龍虎対決
COBBブランド株式会社 社長の候葺 縁との帝都ホテルでの一幕の翌朝。
六本木にある おシャレなCOOB本社ビル 最上階にある総ガラス張りの社長室のブラインドは全て下ろされていて、中には一人の男性が、縁社長の前に優雅に黒色の高級スーツを着込んで、執務机の前で座っていた。
葛城仁である。
縁社長の今朝の洋服は、相変わらずファッショナブルで、カラフルな色を基調としたブラウスに黒のタイトスカートという派手さの中に気品とお洒落を包み込んだような大人の女性の色香を漂わせていた。
先に話を始めたのは、仁だ。
「それで、火吹武将君に対する 君の評価はどうだったのかな?」
縁社長は執務机の前で両手を組み、顎を乗せて、ゆっくりと喋りだす。
「何の評価かしら?男としての魅力?仕事の出来栄え?」
「君の目から見た、全てを聞きたいな」
「では、まず始めに言っておきますわ。私とはまだ男女の関係にはなっておりません。」
仁は黙って頷く。
「私の素直な評価を申し上げると、、、、」
「私、本気で恋をしたみたいです。彼に」
仁は内心の驚きを隠して平然と
「君にしては、大変珍しい物言いだね」
「ええ、昨晩彼と妾になる契約を結びましたのよ」
「ぶっ!!」
目ずらしく、仁が吹き出す。
「か、彼のどんなところが、経済界の女王とまで呼ばれる君のお眼鏡にかなったのかな?」
縁社長は迷わず、即答する。
「存在全てです。」
「彼の容姿はもちろん、性格、仕事ぶり、品格、気配り、どれをとっても満点以上ですわ。」
「残念ですけど、結婚していると言う事なので、お妾さんにしていただく契約を取り付けましたの」
「・・・・・・」
「君をそこまで夢中にさせるとは、僕にとってもかなり想定外だね」
「こんな言い方、仁さんにはとても失礼かもしれませんが、仁さんに断られたとき、私大変なショックでしたけど、受け入れましたわ」
「だけど、武将君の事は受け入れることは、絶対にできません。諦めるなら死んだほうがましです。」
「こ、これはこれは、凄いもの入れようだね」
内心に広がる動揺を隠して、表面は平然と答える。
(木乃伊取りが木乃伊になるってとこかな、、、ちょっとまずいかな?)
女王は平然と会話を進める。
「今週末、彼の自宅に招待されてますのよ。奥様とも仲良くしておかないといけませんからね」
「ぶっ!!」
本日の二回目の珍しい、仁の吹き出しである。
様々な複雑な思いを胸の中でもやもやさせながら、仕掛け人の葛城仁は、一人沈黙を守った。
何をどう喋ったらいいかわからずに、、、、
そして、週末。
候葺 縁社長の来訪を告げる電子音が、鳴る。
心穏やかならぬ、仁とこの家の当主である。
シゲさんが、インターフォンを取り
「お待ちしておりました。どうぞお入りください。」
と言い、正門が開くボタンを押す。
招待の準備は全て、ツネさんとシゲさんで済ませてくれていた。
縁社長は、真っ赤のフェラーリに乗って表れた。
シゲさんが、玄関まで迎えに出る。
大リビングで、なぜかソワソワする俺と仁父さん、、、
横には、舞と尚武、結紬が寝かされて唯母さんと、今後の展開を全く想像だにもせずに談笑している。
お客が来ることは、聞いていたがどうせ仕事の客だろくらいにしか考えていなかった、、、この時点では
縁社長は、乗ってきた車と同じような、真っ赤な超ミニの身体の線をはっきりとあらわすワンピースにお洒落なスカーフを首に巻いて颯爽とリビングに現れた。
シゲさんが、そこにいる大人全員の驚愕を無視して
「COOBブランド株式会社候葺 縁社長のご来訪です。」
縁社長は、家の豪華さや華やかさより、俺と仁父さんが一緒にいる事を見て、直ぐに事情を理解して自己紹介を始める。
とても頭がよく優秀な女性である。
「皆さま、突然お邪魔してしまい大変申し訳ございません。候葺 縁と申します。」
舞が立ち上がり、妖艶で大人の色香を放つ女王に右手を差し出し声をかける。
「ようこそおいで下さいました。私は妻の火吹舞と申します。」
縁社長より大きな胸を逸らす様に、差し出された手を握る。
何やら、妖しい雰囲気がこのあたりから周囲を醸し始める。
ツネさんが、息苦しい雰囲気をいち早く感じ取って声をかけてくれる。
「さぁさぁ、皆さま立ち話もなんですから、ソファにおかけくださいましな。ただいまお茶でもご用意いたしますので」
縁さんは優雅に、皆の横をすり抜け舞に持ってきた品物を手渡す。
「お気に召すかわかりませんが、弊社で販売しております、ネックレスです。どうぞ奥様に付けていただけると光栄に思いわすわ」
舞は、真っすぐに縁さんを見つめて、にこやかに笑う。
(やばいこういう笑い方する時の舞はマジでやばいぞ)
内心冷や冷やする。
「若い私には、この様な高価なブランド物は会いませんは、母に差し上げてもよろしいかしら?おばさま」
「!」
喧嘩売ってるって、、、
舞には、本能的にこの女性が、俺の事が気に入ってここに来たことを瞬時に察知したのだろう、、、
主人はあくまでも自分なのだとマウントを取るように話す。
縁さんは大人の余裕からか、にこりと微笑み
「ええ、どうぞ構いません。装飾品は似合う方に付けていただくのが、一番ですから」
「!」
(おいおい、こっちも負けてないぞ、、、)
「縁社長、とにかく座りましょう」
俺は必死に話しかけてみるが、妖艶な女王は全く別の事を口にする。
「武将君、よろしければ亡きご両親のご仏壇に、ご挨拶してもよろしいかしら?」
「え?それは別にかまいせんが、、、」
「・・・・ではどうぞこちらになります。」
俺は先頭に立ち、リビングの隣にある大きな仏間に候葺 縁社長を案内する。
何故か仁さんも着いてくる。
仏間の襖を開き、両親の眠る仏壇に案内する。
とても大きく立派な仏壇だ。
漆黒で出来ており、高さ2メートル近くある。
この仏間は、両親が亡くなった時、泣き崩れて初めて舞と結ばれた思い出深い部屋だ。
候葺 縁社長は、厳かにそして流麗に舞でも踊るように、仏間の前に正座すると静かに両手を合わせて首を垂れる。
沈黙が5分ほど続く。
ここにいるのは俺と自父さんと縁さんだけだ、誰も口を開こうとしない。
縁さんが、首をあげて正座のまま仁父さんの方を向く。
「こういうことでしたのね」
俺は何のことかわからず、思わずオドオドしてしまう。
仁父さんが、静かにしゃべりだす。
「君にはすまないと思っているんだ、武将君にとっても、仕事以外に女性に対する勉強をしてもらおうと思って、君に頼んだんだけどね。」
俺は何が何だか分からずフリーズ。
「まったく、ご自分の娘さんの夫を誘惑しろだなんて、仁さんも罪作りですわ」
(え?仁父さんが仕組んだの?)
「それでも、私気持ちはお伝えした通り何も変わりませんわ」
(何がどうして、どうなってるの?)
「武将さんのご両親に、今きちんと挨拶はしましたからこれからは妾としてこの家においてもらいます」
「!!」
「いやいや、そ、それはちょっと無理じゃないかな?」
(珍しい、仁父さんが動揺しているよ)
「ちょっと、どういうことかちゃんと説明してくれる?」
仏間の入り口に腕を組んで、仁王立ちする。
当家の女王 舞だ。
そこでまた、驚きの事をこの女性はするんだな、、、
サッと座っていた、座布団から降り座布団を横にして畳に正座して土下座して挨拶する。
候葺 縁
両手を頭の前について話し出す。
「私、候葺縁は、火吹武将様の妾として、当屋敷に住まわせていただきます。御正妻であられる舞様には、至らぬことも多々あると存じますが、お見知りをよろしくお願い申し上げます」
(ここは武家屋敷か?今は令和だぞ、、、江戸時代じゃあるまいし、、、)
「住む?」
「いったい誰が、そんなことを許したのかしらね?」
「無理に決まっているでしょう」
縁社長は、畳に頭をこすりつけながら尚も引かない
「妾として、武将様とは契約済みですので、無理を承知でご了承いただきたく思います。」
「武将!!何?妾契約って?どういうことなのよ?」
「いや、それはちょっとした行き違いと言うか、、、なんというか、、、」
修羅場である。
「まぁ、舞もちょっと落ち着いて話し合おうじゃないかね」
仁父さんが助け船を出すも、一刀両断。
「お父さんは黙ってて!!」
「は・い」
(おいおい、、、どうなるんだこりゃ、、、)
収集が付かず、どうにもならない状況の中、突然とまたタイミングよく帰ってきた。
「何かあったのか?」
彭城楓真である。
身長180センチを超えた、スリムな体型に超イケメンの小顔で、顔を取り巻くのは豪奢な軽くカール掛かった黒髪。
初対面で、良い男と思わない異性は100%以内と言い切れる俺の親友だ。
まず初めに、初対面の候葺縁が驚きの声をあげる。
「このお屋敷には、いったい何人の美男美女がいるのかしらね」
楓真の容姿に見とれる、麗しき妾希望者である。
楓真はいつもと変わらず
「誰?」
俺が答える「会社の取引先社長の候葺縁さんだ。今日はうちに遊びに来ている」
「遊びに来てるって、雰囲気じゃなかっだがな」
(おっしゃるとおりだ、、、)




