トレーに乗せて運んでくるが、怖いせいか迫力に負けてか、テーブルのちょっと離れたところで、立ち往生している。


俺は、女性に気付き


「すいません、どうぞ置いてください。」


ウエイトレスは、恐々(こわごわ)カチャカチャ音をさせながらコーヒーを置き、逃げる様に去っていく。



そして、王者の決定が下る。


「わかりました。私があなたの主君となりましょう。」


「ありがとうございます。一生自分の身命をかけてお守りいたします。」


「自分も、そこに入るっす。」


武士が叫ぶ。


(全く不器用な奴らが集まってくるなぁ~)


「では、私が個人的に経営する警備会社の代表として、谷樫さんに就任してもらって、私の家族と自宅に住む住人の安全を24時間365日、守ってもらいたいです。」


「「うっす。」」


「規模に関しては、始めは10人程度から始めて、こちらの概要が変更になり次第、大規模化していくと言う事でいいですか?」


大きな褐色の巨人は、一言


「御意」


と言う。


(おいおい、、、、)


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